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115話 完成

翌朝。

エイミーが何種類か購入してきた中力粉でうどんを。


と、思うと全く眠れず。布団の中で何度も寝返りを打ったり羊を数えたりしていたが寝付けず。

宿の食事スペースに来ていた。


「見ねぇ顔だな」

「今日、この街に着たんです」

「良い街だろ?」

「そうですね」

「ん?飲み(もん)がカラじゃねぇか。ねーちゃんコッチにエール2つだっ」

「あいよー」


あ、俺、お酒は・・・。と言いかけたが。

断るのも気不味いし、飲んだら寝れるかもしれないと思い。

1杯だけ付き合う事にした。


「プハーーーーッ」

「はっはっは。良い飲みっぷりだな。ねーちゃんお代わりだっ」

「あいよー」


と、気付いた時にはこれが一体何杯目のエールなのか数えられないくらいに飲んでいた。


気の良いおじさんといった感じのこの人は実は護衛任務を専門に熟す冒険者でペールさんと言う。

Cランクでベテランの中堅冒険者といった所らしい。


「寝れねぇ時はカッと飲んでベッドに潜り込んじまえば気付いた時には夢の中だ」

「は、はひっ」

「っても、良い感じに出来上がってんな」

「よるはまらまらこれかられすよぉ~」

「はっはっは。俺の夜はまだまだこれからだが。にーちゃんはそろそろ寝た方が良いな」

「あといっぱいらけ~」

「ねーちゃんすまんが部屋まで連れてってやってくれ」

「えぇ~、酔っぱらいは重いからアタシじゃ無理だよ。ペールさんが連れてってやっとくれ」

「そんな事言うなよ。ほれ、チップ弾むからよ」

「お?こんな良いのかい?」

「おう」

「任せときなっ」

「重いから無理とか言っときながら片手で軽々持ち上げてるじゃねぇか・・・」


という、やり取りがあったとか無かったとか。



「うぅっ・・・おはようございます・・・」


翌朝、日の出と共にエイミーに起こされた俺は完全に二日酔いだった。


「昨夜はちと飲ませ過ぎちまったな」

「あー、おはようございます・・・ペールさん・・・」


なんとか朧気な記憶を探って名前を捻り出した。


「ま、そうやって飲み方を覚えてくもんだ。身体でな」

「はい・・・って、あれからずっと飲んでるんですか?」

「いや?俺もあの後部屋に戻ったから。普通に朝飯だ」

「なるほど・・・」

「ねーちゃん。コッチの2人にも朝飯・・・は無理そうだな」

「無理です・・・絶対、吐きます・・・」

「だろうな。朝飯は1人分だ」

「あいよー」


エイミーの分だけ朝食が運ばれ。


「アンタはなるだけ水飲んどきな」

「はい・・・」


俺には大量の水が運ばれて来た。


「ペールさんって護衛専門なんですよね?」

「おう」

「って事は、行商の護衛とか船の護衛とかですよね」

「いや、船専門の護衛だな」

「あ、そうなんですね」

「あー、前は行商の護衛もやってたんだが・・・」

「はい」

「移動すんのしんどいだろ?」

「え?そんな理由ですか?」

「その前はダンジョンも潜ってたんだが。ダンジョンって息が詰まるだろ?」

「ま、まぁ・・・そうです・・・かね?」

「船なら乗ってるだけだし。時間も短くて済むからな」

「あー、そういう考え方もあるんですね」


ペールさんはファイヤーボールが使えるらしく。

それも、船の護衛に向いているとの事だった。


今日もこれから護衛任務らしく、俺達より先に宿を出ていった。


「私はやっぱりダンジョンが好きですっ」

「あー、エイミーはそうだろうね」

「護衛専門って事は相手が人ですから・・・」

「あ、そうか・・・」


盗賊だったり海賊だったり法を犯している相手とはいえ、モンスターと違って(れっき)とした人間だ。

護衛専門って事は対人専門って事でもあるのか・・・。


「あ、すいません」

「ん?なんだい?」

「ちょっと作りたい物があるので調理場を貸して貰えませんか?」

「そろそろ朝のラッシュも終わるから。その後でなら良いよ」

「ありがとうございますっ」

「あぁ、昼の仕込みを始めるまでの間だよ?」

「はいっ」


朝食を食べ終えたエイミーは調理場に入り。うどんを打ち始めた。


「パンかい?」

「うどんって麺料理です」

「へぇ」


エイミーは生地を台に叩きつけたりせず地味に捏ね続けている。

流石エイミー先生。分かってらっしゃる。

体重を掛けて押し込み。平たく延びて来たら折り重ねて。また延ばしていく。


「ふぅ・・・これに布を被せて寝かせます」

「ふむふむ」


そして、また別の種類の中力粉で生地を作っていく。


俺?見てるだけですね。

相変わらず見守っています。


「次は寝かせてた生地をもう1回軽く捏ねます」

「ふむふむ」

「そうしたら、また寝かせます」

「結構、手間が掛かるんだねぇ」

「その分、美味しくなりますからっ」

「少しの手間と少しの愛情が1番の調味料ってね」

「はいっ」

「麺料理なんだろ?」

「はい」

「どんな形にするんだい?」

「細長くしますっ」

「パスタみたいな感じかい?」

「はいっ」

「だったら、ウチにもあるから使って良いよ」

「パスタマシンですか?」

「うん。使うだろ?」

「ありがとうございます。でも、使わないです」

「ふむ」


この時点で1時間以上エイミーはうどんを打ち続けている。

その小さい身体にどれだけスタミナが詰まっているのだろうか・・・。


「中揉みと2回目の寝かせが済んだら。打ち粉を振って延ばしていきます」

「それは?」

「天ぷらとかに使う小麦粉です」

「あぁ。くっつかない様にだね」

「はいっ」


麺棒を使って延ばしていき、綺麗な正方形の出来上がり。


「ふ~ん。手慣れたもんだねぇ」


そして、また打ち粉を振り。折りたたみ切っていく。


トントントン。と、リズミカルに均等に切り分けられ。みるみる内にうどんが出来上がっていく。


「切った所同士がくっつきやすいので打ち粉を払い落としながら切った所にもまぶしていきます」

「ふむ」

「それで、1人前ずつ分けていけば完成です」

「「おぉ~~~~」」

「で、それはそのまま食べる訳じゃないよね?」



あっ!!!

うどん出汁忘れてんじゃん!!!


いつもお読み頂きありがとうございます。


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