113話 マリオンさん
「分かってるのですか?」
「はい・・・すいません・・・」
「アナタがした行為は冒険者ギルドを。延いては冒険者全員を貶める行為でもあります」
「はい・・・すいません・・・」
見た目は冒険者、中身は一般人。
その名は、漁師キザイア!
そんな厄介な絡んで来たおっさんを撃退したらこれでもかってくらいにお説教をされている・・・。
最初は自分の正当性を主張する為に反論もしたが・・・火に油を注いでいるだけだと気付き平謝りにシフトした。
「本来であれば、サヌキからの追放と冒険者資格の剥奪。この辺りが妥当なのですが」
「いや、それは困りますっ」
「な・の・で・す・がっ!」
「はい・・・」
「反省してる様ですし。特別に今回は不問とします」
「ありがとうございますっ」
っても・・・最初に不問にするって言ってたんだから・・・このお説教に意味は無いと思うんだけど・・・。
「何ですか?」
「えっ?」
「何か不満でも?」
「いやいやいや、寛大な処置に感謝しますっ」
「ですよね?」
「はいっ」
鋭すぎだろ・・・この職員さん・・・。
「それで、この街へはどういった用件でいらしたのですか?」
「醤油です」
「はい?」
「醤油です」
「いえ、聞こえています」
「あ、えっと、薄口醤油があると聞いて」
「情報は微妙に増えていますが私の欲しい答えからは果てしなく遠いままです」
「あれ・・・えっと、醤油知らないですか?」
「醤油は存じ上げております。薄口醤油も醤油のなにかの種類なのも想像出来ます」
「だったら」
「目的を聞いているのです」
「だから、醤油です。薄口醤油を買いに来ました」
「冒険者なのですよね?」
「はい」
「商人ではなく」
「はい」
「薄口醤油を購入して来る依頼を受けているのですか?」
「受けてないですね」
「個人的に?」
「はい」
「醤油を買う為だけに?」
「はい。あ、鰹節と昆布もあれば欲しいです」
「本職は料理人だったり」
「しないですね」
「では、醤油は鰹節等は何にお使いになるのですか?」
「うどんを作りたくて」
「ウドンですか・・・」
「はい」
「その、ウドンとはどういった・・・」
「うどんはですねっ!」
「わ、私が説明しますっ!!!」
「「え?」」
冒険者ギルドの中とはいえ、それなりの賑わいを見せている。
そんな衆人環視の下、正座させられお説教を延々と食らい続けている俺を放置していたエイミーが突如として介入して来た。
「わ、私に任せて下さいっ!」
「う、うん・・・」
うどんの魅力を伝えるに当たって。
俺以上に相応しい人間はそうそう居ないと思うが・・・俺が打ったうどんは不味い・・・。
これは、揺るがない事実であり。まだエイミーが打ったうどんを食べた事は無いが恐らく俺のよりは美味しいだろう・・・。
その点で確実にエイミーに劣る。なので、エイミーがうどんの魅力を伝えたいと主張する以上、断る事は出来無い。
「という感じの料理ですっ」
「なるほど」
「いや、それだと概要を伝えただけで。うどんの魅力そのものには全く触れていないっ!」
「ユ、ユウさん・・・あのですね・・・」
「ウドンそのものには興味が無いので結構です」
「えっ!!!?」
「この街の名前はサヌキですが。本来はウドンになる予定だったのです」
「「えっ?」」
「元々はサウサドサンという名前だったのですが。サが多く言い難いという事で、その時の領主がサを抜く様指示したのです」
「は、はい・・・」
「サウサドサンからサを抜いてウドンにする予定が。伝えた相手が勘違いをしてサを抜くをサヌキと受け取り。サヌキになった経緯があるのです」
「な、なるほど・・・」
「それで少し気になっただけですので。アナタ方の仰るウドンには全く興味はございません」
「ぐっ・・・」
「一応、この街にいらした目的も判明しましたので。おかえり頂いて結構です」
「はい・・・」
「但し。次に問題を起こした時は容赦しませんのでお気をつけ下さい」
「は、はいっ・・・」
ようやく長く続いたお説教が終わった。
それにしても、俺の地元である香川の旧国名である讃岐と同じ名前のサヌキという街。
そして、本来であれば俺の愛するうどんと同じウドンという名前になる予定だった街。
その街で念願のうどんに必要な材料が揃うというのだから、縁というか因縁というか・・・そういったものを感じずには居られない。
「まずは宿を決めましょう」
「うん。あ、その前に鰹節と昆布を・・・」
「場所は分かってるから、先に宿に行きましょ」
「え、うん」
流石エイミーさん。仕事が早い。
宿を決め。荷物・・・はアイテムボックスに全部入ってるから部屋だけ確保して鰹節と昆布が手に入る見せへと向かった。
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