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波動の龍者  作者: ケイマ
第3章
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食い意地って、すごい

「ん?終わったか。」


零断とユニは適当な雑談を切り上げてフワンの元へ行く。

零断とユニの雑談はこれからの方針決めからだんだんずれて行き、結果的には零断の地球にいた頃の話となって行った。

子供達がいた頃から2人の時にはよく地球の頃についてをはなしている。

ユニも結構零断と関わっていた人についてがわかってきた。

今までは慎慈、涼音、ダンディ、火憐などの関わりそうな人や関わった人の話をしていたが、今回は悠太と穂高のことを話していた。

ちょうど零断が2人のことを思い出していたからだ。

この会話のおかげで雰囲気が良くなるということを知るのはまだまだ先の話だ。


「フワンちゃん、どうだった?」


零断とユニはフワンの元につき、どんな神職になったかを聞く。


「『雷刻の剣舞士』になりました。」


「予想通りの個人職か。」


零断は頷く。そんな様子の零断に疑問を持つユニ。


「なぜ予想できたの?」


「まずまず、龍…おそらく属性龍の雷龍だろうな。そんな三強魔の一体に雷落とされるなんて普通じゃない。実際、鬼に取り憑かれた人や、神に認められた人、龍と出会った人は何かしらあると思ってる。」


鬼に取り憑かれるためには強靭な体が必要だ。それは個人職でないと身につかない。


神は才能を持つものを導く。その才能を持つものは基本的に個人職だ。


まずまず、特異龍は人前に姿を現さない。認めた人間、又は魔物の中に入る。現在の零断の状態だ。

属性龍は人間や魔物の中に入ることもでき、実際の体で飛び回ることもできるのだ。

しかし、龍域という場所から滅多に出ることはなく、地上を見守っている。

その中でフワンは雷竜から雷を落とされた。

それは雷竜が何かを示していると思った方がいいのだろう。

零断は波動の龍から様々なことを聞いて、それを元に予想したのだ。


「私は、ご主人様の役に立てますか?」


「ああ。当然だ。」


「ありがとうございます。」


【まるでロボットと話してる感覚だ。さっきは感情を見れたけど、落ち着いてきたからか、感情が感じられない。】


「…フワン。もう少し自分の感情を出せ。」


「自分の感情…ですか。」


「ああ。」


「すみません。わからないです。」


「…これは」


「ああ。重症だな。これは雷龍やりすぎだ。何かを試したのかもしれないけど、人間を崩壊させる寸前までやってる。」


【次に波動の龍と会ったら言っとくか。】


「…すみません。期待に添えなくて。」


フワンはその雰囲気を察し、謝ってくる。しかし、謝るときも表情は変化しない。


「フワン。今、お前はなにをやりたい?」


「…ご主人様の役に立つことです。」


「それは『奴隷』というのに縛られてるからそう思うだけだ。例えば、料理をしたい、本を読みたい、寝たい、体を動かしたい、という自分がやりたいことだ。」


フワンは少し考える素振りをしてから答える。


「私を救ってくれたご主人様を支えたいです。」


フワンは改めて考え、その答えを導いた。その答えには本当にわずかだが、感情が入ってるように見えた。


「あ、今少し…!」


「だな。まずはこの線から少しずつかな。」


その感情の変化にユニも気づいたのか、零断に顔を向ける。

零断はやっと感情が見えたと思いながら次のステップのことを考える。


「とりあえず、生活に関してをいろいろやろう。そしたら俺を支える以外のやりたいことが見つかると思うからな。」


「…すみません。やりたいことを見つけました。」


なぜか今までで一番声に弾みがある。

零断もユニもお!これはっ!と期待する。


「お腹が減りました。」


今まで表情を全く出さなかった少女が少し恥ずかしがりながら食い意地をはる。

これには零断もユニも驚いた。


「お、おう!いいぞ!俺が最高の肉を焼いてやる!」


「私はそのほかの料理を作るね!」


「私も手伝…」


「「大丈夫!」」


「はい。わかりました。」


あの一言以外は感情を表に出さないが、それでも良いと零断は考える。


【とりあえず食関係で感情を引き出して行こうかな。】


フワンの方針が決まった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…これ、すごく美味しいです!もっとありますか?!」


「お、おう。いっぱいあるぞ。」


フワンは零断の肉を食べた瞬間に顔の表情が爆発した。なんと言えばいいかわからないほど頰が上がっている。


「に、肉というのは本当に美味しいですよね!」


フワンは食べながらも零断に感想?をいう。

その勢いは大食い王と同じレベル。いや、それ以上か。


「…なんか…なんか釈然としないやぁ」


ユニがポツリと呟く。

零断も同意しようとしたところでフワンの言葉が耳に入る。


「この肉、ここにわざと焦げ目を付けてるんですね。ほんのちょっとの苦味がより味を引き出しています。それに、このタレは肉の味を引き出すためのタレですよね?タレ自体に強い味はないですが、肉の旨味をこれ以上ないほど引き出しています。」


聞いた瞬間零断の体がピーンッ!と伸びる。


「わかるか?フワン!このタレはこの世界に来てからひたすら改良に改良を重ねた特製品だ!作り方は全部俺の頭の中だから俺以外には作れない特別品だ!」


フワンは今まで全く変化させなかった顔を完全に動かす。

目が輝いている。


「本当ですか?!?!ご主人様は料理のスペシャリストなんですね!」


「それは違うぞ。肉だけだ。俺は肉料理だけを極めたんだ。それ以外は壊滅的にできない。」


「いえ、肉料理だけでも流石です!こんな美味しいものを食べられるなんて私は幸せ者です!」


ユニは思う。


「フワンちゃんの今までの表情の変化のなさはなんだったんだろう…」


零断とフワンは同じ調子で肉についての会話をしながらご飯を食べた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


フワンの神職がわかり、受付の人以外には個人職だとバレないように手続きを終え、現在はフェンゲルにある闘技場に来ている。

これから零断とユニのBランク昇格試験を行うのだ。

というか、帝国になってからポイント制になり、零断とユニは大量のクエストをやったため、あともう少しポイントを貯めればA-級の試験も受けられるのだ。

ということでとりあえずB級になり、すぐにA-級になろうというわけである。


「これよりフレン、ユニのB級への昇格試験を行う!まずはフレン!」


零断はゆっくりと歩きながら壇上に上がる。

そこには先輩冒険者が立っていた。


「俺は今回の試験担当のゴディだ。よろしく。ちなみにランクはA-だ。合格条件は俺にその木の剣を一太刀当てるだけだ。その代わり俺も本気でやるから覚悟しろよ?」


「わかった。」


いい感じの人だなぁ〜と零断は考える。うざかったらボコボコにしようと考えていたが、いい人なので本当に一太刀で終わらせる。


「魔法はありですか?」


「ああ。自由に使っていいよ。俺は魔法を使わないけどね。」


大事なことを確認し終えたので、審判が合図を送る。


「それでははじめ!」


「さぁこい!」


零断はあまり目立ちたくないので詠唱をする。

しかし、零断は気づいていない。今からやろうとすることはどう頑張っても目立ってしまうことを。

闘技場には多くの冒険者がいる。その理由は最近噂されている『白雷の狼牙』の実力を見るためだ。


「“大地よ!我に眠るイカズチを纏い放電せよ!”『エレキテルフィールド』!」


この魔法で壇上は電気に覆われる。


「なっ、体が動かしにくい…!」


そう。この魔法は敵に電気を帯びさせることで相手の動きを鈍らせたり、過度な動きをすると痛みを生じさせるのだ。

しかも、いたるところに電気があるので零断は逆に動きやすく、今まで以上のパフォーマンスを発揮できる。

欠点があるとすれば仲間にもそれが影響するのと、範囲がまだ狭いことだ。

しかし、一対一の場合は最高の効果をもたらす。


「この魔法は君が作ったのかい?」


ゴディは零断に聞く。


「ああ。ちなみにこの中なら雷魔法は詠唱なしで発動できる。」


もちろん嘘である。零断がめんどくさい詠唱をしなくていいように作ったデマだ。


「だが、剣の勝負ならどうかな?魔法だけだと生きていけないぞ!」


そういってゴディは距離を詰めてくる。


「“バースト”」


零断は魔法剣を発動させる。


「な!魔法剣だとぉぉぉっ!!」


ゴディが驚いた瞬間には零断の剣がゴディの体を吹っ飛ばしていた。

身体強化を使わなくてもエレキテルフィールド内なら勝手に身体能力は上がっている。


「ふ、フレンは合格!よってこれからはBランクである!」


審判の宣言によって零断の合格が決まる。しかし、見ている誰もが思った。



A-ランクの冒険者をボコボコにしたのだからAランクでよくないか?

と。



「つ、次の試験にうつる。ユニよ前へ!」


ユニが前に出る。すると、向かい側から女性が出てくる。


「こんにちは。今回あなたの試験を担当するスルメアよ。よろしくね。」


「はい!よろしくお願いします!ルールなどは全部わかってるので、始めましょう!」


「わかったわ。審判。宣言よろしく。」


「わかりました!では、はじめ!」


ユニは槍を片手に持って歩み寄る。対してスルメアは自分の獲物である細剣を構えながら徐々に距離を詰める。

そして、槍の間合いに入った瞬間から攻防は始まる。

スルメアが一気に距離を詰めようとしたら今まで構えてすらいなかったユニから槍が突き出される。

スルメアはかろうじて回避したが、体勢を立て直す前に次の槍。

またまたかろうじて回避するとさらに早く槍が突き出させる。

結果的に避けることができなくなり、鳩尾に一発食らってスルメアが倒れる。

ユニは疲れた表情もなく、元気にいう。


「なるべく手加減したのですぐに立上れると思いますよ!」


その言葉は闘技場に響く。

そして誰もが思った。



A-ランクの相手を手加減して勝てるならAランクで良くないか?

と。


「ユニは合格!よってこれからBランクである!」


審判の判断をもらい、零断とユニはフワンと風雅を連れて闘技場を出る。

しかし、闘技場はざわめいたままだった。


「みたか?あのフレンの魔法。俺魔法使いだが、あんな魔法見たことないぞ。おそらく新しい魔法だ!」


「確か、『エレキテルフィールド』って言ってたよな。あれ最強だろ。魔法剣すらほぼ詠唱なしで使えるんだぜ。」


「あの剣筋みたか?油断とか全くなく一閃してたぞ。あれは相当剣を使う。おそらく俺らみたいなA-ランク以下とは比べ物にならない。」


ただひたすら零断のことを分析しながら褒め続ける。もう零断はいないのだが、冒険者たちにとっては最高の話題だろう。


「次に会った時にどういう魔法か教えてもらおうぜ。」


「それいいな!剣についても教えてもらいたい!」


「魔法剣士っていいよな!しかも、どちらも中途半端じゃなくて高レベルだし!」


こちらは零断に会って技を習いたいようだ。


また別の場所ではユニの話題が出ていた。


「あの自然なまでの動きからの突き出し!カッコいいわよね!」


「まだ幼い女の子って槍を使う子多いけど、ユニちゃんは全部の武器の中で槍が一番合ってるみたいね!じゃないとあそこまでできないわよ!」


「私も昔は槍使ってたけど、どうしたらあそこまで使いこなせるのかわからないのよねぇ〜結果的に才能かしら。」


「これはユニちゃんを支えないと!あの男の子、フレンくんに恋してるようだし、応援しましょう!」


「ええ!」


「当然よ!」


零断は技を習いたい人が多く出て、ユニは女性冒険者に可愛がられるようだ。

そのことは零断もユニも次に冒険者ギルドに来るまで知らないことだ。



零断一行が闘技場を出ようとすると、ある人に止められる。


「君たち、フレン君とユニ君だね?少しこちらに来てくれないだろうか?」


スーツのような服を着ている男性に引き止められる零断達。

体系はひょろひょろした感じだが、筋肉が引き締まってることがわかる。焦げ茶色の髪を軽く整えてある程度のちょっとしたボサボサ感を出している一般人に見える。


「…あんたは?」


しかし零断はある程度警戒する。何者ならぬ雰囲気を感じ取ったからだ。


「そういえば自己紹介がまだだったね。僕はこのフェンゲルのギルドマスターのフロヌィチだ。よろしく。」


「フレンだ。」


「ユニです。」


零断とユニは一応格上の相手だとわかり、軽く会釈する。


「君たちの先ほどの戦いを見せてもらったよ。惚れ惚れする戦いだったね。フレン君は圧倒的な魔法を使いこなしながらも、一太刀だけの剣でその実力をわからせた。ユニ君は純粋な槍術だけで相手を圧倒した。」


「それが何か問題でもあるのか?」


先程からのフロヌィチの説明から嫌な予感がよっては来ないので逆に警戒する零断。

そう。めんどくさくなりそうな予感が全くしないのだ。こんなに回りくどく説明されてるのに。だからこそ不思議に思う。

その答えはすぐにしてくれた。


「君たちは今のランクに合っていない。なので僕の特別試験を受けてAランクまで上がってもらおうと思ってね。」


その提案は零断的には良い提案だった。


「ポイントを集めなくてもA急に上がれると?」


「ああ。良い人材を低ランクに収めておくのはもったいないからね。高ランクになってもっと活躍してもらいたいからね。」


「よし。その話乗った。その試験とは?」


相変わらず嫌な予感が全くしないので零断は軽い気持ちで聞き返す。

普通、ここでいきなり辛い仕事を任せられるのがセオリーだが、そんなこともなく、簡単な仕事だった。


「我ギルドにある3つのギルドのギルドマスターと戦ってほしい。」


「ほう?」


その言葉は簡単だが、興味をそそる言葉だった。



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