112話 常連さん
「いやぁ~・・・どうなる事かと思ったけど、どうにかなりそうだね」
「はい・・・女将さんのおかげですっ」
コリングの野郎がコールさんの恨みを買ってたおかげで危うく向こうに渡れない所だったが、女将さんのおかげで何とかなりそうだ。
「すみません。お待たせしました」
「どうでしたか?」
「はい。直にもう1人も来ます」
「お代の方ですけど」
「そうですね。馬も乗せるので2艘で銀貨1枚頂ければ」
「はいっ。では、お支払いしますねっ」
「向こうに着いてからで良いですよ」
「そうですか?」
「はい。あぁ、来た様ですね」
今回も難なく船に乗ってくれて、この子達は本当に良い子だ・・・。
暴れもしないし、心配していた事は全て杞憂に終わった。
「いやぁ、賢い馬ですねぇ」
「はいっ」
「普通はこんな不安定な船なんて嫌がりそうなモンなのにねぇ」
「助かってます」
「まぁ、ちょっと重いから進みが遅いのが難点だけどねぇ」
「そこは、まぁ・・・仕方無いですね・・・」
「その分も貰ってるから頑張らせて貰いますけどねっ!」
と、そうこうしている内にアッサリと対岸に着いた。
「それじゃあ、2艘分。まとめてで良いですか?」
「いえ」
「え?」
「良い話を聞かせて頂いたので・・・ぶふぉっ・・・す、すみません・・・プクク・・・お代は結構です・・・ぶふっ」
「おい、お前は良くても俺は要るぞっ?」
「あぁ、すまない。お前の分は俺が持つ」
「「「えっ?」」」
「良い話を聞かせて頂いたので。むしろこっちが払いたい気分ですよ・・・ぶふっ・・・」
エ、エイミー何言ったの・・・?
「次からはお代を頂きますが。ここを渡りたい時は何時でも声を掛けて下さい」
「はいっ。あ、でも、ホントにお代は良いんですか?」
「はい。それでは失礼しますね」
「はい。ありがとうございました」「ありがとうございました」
「よぉし、戻ったら飲むぞ。俺の奢りだっ」
「おぉ、マジか!」
コールさんは気分上々といった感じでノリノリで引き上げていった。
「エイミー?」
「はい?」
「コールさんに何言ったの?」
「ナイショですっ」
「えぇ~・・・」
「さっ、行きましょっ!」
「う、うん・・・」
エイミーさん反抗期かな・・・?
全然、教えてくれない・・・。
海を渡ってから海岸沿いをひた走る。
折角、海に来たんだから。鰹節とか昆布を早く仕入れたい。
だが、最初に着いた港町以降は村さえも無く野宿が続いている。
その為、買い物も出来ていない。
「そろそろ大きな街に着くはずです」
「おぉっ!って、村とかも全然無かったのに、いきなり街なの?」
「みたいです」
エイミー曰く、港がある所を中心に発展していていると言うよりも、向かいに渡れる所に港が出来て、そこだけが局地的に発展しているらしい。
そして、遂にサヌキという街に辿り着いた。
「冒険者ギルドもあるみたいなんで、まず馬を預けましょう」
「うん」
局地的に発展を遂げていると聞いて、ガラパゴス的な特殊な発展を遂げているのか。それとも、大都会な様相を想像していたが虫の街を少し小さくした様な普通の街だった。
うっ・・・嫌な予感が・・・。
「エイミー」
「はい?」
「ここってダンジョンは?」
「無いみたいです・・・」
「あ、そうなの?」
「はい。海賊が多いみたいで、護衛任務がほとんどみたいです」
「へぇ~」
「ユウさんなら大活躍でしょうけど・・・私は・・・」
「え?なんで?」
「ユウさんは遠距離の攻撃スキルがあるんで」
「あー、船vs船だと遠距離の撃ち合いになるのか」
「海賊にそんなスキル持ちは居ないと思いますけどね」
「持ってたら、普通に冒険者やってるって事?」
「はい。だから、ユウさんなら一方的にやれると思います」
「それってもしかして・・・」
「??」
「1人ずつ撃ち殺してくって事だよね」
「そんな事しなくても、船底に穴を空けるだけで良いですよ。帆船なら帆に火を放つだけでも」
「あ、なるほど・・・」
いつの間にか物騒な思考回路になってしまっていた。
「馬を預けて来るから、ちょっと待ってて下さい」
「あ、だったら俺も行くよ?」
「大丈夫です。待ってて下さい」
「あ、うん・・・」
冒険者ギルドの入り口で放置されてしまい、暇を持て余してしまった。
それが良く無かった・・・。
中をチラチラと覗いたり、手持ち無沙汰にキョロキョロと辺りを見回してたのが物凄く目立ってしまったのだろう。悪目立ちってヤツだ。
「ここはお前みたいなガキが来る所じゃねーんだよ」
「えぇ~・・・」
分かりやすく絡まれてしまった・・・。
しかも、このパターンは異世界に来て最初にやるヤツ・・・。
「ウィンドアロー」
バシュ───。
と、相手には当たらない様に地面に向けて撃った。
「ヒ、ヒィィィィィ」
腰を抜かしてへたり込んでいる。
はっはっは。これぞ異世界転生の醍醐味。
「何事ですかっ!?」
と、ギルド内から職員さんと思しきメガネのお姉さんが現れた。
「いやぁ、ちょっと絡まれたんで追い払おうかと思って」
「あぁ・・・またキザイアさんアナタですか・・・」
またって何?常連さんなのっ?
「ふむ・・・まぁ、怪我もさせていない様ですし。今回は不問にします・・・」
「お咎めナシですか?」
「はい。その方が宜しいですよね?」
「え?」
「街中でスキルを放ち。一般人に怪我をさせかけたのですから」
「あれ?悪いの俺の方ですかっ?」
「はい。キザイアさんはああ見えて普通の漁師さんです」
「えっ」
めちゃくちゃ防具も着込んでるし、帯剣もしてるんですけど・・・。
「冒険者になりたかったけどなれなかった可哀相な一般人です。色んな意味で可哀相な人なんです」
「う、うっせぇ・・・なろうと思えば今からだってなれらぁ!」
「あ、はい・・・ごめんなさい・・・」
「素直に謝れるのは良い事です。キザイアさんもそろそろ懲りて頂けませんか・・・?」
うん。この職員さん恐ろしい。
傷口に塩を・・・いや、傷口にデスソースを摺り込んでいくスタイルが。
いつもお読み頂きありがとうございます。
前作のテンプレ異世界転生も意外と大変に置いて全く持って重要じゃないキャラだったキザイアさん再登場です。
名前すら要らないポジションなのに作品を跨いでの登場です。
何故だ・・・_(┐「ε:)_




