107話 ゆうたの
翌朝、階段を下りていくと階下にはここの娘さんが待ち構えていた。
年の頃はエイミーよりも少し上で俺よりも少し下だろう。
こういう場合「おはよう」と言うべきか「おはようございます」と言うべきか悩む。
そんなどうでも良い。でも、今の俺にとっては切迫した問題を考えていると。
「ゆうべはお楽しみでしたね」
「へっ・・・?」
「って言えってお母さんが・・・」
「あ、あぁ・・・なるほど・・・」
「どういう意味なんですか?」
うん。
そんな純粋な目で俺を見ないで・・・。
「お母さんに聞いたら?」
「教えてくれなかったんで・・・」
「じゃあ、お父さんかな・・・」
「そうですねっ。聞いて来ます!・・・じゃなかった、朝ご飯は食べますよね?」
「うん」
「用意するので掛けてお待ち下さい」
「はーい」
年頃の娘にシモネタの意味を聞かれるという罰ゲームを喰らえっ。
元凶はお前の嫁だっ。
「あ、ユウさんおはようございます」
「おはよう」
「朝からどこ行ってたの?」
「馬の様子を見て来ました」
「どうだった?」
「いつも通りでした」
「そっか」
「賢い子達だから長旅も苦にしなくて手が掛からなくて助かりますねっ」
「オゥンドさんのが感染ってるよ」
「あっ・・・でも、どちらかと言うとユウさんのじゃないですか?」
「あー、そうかも」
「朝からお熱いね」
「そんなんじゃないですよ・・・」
「昨夜は楽しめたかい?」
「はいっ!」
「「えっ」」
エ、エイミーさんや・・・何を言い出すんだい・・・?
「あんな甘い蜜柑初めてで。堪能出来ましたっ」
「そ、そうかい・・・難しい言葉知ってるね。楽しんで貰えたなら良かったよ・・・」
「はいっ」
「持ってける分は持ってって良いからね?」
「良いんですかっ?ありがとうございますっ!」
「いやぁ・・・びっくりしたよ・・・」
「俺もびっくりしました・・・」
昨日と同様に頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるが。そのままの君で居て・・・。
「お待たせしましたっ」
「あ、うん、ありがと」
「そういや、昨日は聞きそびれちまったけど」
「はい」
「あぁ、食べながらで良いよ」
「あ、はい。いただきます」
「はい、おあがり。それで、醤油が欲しくてこんな田舎まで来たんだろ?」
「はい」
「でも、醤油ってのはそれだけで食べたり飲んだり出来無い物だからね」
「あぁ、はい。うどんを食べたくて」
「うどん?なんだい?そりゃ」
「えっと・・・小麦粉を練った麺を鰹と昆布の合わせ出汁と醤油で味を整えたスープに入れた料理ですね」
「へぇ。そんなのがあるんだね。まぁ、この辺りなら海も近いし醤油もあるし丁度良いのかもね」
「はい。そう思って遥々やって来ました」
「そんな美味しいのかい?」
「あ、女将さんっ・・・」
「ん?なんだい?」
「うどんはですね・・・」
「あー、私は2階に行ってますっ」
「ユウさん。ユウさんっ!」
「ん?なに?」
「もうそろそろ・・・」
「なにが?」
「もうお昼を回ってます・・・」
「え?」
「それと・・・そろそろ解放してあげて下さい・・・」
「え?」
俺の正面には。
ハイライトの無くなった目で虚空を見つめる、この宿屋の娘さんが正座していた。
「え?」
「やっと正気に戻ったのかい?」
「すいません・・・ユウさんはたまに「ああ」なるんです」
「厄介な病気だねぇ」
「はい・・・」
え?俺、何してたの?マジで怖いんだけど・・・。
「だから、アレには極力触れない方が良いんですっ」
「なるほどねぇ。ほれ、ケリー。あんたもそろそろ戻っといで」
「え?あれ?私・・・今まで何してたの・・・?」
「いいんだよ、思い出さなくて。辛い事は皆忘れちまいな」
「うぅ・・・お母さん・・・ヒーン」
「あぁ、よしよし。怖かったねぇ」
「ユウさんにケリーさんを押し付けたのは女将さんなんですけどねっ」
「要らない事言う子には蜜柑あげないよっ?」
「ご、ごめんなさいっ」
「それで、時間も時間だから動くんだったらそろそろ動かないと日が暮れちまうんじゃないかい?」
「あっ、そうでした」
「今から出発?」
「はいっ」
裏口に回り馬に鞍や鐙など馬具を急いで着け。
すぐさま馬に跨り出発となった。
「って、部屋に物とか置いたままだった」
「大丈夫です。また、あの宿屋に戻るんで」
「あ、そうなの?」
「はい。今から醤油蔵に行きます」
「おぉー」
村から離れ、少し山手の方へと向かうと。そこはかとなく醤油の香りが漂って来た気がする。
「何か醤油の匂いするね」
「え?」
「あれ?しない?」
「しないです・・・」
「気の所為かな・・・?」
気の所為だった。
何故なら、そこから更に1時間程馬を走らせた辺りで明らかに醤油の匂いがしたから・・・。
いつもお読み頂きありがとうございます。
文字数が少ない・・・。
補填で今日はもう1話更新しようかな(*´ェ`*)




