椎茸みたいな人間に私はなりたい
夏の朝。キノコ人間の一日がはじまる。
「やっ、やめてくれ!お願いだ!もうタケノコには逆らわない。約束する。だから、だから・・・あっ、、ああー」
ガバッと布団から飛びあがり、目が醒める。
「夢だ。よかった!!俺はまだキノコだ!」
あまりにも恐ろしく悲惨な夢を見てしまった。今日は朝から最悪な気分だ。
パジャマが寝汗でびちょびちょだ。
ちなみにキノコは水分が多いぞ!
これ豆知識な!いやキノコだけどさ。
僕は毎朝恒例のキノコチェックをするため洗面台の鏡の前に立った。
「おっ、今日は椎茸か。ふふ、やったな!」
最もポピュラーなキノコだ。主役になることあまりないが、日本料理を影から支える存在だ。
椎茸であったことで少し気分があがる。鼻歌をまじえながら、学校へ行く準備をする。
鼻歌は某キノコ会社大手のCMソングだ。JASRA●が怖いので、メロディーは自重するぞ!
あの団体は今日見た夢の100倍は恐ろしいからな!
支度を終えて学校へ行くと、教室には涼子ちゃんがいた。
「おはよう涼子ちゃん」
「あっ、おはよう榎田君!今日は椎茸なのね!渋いね!」
「うん、そうだね。だって椎茸だもん」
そう、椎茸は地味だ。
まず色合いが地味だ。茶色かったり黒かったりとイマイチだ。
でも、カラフルなキノコなんて大抵有毒だ。ベニテングタケとかさ。
それに大抵の食用キノコは地味だ。椎茸に限ったことではない。
次に存在が地味だ。
出汁をとってそのまま捨てられることも多い。そして、かなりの確率で色とりどりの野菜と調理される。ゆえに目立たない。
最後に価格だ。
椎茸は別に安いキノコというわけではない。
だからといって飛び抜けて高いわけでもない。スーパーに行ったとき価格を確認してごらん、結構いい値段するから。
しめじなんかより普通に高いよ!でも高級なキノコってイメージは全然ないよね。不思議だ!
「ええ。そうね。でも私、椎茸好きよ。美味しいもん!」
り、りょ、涼子ちゃん⁉︎ 何を言ってるの?
朝から愛の告白⁉︎しかも僕に?
そうだ、返事しなきゃ!!
「ぼっ、僕も涼子ちゃんのことが、、、」
好きですと返事をしようとしたとき、涼子ちゃんが先に口を開いた。
「あっ、でも榎田君は普通よ!勘違いしないでね?」
でっ、ですよねー、
僕は涼子ちゃんの言葉に膝から崩れ落ちて、頭を教室の床に擦りつけた。
僕はちゃんとわかってましたよ。椎茸のことだって!!ホントなんだからね!
「榎田君何してるの?もうすぐ朝のHRはじまるよ。早く席に着きなよ」
涼子ちゃんにうながされ、フラフラになりながら自分の席についた。
1週間後
教室の床から椎茸が生えてきた。
どうやら頭を擦りつけた時に胞子が付着したらしい。
僕は、その椎茸を涼子ちゃんにあげると涼子ちゃんは満面の笑みで「ありがとう」と僕に言った。
僕はその笑顔にドキっとしてしまった。
やっぱり涼子ちゃんはかわいいや!
その笑顔が見れるなら僕はずっと地味な椎茸でもいいと思ったのだった。
〈今日の教訓〉
キノコ人間は女子に対する免疫0
*キノコ人間だから教室の床にで生えるんですよ。