彼岸花〜また会う日を楽しみに〜
莉音は彼岸花を胸に抱え泣いていた。
仲良くしていた人達に別れを告げ、新しい道を歩み始めたのだが、やはり寂しさと後悔が押し寄せていた。
心残りはある。大事な人達を置いてきてしまった。
多くの人に「いなくならないで」と言われたのに、自分勝手な考えからその場から逃げてしまった。いや、逃げてしまったとは語弊があるな。まぁそれについてはいいことにしようじゃないか。
ある親友は悲しんでいた。
莉音の事が大事だから俺に頼って欲しかった。
莉音のことが必要なのに。どうして莉音は去ってしまったのだろうか。大事な存在が複数いたっていいのに。莉音に頼れって言って莉音も頼るといってくれたのに。頼って貰えなかった。
ある友達は悲しんでいた。
どうして莉音はいなくなってしまったのだろうか。
私はリリのことも莉音の事も大事にするのに。自分のことを放置してでも、二人を大事にするし優先するのに。莉音に何かあれば、真っ先に守りにいくのに。
僕はこう思ってくれた人達のことを無視してこの場所に来てしまった。無視はしていないが、本音で話し合った。だが結局僕のしたことはあの子達を裏切るようなことをしてしまったと言っても嘘ではない。
せめて罪滅ぼしに、僕は君達の元に戻ることはやめよう。嫌いだからというわけではないんだ。
もう僕のわがままで振り回したくないから。
僕の言葉で傷ついて欲しくないから。
みんなとの思い出は本当に楽しかったんだ。
でも、仲良くなるにつれてしんどくなっていってしまったんだ。頼れなくなってしまっていた。言えなくなってしまっていた。
守るべき存在は一人だけいたら十分なんだ。
だから邪魔者である僕がいてはいけないんだ。
僕がいたら君達に迷惑ばかりかけてしまう。
僕がいたとしてもいなくなったとしてもきっと何も変わらないだろう?
僕たちが出会う前に戻るだけなんだ。
後悔はしていないと言ったら嘘になる。
後悔しているさ。寂しいさ。
でも、僕が君達の元に戻ったらきっと今までと同じように繰り返すだけなんだ。だから僕は君達のところに戻ってはいけないんだ。
君達は僕のことを必要としてくれているのかもしれないが、僕は君達がそう思っていることが負担になってしまうんだ。
だから僕は君達の目の前から姿を消した。
いなくなったんだ。
いつまでも仲良い人達に頼りっぱなしではいけない。
だから僕は前の名前を捨てて新しく莉音として道を歩いていくことに決めたんだ。
もう前の所には戻らないと思う。
彼岸花の花言葉は、再会、独立、また会える日まで悲しい思い出。
新しい出会いに期待しているよ。