105話 アジト
山の麓で1泊し。まだ薄暗い時間から出発した。
今までに比べれば、そこまででもないが山間部ではやっぱり冷える。
山道はそれほど険しくもなく順調に歩を進める。
「おぉっ・・・凄い」
「え?」
「下、下」
一旦は川から離れ、蛇行しながら山を登っていたが。
谷になった部分・・・足を滑らせれば即死だろう・・・。
そんな断崖絶壁沿いの道に出た。
そして、そこには靄が敷き詰められ幻想的な風景が広がっていた。
「ふわぁ~」
「凄いね」
「はいっ」
湖を越えてからだろうか。
盗賊の出る頻度も減り、心にゆとりが出たのかもしれない。
そのおかげで景色を楽しむ余裕が出た。
「何か、頑張ろう!って思えましたっ」
「え?元気無かったの?」
「えっ、ありましたけど、もっと頑張ろうって!」
「ま、まぁ、無理しない程度にね?」
「はいっ」
元気があるのは良い事だ。
何故かエイミーが頑張ろうとする時って俺としては頑張らないで欲しい時が多いイメージなんだよなぁ・・・。
コボルトとかGとか・・・。
エイミーが頑張った所で進むペースは変わらない。
お馬さんの体力とか体調に合わせたペースだから。
それでも、そこまで大きな山じゃなかった様でアッサリと山越えを果たした。
それまでは川幅も狭く大きな岩もゴロゴロしていて急流って感じだったが、山を越えた途端に川幅も広がり流れも穏やかになった。
「ここからなら船でも大丈夫って感じ?」
「はいっ」
「まぁ、馬で行くけどね」
「はい。ここまでに比べたら安全ですけど、やっぱり事故はありますから」
「だよね」
「はいっ」
そこからも川沿いを進んだが。
エイミー曰く、遠回りだけど川沿いの方が道も良くて治安も良いらしい。
そして、この辺りに有名なダンジョンがあるらしいが。
Gやバッタ等、嫌になるくらい狩りまくったおかげで懐は温かい。
なのでスルー。
しかも、出るモンスターが怖くて強いらしいので余裕のスルー。
強いのは分かる。でも、怖いって何っ?
絶対、行きたくないっ。
そこから数日でこれまでに見た中で最大の街に着いた。
「ここには何でもあるそうですよ」
「え?何でも?」
「はい。川を使って船で物を運ぶから色んな所から色んな物が集まるらしいです」
「へぇ~・・・だったら、うどんも・・・」
「無いみたいですね」
神は死んだ。
むしろ、死ね・・・。
そして、何でもは無いよ。ある物だけ・・・。
「そっか・・・あ、でも、だったら醤油はあるんじゃないの?」
「あると思います」
「あ、そうなんだ」
「海も近いからユウさんが言ってたのもあると思いますよ」
「え?じゃあ、ここが目的地?」
「目的地はもうちょっと先です」
「あ、ここじゃないんだ」
「はい。キーシュが醤油の名産地らしいんで」
でも、どっちも手に入るならここでも問題無い気もする・・・。
「あと、ここは治安が最悪らしいから・・・」
「こんな大きな街なのに?」
「はい。ここの住人は全員盗賊だと思え。って言われました」
誰にっ。
住人全員が盗賊ならそれはもう盗賊のアジトじゃんっ。
「よし。早く出よう」
「はいっ」
何でもあるという街を素通りして、醤油もあるはずなのに買わず・・・。
もしかしたら鰹節や昆布もあるかもしれないのに探す事すら無く目的地であるキーシュを目指した。
「キーシュに行ってからカンサスに行くの?」
「カンサスにはもう入ってます」
「え?」
「カンサスの中にキーシュがあるんで」
カンサス県キーシュ市みたいな感じ?
だったら、もうキーシュは目の前か。
「キーシュまで後どのくらい?」
「ゆっくり行っても明後日には着きます」
「おぉー」
「予定では明日の夜までに到着する感じですね」
遂に・・・。
遂に醤油を気兼ねなく使える日がやって来たっ。
まぁ、さっきの街で買えばその時点から使い放題だったんだけど。
1-2日なら誤差っ。
オゥンドさんに連れて行って貰ったお店でお願いしたら快く醤油を譲って貰う事が出来。
それを大切に大切に使っていたのだが、残りはもう僅か・・・。
ここ最近は文字通り舐める様に醤油を消費して来た。
塩茹でした芋に醤油を1滴垂らして食べたり。
そんな色んな意味で塩っぱい食生活から脱却出来る。
そして、ようやく辿り着きました。
念願のキーシュにっ。
陽も傾き始め薄暗くはなって来ているが、どう見ても寒村。
あれ?思ってたんと違う。
海外旅行に行くと。
向こうの空港に着いた時点で空気と言うか匂いが違うって話を聞いた事がある。
そして、日本に帰って来た時。
空港に降り立った時点で醤油だったり味噌だったりの匂いを感じるとも聞いた。
だから。
キーシュに着いたら醤油の匂いがすると思ってた。
でも、この村に充満している匂いは・・・柑橘系っ。
あ、そうか。
ポン酢?
にしては、醤油の匂いを一切感じないけど・・・。
いつもお読み頂きありがとうございます。
サクサク進めたいのにやっぱり歩みが遅い。
これでも早く進めようとは努力してます(*´ェ`*)




