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28話 固い

「多少時間が掛かりますので、もうしばらく待ち頂けますか?」

「はい」


今、頭を吹き飛ばされた猪が木に吊るされ血抜きをされている最中だ。

ドバドバと血が吹き出すぐらいの勢いで出血するイメージだったけど、実際は意外と地味というかそこまでの量は出ていない。

地面に血溜まりも・・・いや、それはそこそこ出来てるな。

でも、思っていた程の量ではない。


「あの」

「はい。後は弟にやらせますので、休憩して頂いていて・・・」

「いや、えっと・・・さっき猪を仕留めたスキルって見せて貰う訳にはいきませんか?」

「ストーンランスですか?」

「はい」

「それは構いませんが」

「じゃあ、お願いしますっ」

「はい」


「ストーンランス」


「おぉー」


イリアさんの手から30cmくらいの棒状の石が飛び出し、地面に突き刺さった。


「凄ぇー。あの、これって」

「はい」

「触っても?」

「??」

「大丈夫ですか?」

「あぁ、はい。大丈夫ですよ」


触ってみてもその辺に落ちている石と同じ手触りで何の変哲も無い石。

まぁ、棒状で30cmもあるような石なんて完全に変哲だけど。


「これって貰っても良いですか?」

「え?構いませんが・・・」

「すいません。変なお願いばっかりしちゃって」

「いえ、こういったスキルを見るのは初めてですか?」

「はい。なんで、もし良かったら他のスキルも見せて貰えませんか?」

「あまり使うとMPが持たないので」

「あ、そうですね。すいません」

「ですが、私が使えるのは後これだけなので」


「ストーンバレット」


カーン───。


イリアさんの手から飛び出した小石は小気味良い音を立てて木に直撃した。


「おぉー・・・って、当たった石どこいきました・・・?」

「えっと・・・あちらの方に跳ねましたね」

「えっと・・・・・・・・・これですか?」

「違いますね」

「だったら、これですか?」

「あ、いえ、これですね」

「おぉー、すいません、それも・・・」

「はい。どうぞ」

「ありがとうございます」

「後学の為にお聞きしたいのですが」

「はい」

「それをどうされるんですか?」

「えっと・・・記念というか・・・」

「あぁ、なるほど。私も初めて発動した時はそうでした」

「は、はい。そんな感じです」



その後、猪の解体が進み。内臓を捨てる様の穴掘りを手伝ったりした。

中々にグロかったけど、皮を剥がれ頭や手足を落とされた状態。枝肉って言うのかな?その状態になると、忌避感はだいぶ薄れ。更にブロック分けされた時には完全に肉にしか見えなくなっていた。


ちょっと前まで吐き気を催す勢いだったのに、そうなると美味しそうと思ってしまう。

現金な性格してるなぁ。と、呆れると同時にそれくらいじゃないとこの世界でやっていけないか。と、諦めにも似た悟りを開いたりもした。



「お待たせしました。そろそろ出発します」

「はーい」


荷台に乗り込み、特製座布団の上に腰を下ろす。

しばらくは揺られながらイリアさんのストーンバレットとストーンランスを交互に眺めたり太陽に翳してみたり全く意味の無い事で時間を潰していた。


そして、意を決し。

ステータスを開き、ストーンランスを舐めてみた。


が、予想通りステータスにストーンランスが追加される事は無かった。


「やっぱ量かな・・・はぁ・・・」


続いて、ストーンバレットを口に含んでみる。

飴玉の様に口の中で転がしてみる。

当然、味はしない。


そして、ステータスにストーンバレットも追加されない。

もしかしたら飲み込まないと意味が無いのかもしれない・・・が、流石にその勇気は出ない。


というか、ストーンバレットはまだしもストーンランスはどう考えても飲み込めるはずがない。

あ、砕いて粉・・・砂か・・・にして飲み込むって手もあるけど、それはそれでハードルが高い。


どうしたものかと悩み続けていると、何時の間にか陽も傾き始めていた。


すると、馬車が街道から逸れ停車した、


「今日はここで夜を越します」

「はい」

「猪が出なければもう少し早く到着出来ていたのですが」

「それは、しょうがないですよね」

「あちらに水場もありますので、水の補充等まだ陽がある内にどうぞ」

「はい」


背嚢から水筒を取り出し、言われた方へ歩いて行くと直ぐに小川が見えてきた。


道中、軽く汗も掻いたので身体を洗いたいところだが顔と頭を洗うだけで済ませて水筒に水を汲んでいると。


「入らねーのか?」

「え?」

「川だよ川。身体、洗わねーのか?」

「あぁ、俺はこれで大丈夫です」

「ふ~ん」


そう言うとイーロさんはパンイチになり、川に入ってしまった。


「ふぅ~。サッパリすんぞ?」

「は、はぁ・・・」

「んじゃ、その桶に水汲んで向こうに持ってってくれ」

「え、はい」


桶というかバケツ。

桶部分は木製で取っ手は金属製。そして、持つ部分には木を噛ましてある。


バケツ2つに水を汲み、自分の水筒は脇に挟んで馬車の停まっている所へ戻る。


「え?もしかして弟が?」

「は、はい」

「すみませんっ」

「あぁ、良いですよ。これくらい」

「いえ・・・弟には後でキツく言っておきますので・・・」


お手柔らかに・・・とは思うだけで、口にはしない。


「ここに置きますね」

「はい。ありがとうございます」



猪の解体の手伝いだけじゃなく、水汲みまで手伝わせてしまったお詫びという事で夕食をご相伴に預かる事が出来た。

イーロさんは罰として夕飯抜きだそうで、殺気の篭もった視線をこちらに向けている。


夕飯のメニューは猪肉のステーキ。これも、トンテキになるのかな?と、豚汁的な猪汁。

味は豚肉っぽいけど、ちょっと獣臭くて固い。

固いから噛む回数が増えるけど、噛めば噛む程に獣臭さが増してくる悪循環。

美味しく食べるコツは早めに飲み込む事かもしれない。


不味くは無いけど、そこまで美味しくは無い。

そんな感じの初ジビエだった。


いつもお読み頂きありがとうございます。


昨日、投稿し忘れてたみたいです・・・。

ストックはあるので単なるミスです。すみません(´・ω・`)


まぁ・・・2日に1回の更新は目安という事でっw

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