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19話 筋斗返り

気が付くとベッドに突っ伏していた。


張り詰めていた緊張が解けた所為か、身体的な疲れからか眠ってしまっていた様だ。

もしかしたらお腹がいっぱいになって眠くなった可能性も無きにしもあらず・・・。


窓・・・ガラス窓ではなく、木製の窓の隙間から朝日が差し込んでいる。


「え?朝?」


急いでベッドから飛び起きる。

アリスさんが森で待ってい・・・る訳では無いかもしれないけど、急がないと帰ってしまうかもしれない。


と、その前に。

床に水の入った桶とテーブルにタオルが置いてある。

これで身体を綺麗にしてから行こう。


面と向かって臭いって言われるくらいには臭うみたいだし。

まぁ、自分でも自覚はある。


タオルを水で濡らして、キツく絞ってから身体を拭っていく。

お湯って話だったけど、一晩経っているので当然ながら水になっている。


汚れが落ちて気持ち良い反面、冷たくて縮み上がる・・・。

そのおかげで完全に目が覚めたけど。


服の替えは無いので、アリスさんが用意してくれた下着だけ着替える。

そして、桶とタオル。それと部屋の鍵を持って母屋のへと向かった。



「おはようございます」

「おはよーさん。良く眠れたかい?」

「はい」

「ニーナが起こしても起きなかったって言ってたからね。はっはっは」

「み、みたいですね・・・あ、コレ、ありがとうございました」

「あいよ。朝ご飯はどうする?」

「あー。えっと、もう出ないといけないんで」

「そんな急いでるのかい?」

「はい」

「よし。5分だけ待ちな。それぐらいなら良いだろ?」

「はい」


言われた通り5分待っていると。


「これ持ってきな」

「え?はい。何ですか?これ」

「サンドイッチだよ。食べないと身体も持たないだろ?」

「あー、えっと、お代は・・・」

「気にしなくて良いよ」

「え?」

「急いでるんだろ?さっさと行きな」

「は、はいっ」


異世界に来て人の優しさに触れる機会が増えた気がする。

思いっ切り殺意とか敵意も浴びたけど・・・。


第一村人の宿屋のおばさんに頭を下げてから、森へ向かって走り出した。



走る。走る。走る。

森に向かってひた走る。


このまま森までノンストップで駆け抜ける。

ぐらいの気持ちでは居たが・・・足も痛いし体力も持たないので5分程で失速していき。

そこから更に10分経った頃には完全に心が折れた。


序盤飛ばし過ぎた所為もあって足取りはかなり重たかったが、来た時よりはかなり時間を短縮する事が出来た。

これは、序盤の頑張りのおかげ・・・では無く、暗がりを歩くのと明るい中を歩く違いだろう。



「アリスさーん。アリスさーーーん」


いくら呼びかけても反応が無い。

森沿いに街道を進みながら森に向かって呼びかける。


それでもやはり反応は無い。


太陽の位置を確認するが、正午まではもう少し時間があると思う。

まぁ、でも・・・お昼頃って話だったから、切り上げて村に戻ったのかもしれない。


諦めて今来た道を引き返して行く。


振り返った時は軽く絶望したが、じっとしている訳にもいかないので各都道府県のご当地うどんを1つずつ思い浮かべながら村を目指して歩く。



うどんのおかげでなんとか村まで辿り着く事が出来た。

だいぶ疲れたけど・・・。


「ん?なんだい?飛び出してったのにもう帰って来たのかい?」

「あ、はい・・・」

「用事は済んだのかい?」

「用事・・・そうですね。済みました」

「そうかい。良かったね」

「はい・・・。たぶん、今日もお世話になると思うんですけど」

「うん?」

「その前に買い物をしときたくて」

「うん」

「日用品というか、服とか扱ってるお店ってあります?」

「服かい?そうだね・・・他にも何か買う物はあるかい?」

「んー、とりあえずは服とか靴下とか・・・後、旅の必需品みたいのがあれば欲しいですね」

「んじゃ、着いて来な」

「え?」

「いいからいいから。今日も泊まってくれんだろ?」

「はい」

「だったら私が連れてかないとだね」

「は、はぁ・・・」


案内されたのは村の建物の中でも一際ボロ・・・(おもむき)のある建物だった。


「メディンさん。居るかい?メディンさん」

「大声出さなくても聞こえてるよ」

「お客を連れて来たよ」

「ほぅ」

「なんだっけ?あぁ、服と靴下と・・・旅支度をここでしたいんだと」

「ふむ」

「こんな辺鄙(へんぴ)な村でわざわざ旅支度かい?ここまでどうやって来たんじゃ?」

「えっと・・・そろそろ寿命で買い替えようかと・・」

「ふむ。まぁ、服はそこの籠に入ってるので全部だから適当に見繕いな」

「はい」

「で、何を買い換えるんじゃ?」

「えっと・・・何て言うか・・・必要最低限の物を全部?みたいな?」


怪しさ満開で誤魔化しきれてないだろうけど・・・他にどう言って良いか全く浮かばないっ。


「ふむ。まぁ、突っ込まないでおいた方が良いみたいだね」

「ははは・・・」

「ウチのお客さんだからね。あんま毟らないでおいて貰えると助かるんだよね」

「こんな貧相な子供。ケツ毛まで毟った所で大した金にならんじゃろ」

「まぁねぇ。やるにしても程々にしてやりなね?」

「分かっとる」

「それじゃあ、メディンさん後は頼んだよ」

「うむ」

「ありがとうございました」

「うん。また後でね」

「はい」

「服が決まったら後は適当に店の中でも見とれ」

「え、はい」


そう言い残し、メディンさんと呼ばれていたお婆さんは店の奥に引っ込んでいった。


下着はアリスさんが用意してくれたのがあるので。

今回買うのはズボンを2本とシャツ2枚、それから上着を1着。


あと・・・タオルとかもあった方が良いかな。


「聞き忘れとったが、予算はいくらじゃ?」

「えっと、いくらぐらいなんでしょう・・・?」

「聞いとるのはこっちなんじゃが・・・」

「いや、えっと、相場的に普通いくらぐらいですか?」

「上を見ればキリは無いし、下を見過ぎれば使い物にならん」

「まぁ、そうでしょうけど・・・」

「じゃから普通は予算との兼ね合いで買い物するんじゃが・・・さては・・・」

「!?」



さっきは流してくれたのにー・・・。

正直、相場どころか貨幣価値もまだ分かってないからなぁ。


いつもお読み頂きありがとうございます。


筋斗返りでトンボガエリと読むそうです。

蜻蛉返りとも書くそうです。

自分的にはとんぼ返りが1番しっくりきます(`・ω・´)



感想を頂いてあとがきに書くのを忘れてた事に気付きました。

若干名、他の作品のキャラと同じ名前が居ますが別人です。

きっと関係は無いです。たぶん(´ε` )


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 最近ペースが上がっているようで有り難い限りです(´ω`*) 体調にはお気を付k∑メディン婆さん!ww
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