算段
「はぁ。結局、一人でずっと彷徨っちゃった。なんか、もう帰りずらいしなぁ…どうしよう」
サユハはとぼとぼ歩いていると、リャクトが泊まっている宿屋まで行き着いた。
「あっ…やっぱり謝ろうかなぁ」
サユハは宿屋に入ろうとした時に宿屋からリャクトが出てきた。
「お前、何やってたんだ」
「べ、別に。ただ通りかかっただけだもん。戻ってきたかった訳じゃないんだから!」
サユハは焦りを見せ、何故かリャクトに怒鳴った。
「わかったわかった。そういや、レロイの奴見なかったか?あいつ、お前を探しに行ったんだぜ?」
「えっ…レロイ君が?」
サユハの顔は嬉しそうな色を見せる。
「あぁ。ま、その様子じゃレロイには会ってないみたいだな」
「私、レロイ君探してくるね」
「いいって、別に。あいつのことだから心配ないだろ」
「で、でも…」
「お前じゃないんだから大丈夫だ」
「私、やっぱり探してくる!」
サユハは焦った表情で走り去っていった。
「ったく、どいつもこいつも困った奴だな」
―――――――――――――――
宿屋の一室にサユハが帰ってきたのは夕日が綺麗に空を染めた頃だった。
「ダメ…どこにもいなかった」
サユハは俯き、顔には落胆の色が見える。
「そのうち帰ってくるだろ。お前と違ってあいつは大人だからな」
「ちょっと!それって私が子供みたいじゃん!」
サユハは強く一歩踏み出た。
「違うのか?」
「私だってもう十九なんだから、十分大人だもん!」
「ガキって言われて怒ってる時点でお前はガキだろ」
「うぅ…それよりさっきどこか行こうとしてたでしょ?」
サユハは一度怯んだが、すぐに話を変えた。
「あぁ、あれは昨日行ったアンダーマーケットに行ってきたんだ。光永の星屑がここに運ばれる時のルートが書かれた地図をもらってきた」
俺はテーブルに丸めて置かれた地図に視線を向けた。
「ところで、お前は手伝ってくれるのか?」
「えっ!?それは…」
サユハの表情が戸惑いの色を見せる。
「別に無理して協力してくれなくていいぜ。お前がいても、足手まといになるだけだからな」
「そんなことない!そこまで言われちゃったら手伝わない訳にはいかないよね。こうなったら、私が足手まといじゃないことをリャクトに教えてあげるんだから!」
サユハは力強く言葉を紡ぎ出した。
「いいのか?」
「当ったり前じゃん!」
サユハは握り締めた拳で胸を叩いた。
「いや、そのことじゃなくて賞金首になることだ。賞金首で高額になると、政府の特殊戦道部隊なんかにも狙われるんだぜ?俺も何度狙われたことか」
「えっ…えぇー。でも、それはリャクトの責任だからリャクトに守ってもらうからいいもーんだ。それにリャクトには一度私の凄さを教えとかなきゃいけないのよ」
「随分厚かましいこと言うんだな」
「いいじゃん別に!リャクト強いんだから」
俺はサユハの言葉に呆れ、反論せずにため息を吐いた。
「それで、どうやって光永の星屑を奪うのさ?」
「それはな…」
俺はアンダーマーケットでもらってきたトルテラシティ内の地図をテーブルに広げた。地図には街の入口から街の中心にある会議塔までに赤い線が引かれている。
「これを見ろ。この赤い線が街から会議塔までのルートだ」
サユハはテーブルに歩み寄り、地図を覗き込んだ。
「それで?」
サユハはその体勢のまま、顔だけを振り向かせてくる。
「護衛もいるだろうから、できるだけ隠れながら近くまで寄れるところで襲撃するつもりだ」
「えっ?別に隠れなくても人込みに紛れればいいじゃん」
疑問をそのまま顔に出して、サユハが尋ねてくる。
「確かにその方が得策だが、運ばれるのは夜中らしいから無理だろうな。通行人を装う方が怪しまれる」
「そっか、それで具体的にはどこで襲うつもり?」
「それは明日下見に行ってからだな」
「じゃあ、明日は下見するんだね」
「あぁ」