104話 青柳橋
冬の最期の抵抗だったのか。あれ以降、雪は降っていない。
なので、翌日からは順調に進む事が出来た。
「今日は特に暖かいね」
「はいっ」
「良い事ばっかりじゃないけど・・・」
「ですね・・・」
暖かいと色々出て来る。
やる気も出れば、芽も出て来るし。
虫も出れば、盗賊も出て来る。
「さっきので今日は何回出たっけ?」
「3回ですっ」
「出過ぎじゃない?」
「春ですから・・・」
今は街道沿いの野営地でお昼休憩をしている。
お昼までに3回も盗賊が出るとか・・・。
朝からそんな真面目に働く気があるなら盗賊なんて辞めて真っ当な職に就けば良いのに・・・。
暖かくなり、盗賊は頻繁に出るが。実はほとんど相手をしていない。
基本的に盗賊は荷馬車だったり徒歩の行商を狙う。
理由は単に移動速度が遅いから。
俺達は身一つで馬に跨っているので。最初の奇襲さえ躱してしまえば、そのまま振り切れる。
エーリューズダンジョンのスライムから得たスキル。気配察知のおかげで敵意を持った相手が近くに居ると分かる。スキルレベルが上がった事で範囲も広がりタイミングも分かって来た様な気がする。
まぁ、エイミーさんの索敵能力が高すぎて俺の気配察知が仕事をする機会は貰えてないんだけど・・・。
そんなエイミーのおかげで事前に盗賊の居る場所が分かるから。迂回したり、ゆっくり近付いてから直前でスピードを上げて駆け抜けたり。と、戦闘になる事は稀だ。
そんなこんなで遂にやって来ましたっ。
「海だっ!」
「湖ですよ」
「え?」
「湖です」
「え?だって、水平線が・・・」
「大きい湖なんです」
「そ、そっか・・・」
異世界はやっぱりスケールが違った。
「で、どうするの?湖を迂回?それとも船とかで渡る?」
「急がば回れです」
「迂回?」
「はい。船の方が早いみたいなんですけど」
「うん」
「3回に1回くらい沈むそうです」
「確率高すぎっ」
「なので迂回します」
「しか、無いね」
という訳で、ひたすらに海沿い・・・では無く、湖沿いを走る。
確かに、磯臭くない。
水辺特有の匂いはあるが海の匂いでは無い。
どっからどう見ても海なんだけど、やっぱり湖なんだろう。
しばらく進むと対岸が見えて来た。
「本当に湖だったんだ・・・」
「え?まだ信じてなかったんですか?」
「いや、匂いもしないし湖ってのは分かってるんだけど。水平線の見える湖なんてありえないって気持ちもあって・・・」
「匂い?」
「ん?海って磯臭いでしょ?その匂いもしないし」
「磯臭い?」
「あ、もしかしてエイミーって海見た事無い?」
「はい・・・」
「まぁ、見た目はこんな感じだよ」
「塩っぱいんですよねっ?」
「塩っぱいね」
「ふえぇぇぇ」
いや、どういう感情?
「想像が付かないですっ」
「感動を奪う様だけど・・・これを臭くした感じ」
「臭いんですか・・・」
「人に依るとは思うけど。苦手な人も居るね」
「ふえ~」
進むにつれてドンドン対岸の距離が近くなり。いつの間にか流れも出来ていて川っぽくなった。
「もう少し行くと橋があるはずなんです」
「おぉー。それ渡るの?」
「はいっ」
川幅がだいぶ狭くなったとはいえ、かなり大きな川で。
遠目に見えた時は立派な橋だと思ったが近くで見ると丸太を無数に浮かべ、それを蔦で固定している安定性の無い橋だった。
「搦橋って言うそうですっ」
「何か響きが怖いね・・・」
馬から降りて渡ろうと思っていたが、こんな所で馬も暴れたりしないそうで馬に乗ったまま渡る事にした。
無事に渡り終え、スピードを上げる。
が、ずっと川沿いを走っている。
なので、休憩の時にエイミーに尋ねてみた。
「川沿いを進むなら。いっその事、船とかの方が早くない?」
「この後もしばらく川沿いなんですけど」
「うん」
「その後でまた川から離れるんですよ」
「うん」
「その時にまた馬を手に入れないとですし・・・」
「あ、そっか」
「ここでいきなり馬を売るってなっても高くは売れないと思います」
「なるほど」
流石に馬を船に乗せたまま移動ってのは難しいか。
「それと」
「うん」
「ここはまだ緩やかなんですけど。この後で流れもキツくなるから、船で移動するにしてもそれを越えてからですね」
「そっか。その辺はエイミーを信用してるから、エイミーに任せるよ」
「はいっ。えへへ」
そこからもう少し進み。
少し早いがそこを本日の野営地とする事になった。
「山越えすれば後は川の流れも緩くなるので船でも大丈夫だとは思いますけど、どうします?」
「馬は?」
「山を越えて、もう少し行けば街があるので。そこでなら売れると思います」
「エイミーの元々の予定は?」
「ずっと馬ですね・・・」
「なら馬でっ」
「良いんですか?」
「なんで?」
「船の方が早いですよ?危ないですけど」
「いや、危ないなら絶対に馬でっ」
「はいっ」
急がば回れじゃないんかいっ!
ってツッコミそうになった。
いつもお読み頂きありがとうございます。
書くペースが上がってる理由。
1話当たりの文字数が減ってるから_(┐「ε:)_
そんな理由な気がしますが順調に書けてるので当分は毎日更新の予定です(*´ェ`*)




