22話 燐寸
陽が傾き始めたので窓を閉め閂を掛ける。
もしかしたら・・・この部屋に戻った時に窓が開いていたのは換気する為だったのかもしれない。
汗臭い臭いで充満していた可能性が・・・。
「こんばんわー」
「お?早速、来たね」
「はい。晩ご飯頂けますか?」
「あいよ。座って待っといとくれ」
「はーい」
まだ早いのかテーブルは全部空いていたので、1番手前に掛ける。
そして、ご飯が来るのを待ちながら、さっきまで部屋で見ていた物を思い返す。
ゴタゴタしていて中々確認出来ていなかったステータスを見ていたが・・・。
なんと!
俺自身のレベルがLv.4から6にアイテムボックスがLv.1から2に上がっていた。
そして・・・。
暴食がLv.2に上がっていた。
まぁ、暴食は上がったらどうなるのかも分からないんだけど・・・。
そして、1番びっくりしたのが。
暴食の下にウィンドアローLv.1とウィンドカッターLv.1が追加されていた事だ。
あのエルフに襲われた時に暴食スキルが何かをしたんだとは思う。
何をしたのかは分からないけど。
まぁ、食べたのかな?スキルを。
その結果、ウィンドアローとウィンドカッターを覚えたっぽい。
まだ試してないけど。
「お待ちどうさん」
「はい」
「で、これからどうするんだい?」
「折角、ここに泊まれるんで。しばらくはこの村に滞在しようかと思ってます」
「ふむ。それからは?」
「えっと・・・」
「こんなトコに立ち寄るんだ。どっか目指してるんだろ?」
「えっと・・・目的地は無いと言うか・・・何と言うか・・・」
「なるほどねぇ。放浪の旅の最中って事かい。んん~、良いねぇ」
「ま、まぁ、そんな感じです・・・」
「あぁ、すまないねぇ。冷めないウチに食べとくれ」
「あ、はい。いただきます」
メニューはカルボナーラと蒸した芋とザワークラウトって言うのかな?ザワークラフト?酸っぱいキャベツだ。
どれも美味しい。異世界の料理も侮れない。
エルフの村で食べた物もこの宿屋で出る食事もどれも美味しい。
ただ、贅沢を言うなら。
カルボナーラならうどんの方が美味しいと思う。
パスタでも悪くは無いと思うけど・・・。
「今日、村の中を軽く見て回ったんですけど」
「うん」
「冒険者ギルドって無いんですか?」
「はっはっは。こんな村にそんな物ある訳無いだろ?はっはっは」
「あー、そうなんですね」
「依頼かい?隣の隣の村に冒険者ギルドの出張所があったはずだから。そこに行けば依頼出来るはずだよ」
「えっと、登録もしたいんですけど」
「登録ねぇ。出張所じゃ流石に出来ないだろうね」
「登録が出来る様な所だと、ここからどれくらい掛かります?」
「う~ん。私はこの村とその近辺ぐらいしか知らないから何とも言えないね」
「そうですか・・・」
「しばらくしたら行商の子が来るから。その子に聞けば良いよ」
「はい」
「おっと、話し込んじまったね。冷めないウチに食べとくれ」
「はーい」
隣の隣にある村ですら出張所しか無いのか。
出張所ってのがどれくらいの規模かにも依るけど、登録出来るくらいの冒険者ギルドがある所まで行くのは歩いてじゃ無理かもしれないな・・・。
「ごちそうさまでした」
「あいよ。あぁ、すまないね。そのまま置いといてくれて良いんだよ?」
「あ、その方が良かったですか?」
「いや、ありがとね」
部屋に戻り、ステータスを眺める。
昼間見た時と変化は無い。
まだ憶測の範囲だけど、暴食スキルで魔法を覚える事が出来る。
そして、ウィンドアローもウィンドカッターも使えば使う程にスキルレベルは上がっていくはず。
村の中で練習するのは厳しいかもしれないから、村から出て人気の無い所で練習しよう。
それで、冒険者ギルドに到着するまでに戦える力を手に入れたい所かな。
コンコンコン───。
「はーい」
「お湯持って来ましたー」
「あ、はーい」
ガチャ───。
「ありがと」
スンスンスン───。
「今日は臭くない」
「あ、うん・・・」
「朝、掃除しに入ったら目に滲みたもん」
「ご、ごめん・・・」
「しばらく泊まるんですよね?」
「うん」
「毎日、綺麗にして下さいね」
「う、うん・・・」
目に滲みる程の臭いって、部室じゃん・・・男子運動部の部室。
「でも、なんで部屋真っ暗なの?」
「え?あ、忘れてた」
「あっ、分かった」
「え?」
「マッチ怖いんでしょ?」
「へ?」
「しょーがないなー。ニーナがやってあげるねっ」
「え、あ、うん・・・お願いします・・・」
引き出しからマッチを取り出し、息を整えてからマッチを擦る。
カスッ───。
「あっ・・・」
カスッ───。
「も、もう1回・・・」
シュボッ───。
「ふふん。着いたよっ」
「おぉー、凄いね」
「でしょー?」
「うん」
「ふふん」
小さい女の子がマッチに火を着けれて得意気にしてる。可愛い。
その行動は可愛い。
でも、実際は・・・暗がりでマッチの揺れ動く明かりに照らされた笑顔はそこそこ邪悪に見える。
「熱っ!」
「あっ、踏んで踏んでっ」
「え、え、え・・・」
得意気にしてたらどんどんマッチの火が軸を伝い手に近付いて熱さにびっくりして落としてしまった。
そして、オロオロしてるかわい・・・いや、それどころじゃないっ。
バンバンバン───。
裸足だったけど、そんな事も言っていられないので踏みつけて床に落ちたマッチの火を消した。
「ふぅ・・・」
「ご、ごめんなさい・・・」
消え入りそうな声でニーナちゃんが謝るが。
ここは大人・・・と、言うには俺もまだ子供だけど、年長者としてちゃんと叱っておかないといけない。
「火事になったら危ないからね。火の扱いには気を付けないといけないんだよ」
「うん・・・ごめんなさい・・・」
うん。子供の叱り方とか分からない。
「これからは気を付けるんだよ?」
「うん・・・」
子供の叱り方スキルを下さいっ。
いつもお読み頂きありがとうございます。




