帰郷
あすの朝、あたしは、
この賑やかなうす汚い、
おせっかいだけど人情のかけらもない、
田舎の人間が憧れる大都会の片隅から、
この肉体を消し去るだろう。
なににも負けてなどいない女の子が、
風車へ向かって突撃したおバカな女騎士が、
生まれ育った百合の街に還っていくだろう。
海は嫋やかに、葬送の歌を奏で、
まるで1度死んだ幼馴染みが甦ったかのような、
あたたかい嘘をその街の風に乗せて運び、
惜しみもなくやさしい『お帰りなさい』を
潮の香りの中に潜り込ませて、
そっと届けてくれることだろう。