120話 ダンジョンの悪魔
階段を上り安全地帯を出ると冒険者が2-3人のパーティーを組み区画毎に活動をしていた。
常に1人がポップアップするモンスターに備えて武器を構え。残った1-2人は鶴嘴でダンジョンの壁を掘っている。
松明の並んだ通路。あれを1階とするなら2-3階は全ての区画が冒険者で埋め尽くされモンスターとエンカウントする事もなく4階まで来た。
目的の階層まで楽に行けるのは良いが。
区画毎に「後ろ通りまーす」と、そこそこの大声を出さないといけないのが微妙に面倒臭かった。
横幅4メートルくらいはあるので避けて通れば振りかぶった鶴嘴が当たる事は無い。
よっぽど運が悪くないと当たりはしないとは思うが。そのよっぽどの人が過去に何人も居た為にこういった慣例が出来たそうだ。
「音が大きいから後ろを通る人に気付かないらしいですっ」
「あー、ガンガンガンガンうるさかったもんね」
そして、謎なのが・・・。
安全地帯から安全地帯まで1本道。
則ち、トンネルみたいなもんだと思うんだけど。音が反響していない。
自分が居る区画の音は当然聞こえている。
隣の区画の音も聞こえている。でも、その隣の区画の音は聞こえていないんじゃないかと思う。
「あれって何でなんだろうね?」
「ダンジョンだからじゃないんですか?」
「なるほどっ」
ダンジョンだから。
そう言われてしまうと反論の余地がない。
ファンタジーのパワーが今日もこんな所で炸裂していた。
「この階は人気が無いみたいなんで。私達はここで狩りをしようと思いますっ」
「うん」
「私が前衛をやるから、ユウさんは周囲の警戒をお願いしますっ」
「りょーかいっ」
短槍を構えたエイミーの後方を着いていく。
すると・・・前方から悪魔が現れた。
つぶらな瞳。短い手足。コーギーみたいな見た目で二足歩行。
そんな悪魔が身体を左右に揺らしながらトテトテと向かってきた・・・。
「コボルトじゃんっ!」
「はいっ」
エイミーさんは躊躇う事無く、コボルトの喉元を一突きにした。
「コフッ・・・キュウーン・・・」
コボルトオオオォォォ・・・。
「場所が違ったら強い可能性もあったんですけど、エーリューズと一緒ですねっ」
「う、うん・・・」
「ユウさんは安全地帯で解体して貰って良いですか?」
「うん・・・」
またしても悪夢の日々が続くのか・・・。
倒したコボルトをアイテムボックスに収納しながら奥へと進み。4階、最奥にある安全地帯が俺の仕事場となった。
「狩ったら持って来ますねっ」
「う、うん・・・気を付けてね」
「はいっ」
只管にコボルトのお腹に解体用のナイフを突き立て、手を突っ込んで魔石を探り当てる簡単なお仕事。
ビー玉大のサイズがあるので手が当たれば直ぐに分かるが、魔石がある場所はランダムで喉の近くにある時もあれば下腹部にある時もある。
なので、意外と時間が掛かったりする。
それ以上に心の消耗が激しいけど・・・。
「今日はこのくらいにしましょうか」
「え、うん」
狩り大好きっ娘のエイミーがかなり早めに切り上げを提案するとか珍しい。
「エーリューズと違って湧きが遅いから他の階層の方が良いかもしれないです」
「へぇ。ダンジョンに依ってそんな違いがあるんだ?」
「みたいです。帰りに冒険者ギルドで色々話聞いて来ますねっ」
「うん」
いや、違うっ。
ここには狩りに来た訳では無い。
うどんに合う鰹節を求めて10日も掛けて移動して来たんだっ。
「明日は鰹節買いに行きたいんだけど」
「場所は分かってるから大丈夫ですっ」
相変わらず仕事が早い。
流石、光速の赤ずきん。
エイミーはコボルトを担いで持って来るので血まみれで完全に赤ずきん仕様です。
「帰りに寄ってみます?」
「え?今日?」
「はいっ」
「きょ、今日はもう良いかな・・・。明日にしよ?」
「そうですね。もう遅いからゆっくり選べないですもんね」
「うん」
それもあるけど。
血まみれのまんま買い物してるヤツとかぜってーヤベーヤツじゃん。
何とかエイミーの説得に成功し、ダンジョンを後にした。
そして、宿に入るとそこは・・・宴会場だった。
「え?」
これまでに見た事のある宿屋は入って直ぐに食事スペースがありテーブルが並んだりしていたが。
ここにテーブルは無く。皆、床に座り。各々が車座になり飲んでいる。
それも、身長的にはエイミーと大差無い。子供サイズの人達が浴びる様に飲んでいる。
顔や頭に付いた返り血は拭ったが服まではどうしようもなく、血まみれのままなので宿の人には驚かれた。
因みに、他のお客さん達はこちらに露ほども関心を示さず飲み続けている。
部屋に入り、貰ったお湯で身体を拭い服を着替える。
水と布で拭っただけだと血が残る様で肌が突っ張って痛い・・・。
それで、ようやく人心地つけた。
いつもお読み頂きありがとうございます。




