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18話 smells like bad spirits

やっとの思いで街に到着した。

が・・・思っていたよりも規模が小さい。


これは街と言うよりも村なんじゃないだろうか。


そびえ立つ城壁や、人の力では開けられない程大きな門や、街に入る為の審査を待つ行列等も当然ながら無い。


「これは・・・入っても良いのか・・・?」


城壁は無いが柵はある。

腰の高さぐらいしか無いので簡単に乗り越えられてしまう様な簡素な作りの柵が。


「ん?アンタ誰だい?」

「えっ」

「もしかして旅の人かい?」

「え、あ、はい」

「そうかい。だったらウチにおいで。この村唯一の宿屋だからね」

「は、はい」


第一村人は都合良く宿屋のおばさんだった様でそのまま宿屋まで案内される。



「ホントだもんっ」

「あー、分かった分かった」

「絶対分かってないー」

「静かにおしっ。お客さんだよっ」

「ん?見ない顔だな」

「旅の人だってよ」

「へぇ、珍しいな。・・・って事ぁ泊まりかっ」

「そう言ってるだろ。さっさと掃除して来な」

「お、おうっ」


この宿屋の主人だろうか。奥さんの尻に敷かれてるっぽいな・・・。


「素泊まりなら銅貨3枚。夕飯も付けるなら4枚。どうする?」

「えっと、じゃあ夕飯もお願いします」

「あいよ。出来たら持ってくからね。適当に座って待っといとくれ」

「はーい」


何となく、異世界の宿屋って2階建てなイメージだった。

入り口に受付があって、1階はテーブルや椅子が並んでいて宿屋の食堂兼酒場といった感じで2階や3階が宿泊スペース。

そんなイメージだったけど、この宿屋はたぶん平屋。


テーブルが6つあり、3つは埋まっている。

空いているテーブルに掛けて待っていると。


「お待たせしました」

「はーい」


入った時にこの宿屋の主人と喧嘩していた女の子。ここの子供なんだろう。その子が食事を持って来てくれた。


「お客さんってどこから来たんですか?」

「え、俺?えっと・・・」

「私さっき森でエルフ見たんですよっ」

「えっ」

「ニーナぁ・・・お客さん困らせるんじゃないよ」

「だって見たんだもん」

「もう10になるんだよ?いい加減エルフなんてお伽噺信じてるんじゃないよ」

「だってぇー」

「配膳が済んだなら掃除の手伝いに行ってきな」

「はぁーい」

「悪かったね」

「あ、いえ、あの・・・」

「なんだい?」

「エルフって・・・」

「まだまだ子供で困ったもんだよ」

「はぁ・・・」

「森まで薪拾いに行かせたんだけどね。何時まで経っても帰って来やしないし、やっと帰って来たと思ったら小枝の1本も持たずに帰って来るんだからね困ったもんだよ」

「それでエルフ・・・」

「そう!」

「!?」

「遊んでて薪拾いを忘れた言い訳にエルフに追いかけ回されたとか言ってるんだよ」

「でも、エルフって・・・」

「そうなんだよ。居もしないものを言い訳にされてもねぇ」


え?さっきからどうもおかしいと思ってたけど、居ないことになってんの?


「ま、まぁ・・・エルフは居ないにしても森とか危なくないんですか?」

「手前だけなら危なくは無いよ。うん、それも言って聞かせないとだね」

「そうですね・・・」

「あぁ、気にせず食べとくれ」

「は、はい。いただきます」

「あいよ」


献立は、常温のミルク。トロトロに溶けたチーズの乗ったパン。そして、熱々のクリームシチュー。


1日中森の中を歩き回って汗だくになって、そして疲れ切った身体に・・・めちゃくちゃ熱が篭もるっ。


汗が止まらない・・・。

こんな時は冷たいぶっかけをかっこみたい。


いや、これも美味しいんだけど・・・すだちを垂らしてさっぱりしたぶっかけを・・・。

あぁ・・・。


「美味しそうに食べてくれるねぇ」

「え、あ、はい・・・」

「聞いてなかったんだけど、何泊するんだい?」

「えっと、そうですね・・・とりあえず1泊で」

「まぁ、ウチの部屋は何時でも空いてるから。この村に留まる事になったら言っとくれ」

「はい」



さっきの女の子が森で俺とアリスさんを見て悲鳴を上げて逃げていった子だろうけど。

俺には気付いてなかったみたいだし、問題無くこの村に居れる事も分かった。


報告に来こなくて良いとは言われてるけど、明日の昼まで待たせるのも悪いし、この後で森まで報告に行って来よう。


「ごちそうさまです」

「あいよ。ニーナ。ニーナー」

「はぁーい」

「掃除は?」

「終わったよ」

「だったら、お客さんを部屋に案内して来とくれ」

「はーい」

「おっと、その前にお代だったね。銅貨4枚だよ」

「はい。あ、その前にトイレ良いですか?」

「そこの戸を出て直ぐのトコにあるよ」

「はい」


危なかった。

流石にアイテムボックスから取り出す訳にはいかない。


なので、トイレで用を足すついで・・・いや、こっちが本命だが。アイテムボックスから金貨の詰まった革袋を取り出した。

中を確認すると金貨だけでなく銀貨や銅貨も何枚か入っていたので銀貨を1枚ズボンのポケットに忍ばせた。


「すいません。お待たせしました」

「食い逃げじゃなかったみたいで安心したよ」

「えぇっ」

「はっはっは。冗談だよ」


いや、でも、状況的には疑われても仕方無い動きをしていたか。


「えっと、これでお願いします」

「あいよ・・・って、またえらく古い銀貨だね」

「あ・・・」

「まぁ、銀貨は銀貨だから問題無いけど。こんな古いのどこで見つけて来たんだい?」

「あ、いや、えっと・・・」

「それじゃあ、銅貨6枚のお返しだよ。新しい銅貨で申し訳ないけどね。はっはっは」

「あぁ、はい・・・」

「それじゃあ、部屋まで案内頼んだよ」

「はーい」


案内されたのは部屋と言うか離れの小屋だった。


「鍵はここに置くね」

「あ、うん」

「ロウソク、1本目は無料だけど2本目からは有料になります」

「うん」

「マッチはそこの引き出しに入ってます」

「うん」

「後でお湯とタオル持って来るね」

「え、うん」

「おにーちゃん結構臭うよ?」

「え?マジ?」

「うん。マジマジ」

「それじゃあ、お願い・・・」

「うん」



小さい女の子に無邪気に臭いって言われた・・・。

もしかしたら立ち直れないかもしれないっ・・・。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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