102話 領主の娘
雪もだいぶ解け、気温も少しずつではあるが上がり始め。
日中、日当たりの良い場所に居ると春の訪れを感じるが馬を走らせている時は極寒。
そんな季節の変わり目にエイミーと2人、馬を並べて走らせている。
すると、不意にエイミーが手を上げた。
一瞬、肩でも凝ったのかな?って思ったが、手信号だっ。
馬に乗ってるとお尻は痛いし腰も肩も凝るし全身バキバキになるんだよね・・・じゃなくて停止だっ。
慌てて手綱を引き寄せ、減速させてから馬を止まらせた。
「どうしたの?」
「馬車が襲われてます」
「え?」
目を凝らしてみるが、全く分からない。
「どこ?」
「あそこです」
エイミーが指差す方を見るがやっぱり分からない。
どんな視力してるんだ・・・。
「どうする?」
「助けた方が良いんでしょうけど・・・」
「スルー?」
「どうしましょう・・・?」
オゥンドさんなら余裕でスルーしそうだけど・・・。
助けられるなら助けてあげたいとは思う。
ただ、その正義感と天秤に掛けるのは自分の命だから・・・。
「俺はここからだと見えないんだけど、行商っぽい感じ?」
「何か高そうな馬車です」
なに・・・?
「襲ってるのは?」
「20人くらいの盗賊だと思います」
「多いね・・・」
「はい・・・」
領主の娘を助けてハーレムルートに突入。
そんな妄想が膨らんでしまう。
「助けた方が良いよね?」
「助けられるなら・・・」
「無理っぽい?」
「どうでしょう・・・?」
ハーレムルート・・・。
「よし。助けよう!無理そうなら逃げれば良いし」
「は、はいっ」
馬を走らせ近付いて行くと。護衛、数人が馬車を背に盗賊達と牽制し合っていた。
「くっ、増援かっ」
やばい。盗賊の一味と見做された。
そして、盗賊達の視線も集めてしまった。
「怪我したくなかったらすっこんでなっ」
あ、見逃してくれるらしい。
「コイツらが終わったら、次はお前らだぁ。ヒャッハー」
見逃してはくれないらしい。
そして、世紀末感が半端ない。
「助太刀、感謝するっ」
あ、強制イベントだ。
仕方無いか・・・。
「ファイヤーボール」
「ぐっ・・・スキル持ちかっ」
「近付いちまえばこっちのモン・・・ガハッ・・・」
「近付かせませんっ。ふんすっ」
いつの間にか馬から降り、俺の前に立っていたエイミーが盗賊の喉元にさっき渡しておいた短槍を突き刺した。
「くそっ、どうするっ?」
「構わねぇ、このまま数で押し切っちまえっ!」
と、盗賊達が一斉に群がって来る・・・。
「ぐああぁ」
一斉に今まで戦っていた護衛の人達を無視して俺に襲いかかった結果。
護衛の人達に背中から斬り殺されていた。
そこからはどちらに対処するべきか悩んだヤツから斬り、突き、撃ち殺されていった。
挟撃って凄い・・・。
2人と5人で挟んだだけなのに20人以上居た盗賊が呆気なく全滅してしまった。
「助かりました」
「いえいえ」
俺だけ馬の上に居るのも失礼かと思い下馬する。
「助けて頂いた上に失礼なのですが、身分証を見せて頂けませんか?」
「あ、はい。冒険者ギルドのギルドカードです」
「ふむ。ユウさんはDランクなのですね。もっと高いかと思いました」
「あー、まだ冒険者になって1年も経ってないんで」
「なるほど」
すると、豪華な馬車の扉が開き。中から美少女・・・では無く、おっさんが降りて来た。
「いやぁ、助かった」
「いえいえ」
「盗賊はこちらで処理しておく」
「あ、はい」
「まだ何か?」
「え、あ、はーい。では~」
思う所はあるが・・・面倒臭そうなので早々に立ち去る事にした。
「まさか謝礼もナシとは思わなかったなぁ」
「盗賊の報奨金も全部取られましたしねっ」
「あー、でも、横通った時に見たんだけど」
「はい」
「御者の人は殺されてたし」
そう。
他に被害は無さそうだったけど、御者の人は矢で射殺されていた・・・。
あぁ、馬車にも何本か矢が刺さっていたから修理代は掛かるかもしれないけど。
「そんなの気にしないですよ。貴族なんですからっ」
「あ、貴族だったの?あのおっさん」
「馬車に紋章があったんで貴族だと思います」
「そっか」
エーリューズでのあの3姉弟とか今回のとか。
どうも貴族様との相性は良くないみたいだ・・・。
領主の娘を助けてハーレムルート突入は欲ボケ過ぎるけど。
まさか口で礼を言って終了とは思わなかった。
「やっぱ放っときゃ良かったかなぁ」
「得は無かったですけど、損もしてないから・・・良かったって事で・・・」
「まぁ、助けれたんだし良かったか」
「はい」
見殺しにするのは後味が悪いけど。
そんな正義感と天秤に掛けるのは自分とエイミーの命なんだから、これからはもっと考えてから行動しよう。
そう心に誓った。
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