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波動の龍者  作者: ケイマ
第3章
66/81

番外編 聖夜の指輪

ま、間に合った!!!

まだクリスマス!

「ついに!クリスマスイベント…きたぁー!!!」


俺は12月25日0時0分0秒に戦闘中に大声で叫んだ。


「え、もうそんな時間?ならこのダンジョンリタイアしよう!」


「だな。ほいっと、リタイア。」


今この場にいるメンバーは

俺のと長谷 零断。

俺の彼女である露草 涼音。

親友の桐乃 慎慈。

学年で俺らのレベルについてこれる数少ないプレイヤーの塚屋 穂高と野水 悠太。

そして妹の長谷 火憐の6人だ。

GFOのパーティ人数は基本7人と半端な数だ。なのでもう1人入ることができるのだが、このメンバーに割り込めるほどレベルが高いプレイヤーはリアルではあったことがない。

まずまず穂高と悠太ですら俺、涼音、慎慈、火憐と50レベ近い差がついている。普通の人から見れば超ゲーマーだと見られる2人ですらここまで差があるのに零断達4人のレベルは全く見つけることができない。

まずまず俺と火憐は兄妹だから置いておいて、俺、涼音、慎慈が同じ学校になったのは奇跡といってもいいからな。


っと話が逸れたな。


「ついに待ちに待ったクリスマスイベントだぁ!!!!!」


「ゼロはこのイベントが発表された直後からずっとそわそわしてたもんな。」


「まぁ、内容を見ればドキドキする気持ちも分からなくはないでござる。」


この謎のござる口調なのが穂高だ。

ちなみに悠太は全てデスマスをつけると言ういつもの悠太では考えられないロールプレイングをしている。

ゲームでの悠太は全てを解析する科学者のようだ。


「そうですね。今年のイベント内容は『

サンタ黒ースを撃滅せよ″真冬の夜の神夢″』ですもんね。


そう!今年は黒夜にサンタを討伐するのだ!つまり、暗殺者の大舞台なのだ!!


「よし!みんな行くぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「と、言うわけで現実世界に戻って来ましたと。」


「流石にクリスマス初夜からゲーム三昧は人間としてダメな気がする。」


「まぁイベントが今日の夜6時から翌日0時までと言うのも理由があるけどな。」


そう。このイベントは12月25日の6時間しかやらない超短いクエストなのだ。

だからそれまでは涼音と2人でいるつもりだ。

ちなみに今は涼音の家にいる。2人でお泊まり会だ。ヘッドギアをかぶっていたので2人ともベッドで横になっている。


「去年までは人間としてダメだったんだけどな。」


「それは私もよ。けど、零断と出会えたから変われた。」


「なんか新年じゃないのに今年一年を振り返りたくなるな。」


「ふふふ。そうね。」


そう言いながら涼音は俺の上半身の服を脱がせてくる。

けど、Hなことのためではないことは雰囲気からわかる。

脱がした後、涼音は俺の肩と脇腹。つまり通り魔事件の時の傷に手を添え、肩に顔を乗せる。

そんな涼音の頭を撫でながらもう片方の手で抱きしめる。


何もしない時間。

けど、この時間は俺の中で一番幸せな時間だ。

何も考えずに涼音に甘えることができる。


俺たちはこのまま静かに眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なんとなく頰を突かれた気がして目がさめる。

目の前には優しい目をした涼音がいた。


「ごめんね。起こしちゃった?」


「いや、大丈夫だよ。俺の顔で何してたの?」


「零断の顔が可愛くてね。いつもあんなに守ってくれてるのに寝てる間はすごく子供っぽくて愛おしく感じるなぁって。」


べた褒めされた。少し顔が赤くなるのを感じる。


「俺が涼音を守れてるかどうかはよくわからないけどね。」


「零断がそばにいるだけで私の心はいつも助けられるの。」


「なんだそれ。俺がいなくなったら助けがなくなるぞ?」


「そしたら生きてられるかなぁ」


「じゃあ、もし俺が異世界転移したらどうする?」


「そんなの決まってるよ。どんな方法でもいいからその世界に行ける方法を見つけ出す。」


「すごく涼音に悪いことを聞くけどいい?」


「うん。」


「もし、俺が異世界転移して、涼音と会えなくなって、他に女ができたらどうする?」


「零断をハーレムにする。」


「…は?」


「その女の子と、私。どちらも嫁にして貰えば問題ないでしょ?まずまず、異世界は一夫多妻なんだから零断のいいとこを見つける女は多いと思う。そして、零断は甘い。砂糖よりも甘い。だから、這いよられたら押し負けちゃう。」


「不本意な。」


「事実でしょ?」


「…おっしゃる通りでございます。でも、浮気とかはしないぞ?」


「それは思ってないから大丈夫よ。前に他の女の子とデートに行く時も私に断りを入れてからしてくれたしね。」


「うぅ…あれから毎回涼音にいじられてる気がするなぁ」


「それを言うだけで恋愛方面ではなんでも言えるからね〜」


「そんな弱み的なのがなくても涼音のいうことなら聞くけどさ。」


「うん。わかってる。ま、そういう甘いところも好きになったんだし、私ヤンデレじゃないし。」


「…ヤンデレ気質あるなんて思ってないぞ。」


「あら。私にヤンデレになってほしい?」


「それはそれで愛がいっぱいもらえる気がするけど、強制されるのは嫌かなぁ」


「ん。あ、そろそろ朝ごはん作ってく…、!?!?」


俺は立ち上がろうとした涼音の手を引いて涼音の体を俺の腕の中に収める。


「涼音。大好きだ。愛してる。」


「え、ふぁ、え、うん。わ、私も…」


突然のことに混乱してるのか、顔がトマトみたいに赤くなって目がぐるぐる回ってる。

追撃とばかりにキスをする。


「んむっ!」


重ねるだけの軽いキス。

そろそろやめないと涼音がパンクしそうだな。

俺が立ち上がろうとすると、弱く俺を引っ張る涼音。

顔を俺の耳元まで持って行って


「わ、私も零断のこと、大好きで、愛してるからね。」


「ありがと。それじゃ、飯作りに行こうぜ。」


「そうね。といってもトーストだけどいいでしょ?」


「ああ。いつも通りで。」


「了解。」


この雰囲気。やっぱり好きだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「シン!そっちに雑魚行った!」


「了解!『プロヴァケイション』!」


慎慈は数体の雑魚を相手にしながら先頭から逃走しそうになった敵を挑発技によって逃げられなくする。

この技はタンクなら誰でもが覚える技。プロヴァケイションを日本語に直すと『挑発』だ。高レベルになるとその能力自体のレベルを上げないといけないが、こればっかりは経験なので簡単に伸ばすことはできない。

ちなみに慎慈は最前線のボスですらヘイトを集められるGFO内最強のタンクだ。


「カレン!まとめて一掃頼む!前方から5体追加!後方からも7体くる!前方は俺と涼音で、後方はミジューとポンで対処!シンは終わったら前方、カレンは後方に援護!」


「「「「「了解!」」」」」


今、俺らは先ほどのメンバーでサンタ黒ースのアジトに潜入している。そして、モンスター部屋と呼ばれるほぼ無限に敵が湧いてくる部屋に迷い込んだのである。

元はと言えば、カレンが調子に乗って宝箱を開けに行ったら全員引っかかったというわけだ。あとでコショコショの刑だな。

ちなみに、全員のプレイヤーネームは

零断=ゼロ

涼音=リン

慎慈=キシン(呼ばれ方はシン)

火憐=カレン

穂高=ポン

悠太=ミジュー

だ。全員適当に名前からとったゲーム名だ。


「ゼロ!まだ見つからない?」


「…あった!すまん!時間かかった。シンは全員にffフレンドリーファイア対策を!カレンはぶっとばせ!」


「『アリィシールド』!」


「『暴風龍の怒り』(ドラゴニックストームアンガー)!!」


カレンが放つ最大級の魔法によって雑魚は殲滅。そして、俺が見つけた逃げ道に全員が逃げる。


無事、モンスター部屋から脱出でした俺たち。はぁ、元凶は叱らないとな。


「カレン。もっと集中しろ。」


「ごめんなさい…流石にあれは本当に申し訳ないと思ってるよ。」


「これから気をつけろよ。」


「うん。」


「ならよし。時間もあまりないからな。イベント最速クリア報酬をもらうぞ!」


「「「「「ああ!(うん!)」」」」」




それから、ストーリーを進めることで、サンタ黒ースの元ネタがわかってきた。

要は黒サンタだ。黒サンタは自分が一番大事なものを取っていくという。

この話は親が子供にいい子にさせるために考えた妄言であるのだが、運営はあえてこれを取り入れたのだろう。


クエストの中で、サンタクロースを邪魔しようとするサンタ黒ースを阻止したり、大切なものを奪おうとするサンタ黒ースを撃破し、ついにサンタ黒ースをボスのダンジョンへ追い詰めることができた。

このダンジョンがラストクエストである

ラスクエの難易度はレイド級。つまり、7人1パーティが6個。つまり、42人パーティでクリアするレベルの難関だ。


「よく6時間しかやらないクエストのためにレイドボスを作るよな。」


「そこはGFOの運営だからね。」


「私たちは1パーティだけで挑むのですよね?」


「当然だな!」


「まだここまで来れたパーティ自体が私たち以外いないからね。そして、来たとしても42人集まらないと挑まない。なら、時間はまだあるけど。」


リンがそこまでいうと、俺に視線を向けてくる。他の奴ら全員俺に視線を向けてくる。

お前なら…って聞かれてる。

そりゃ当然


「いくぞっ!敵のボスはサンタ黒ース。雑魚が無限ポップだから、雑魚相手をポンとミジューに任せる。」


「わかったでござる!安心してボスに挑むでござるよ!」


「そうですね。彼と一緒ならば雑魚など余裕で足止めできます。」


「頼んだ!次!タンクはシン!アタッカーはリン!魔法援助がカレンだ!俺は指揮をしながら決定打を与えていく。いいな?」


「「「了解」」」


「よし!いくぞ!」


俺は僕の扉を開ける。

そこには…


黒と赤のサンタ衣装を着た高さ10メートルくらいあるボスと、その前にいる黒い一本角のトナカイ。周りにはプレゼント型の雑魚が大量にいた。


「はは。こりゃレイド用だ。」


「けど、これをクリアするからこそのやりがいだ!」


「まずは敵の行動を読む!回避優先だ!」


「「「了解!」」」


「2人は殲滅を頼む。」


「「当然!」」


サンタ黒ースは黒角トナカイが引いているソリに乗って空を動き始める。

このボスのフィールドは横も縦もやたら広い。つまり、黒角トナカイが自由に動き回れるようになっているのだ。


「トナカイが動く!正面から立ち向かうとダメージ食らうから気をつけろ!直接攻撃は今の所サンタからだけだから、サンタの攻撃に集中!リンはフィールド頼む!」


「わかったわ!『フロージングフィールド』!」


リンの放った魔法は一定の範囲を極寒にする魔法だ。これによって地面は凍って動きづらくなり、寒さによってスピードダウンのデバフを食らう。

もちろん俺らは対策をしているのでデバフを食らうのは相手だけだ。

まずまず氷のフィールドは何度も使っているため、使いこなしている。


「シンはヘイト管理。あと50秒で大技行くからスタン頼んだ。」


「任せろ!」


「カレンは同じタイミングで頼んだ。それ以外の時はミジューとポンをサポート。」


「おけー」


トナカイの突進はシンがうまく逸らし、少しずつダメージを与えてヘイトを集めている。

リンは氷を使った高速移動をしながらトナカイにダメージを与えていく。

カレンはトナカイの動きを風によって方向変換させたり、常に30台ほどに囲まれているミジューとポンのサポート。

そして、俺はトナカイの前進に少しずつダメージを与えて弱点探りだ。


「いくぞ!『エンジェルフォール』!」


ここに来てシンがトナカイのど真ん中に立って突進を受ける。

エンジェルフォールは天使を体に宿して短時間の身体強化の特技だ。


「ぐおおおおおお!!!!」


シンは雄叫びをあげながらトナカイを吹き飛ばす。


「『スノーストーム』!」


剣に吹雪を纏わせて渾身の一撃をトナカイに叩き込む。


「『デスフリーク』!」


俺はモンスター限定の珍しい技でダメージを与える。

この技は確定でランダムデバフが付く。振りが大きいのでスタンのときくらいしか使えない。

これでトナカイのHPゲージは4本中3本になった。

こりゃ長い戦いになりそうだな。トナカイに加えてサンタも倒さないといけないし。


『我の目論見を邪魔する者には成敗を!』


トナカイが大ダメージを受けた後、サンタは叫びながらサンタの袋からロッドを出して魔法を放つ。


「全体攻撃の予想!全員ダメージに備えろ!」


俺が叫んだ直後にロッドから黒い球が全員に繰り出される。


このくらいの速度なら避けられる…いや、これは追従型ホーミング弾か!


「追従型だ!」


そう思った瞬間にシンの声が響き渡る。

俺はトナカイよりも速いスピードで走り、ホーミング弾をトナカイに着弾させる。


「ブルグォ!!!!」


トナカイが根太い声を上げる。

そのホーミング弾をトナカイに当てるだけでトナカイのHPは1ゲージの半分飛ばせている。


トナカイに当てるのが攻略を早くする方法か。他の奴らはミジューとポンは雑魚に当てて、リンは魔法切りで止めて、シンはまともに受けたみたいだな。

シンのHPは黄色ゲージになってる。さっきまでほぼ満タンだったのに半分も削られるのか!毒もついてる!害悪だな!


「シン!ヘイトを俺に献上!お前は回復優先だ!あの弾はトナカイ含めた敵に当てると大ダメージを与える!対策なしで食らったら即死コースだ!」


「了解!」


俺はシンに近づきハイタッチする。

この動作でシンの能力であるヘイト献上ができる。また、一番ヘイトを持っている仲間からヘイトを受け取れるヘイト吸収もあるのでシンのヘイト管理はお手の物だ。


さてと。ここからは俺がヘイト管理か。もっと集中しろ。やるぞ!


トナカイが突っ込んでくるのを横飛びでかわしながら足にダメージを入れていく。


「『ハイドステップ』」


残像を発生させながら高速移動する。サンタの攻撃がその残像に当たる。

俺がタンクの役割をする場合は受けではなく避けだ。

理論的に当たらなければ負けることはない。俺はそれを実現させている。


「ゼロっ!」


シンがこちらに声を上げる。

サンタがこれまでにないほど凶悪な技を放とうとしているのがわかった。

今までいろんなプレゼント(爆弾)を投げて来た袋をビリビリに破り捨てたのだ。中には黒く包まれたプレゼント(爆弾)が大量にあった。


「来たぞっ!これのリキャストタイムは10分!ボスの騎乗状態の大技だ!トナカイの体勢を崩すぞ!保険でシン、ミジュー、ポンは防御体勢!カレンはテンペストウォールつかえ!リン!いくぞっ!」


「当然よ!『絶対氷雪“エンペラーフローズン”』っ!!


トナカイの横に氷の壁が出来ることでレールが出来る。この氷を壊すことはできない。

そして、レールの先にはリンと俺がいる。

リンは刀の鞘に氷を纏わせて爆走してくるトナカイに対して抜刀術を使う。


「『刹那“氷華”』」


刀のギャラクシースキルの最上位の抜刀術だ。

通常ギャラクシースキルの単発技で一番の火力だ。

それにエンペラーフローズンの効果で氷属性が付いている。相当な火力だろう。


俺は技のために大きく上に飛ぶ。

リンとトナカイがすれ違う。その瞬間、トナカイが一瞬真っ二つになったように見えた。

リンは身動きすらしていない。残りトナカイのHPが2ゲージあったのを0.5本吹き飛ばす。


後は頼むわよ


当然


目線だけでリンと会話を下して俺は俺の最大火力の技を使う。

全スキルの中で単発技として最大火力を誇る深夜の暗殺者のスキル


「うおおおおお!!!!


『夜の破滅“ナイトディクレイション”』


これで終われ!!!!」


トナカイの頭の真上から下へ断ち切る。そして、トナカイは爆破して光の粉となる。

大技の準備をしていたサンタがソリから吹き飛ばされる。


俺は5秒という異常なほどの長さの硬直時間でひたすら指示を続ける。


「トナカイ撃破、サンタはスタン!攻め時だ!下手をしないように大技打ち込め!」


「『聖愛の印“ホーリーローブ”』!」


「『暴風の嵐“テンペスターストーム”』!」


シンとカレンが大技を叩き込む。

サンタのHPはあまり多く設定されていないようでこの技2つだけで4ゲージ中1ゲージを吹っ飛ばした。


普通はここまで順調に行くことはない。この6人でクリアできたらレイドの意味がないからだ。

なぜここまで順調にいけてるかというと、俺たちは隠しクエストなどのクリスマスイベントのすべてのクエストを完璧にクリアして、ボスの弱点を完璧に把握しているのだ。それプラスミジューとポンは最前線クラスのレベルなのに、他4人がありえないほどレベルが高いのだ。

よって相手を観察し、どんなモーションかを調べれば避け方などは把握しているので大丈夫なのだ。


「次、体制立て直したら斧が来るぞ!被ダメ多すぎるからシン以外は確実に回避!」


「「「了解」」」


「ポンとミジューは後2回でポップが終わるから終わったら加勢して。敵の技で復活するかもしれないからそういう時は2人で対応頼んだ。」


「わかりました。」


「承知でござる。」


そこまで指示が終わると俺のスタンも切れ、敵も動き出す。


『おのれ、おのれおのれおのれ!!!!我が従魔の恨み晴らしてやるわ!!』


「声!スタン!」


サンタの叫びは衝撃波として飛んでくる。

これは食らうとダメージ話はないが、スタンするので確定回避。


サンタは叫び終わると空中から斧を生成して攻撃準備に入る。


「敵の大技が来たら攻めるから最初は攻撃パターンと回避の仕方を見つけろ!」


皆、『言われなくとも』という雰囲気で斧で衝撃波や地面を割ってくるサンタの攻撃を見切り、かわす。

敵への攻撃は基本俺が担当している。

理由は瞬間的にヘイトを下げることや、万が一になっても対応できるからだ。

こうして徐々にダメージを蓄積して行く。

こういう戦いは多いから集中力が足りないということは絶対にない。

ゲージが残り2本になったあたりから余裕も出てきた。

といってもラスト1ゲージになると極端に行動パターンが変わる情報が出てるのでそこからは油断できない。


「このままラス1ゲージまで削るぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


少し前からミジューとポンもボス戦に入って来ているのでダメージ量が少しずつ増えて行く。

相手の動きにも慣れて来たのでサンタへのダメージ量が増して行く。


『貴様ら…!許さんぞ…絶対に許さんぞ!』


サンタのゲージを残り1本にしたらサンタはそう叫ぶと空中からさらに斧を取り出し、またスタン衝撃波の叫びを放つ。


『黒き亡霊たちよ!ここに復活せよ!』


な!この叫びにはスタン衝撃波プラス今まで倒した雑魚が全復活だと?!?!しかも倒した場所だからほとんどフィールド全体か!

この情報はなかったな。あまり倒し過ぎちゃいけなかったのか。

ミジューとポンが大量に倒していたのでその分の量のプレゼントボックス型の敵が出てくる。


「ゼロ!私は2人をフォローしに行く!サンタを抑えて!」


「わかった!」


カレンが雑魚の方へ走っていく。


「さーて、シン。あれを抑えることは?」


「可能だぜ。けどまぁ、反撃はできなくなるだろうけどな。」


「抑えてくれるだけで十分だ。リン、MPは大丈夫?」


「結構余っているわよ。クリスマスクエストの一番の難しいところはいきなり行動パターンが極端に変わるところね。」


そんな話をしながらもシンは俺とリンにサンタの攻撃が来ないように抑えている。


「ラスト1ゲージ。スタンさせないと一気に飛ばせないな。二刀流を使うか。」


俺は腰の後ろに挿してある短剣を抜く。

俺はいつも片手剣だけだが、いざという時のために二刀流のギャラクシースキルも極めてある。


「んじゃ、最初の3人になったところで今年のクリスマスの記念を作るとしましょうか。」


「衝撃波を放つからリーチは長いし、攻撃速度は過去最高レベル。倒し甲斐があるわね。」


「それに加えて倒せばプレゼントと言う名の超激レアアイテムゲットだもんな。」


シンは俺ら2人の会話に合わせるために少し無理して相手を弾く。


「それじゃあ、やりますか!クリスマスイベントダンジョンに旗を立てに行こう!」


「ええ!」


「おう!」


リンとシンは返事と同時に自分の行動に移る。

シンは変わらずサンタとタイマン。

リンはサンタの移動阻害などのデバフ準備。

そして俺は相手のほんの少しのスタンを見逃さずに着実にダメージを与えて行く。


確か残りHPがレッドゾーンに入ると大技が来る、そこまでは着実に…


そこにふと違和感を感じる。

レッドゾーンは残りHPが1割の時のことを示す。ほかのボスの大技はイエローゾーン、つまりHPが半分の時に発動する。

サンタ黒ースは人の一番大事なものを取る。つまり…


「全員防御姿勢を取れ!大技くるぞ!」


しかし、その声は遅かった。

全員がレッドゾーンに入ってからしか大技が来ないと思ってたので、イエローゾーンに入ることで相手の大技が来るなんて予想もしていない。


サンタの体が赤黒く染まり、体全身に赤黒い氷を纏わせ、それを一気に放射した。

ヘイトも何も関係なしのランダムアタック。


俺は直前で気がついたので大きく吹っ飛ばされるが、致命傷にはなっていない。


「うっぐぅっ!みんなは…!」


飛ばされた先でなぜ気付かなかったかを悔やむ。

レッドゾーンになってから出る大技はおそらくドレイン系の技だろう。

残り1割ならば集中攻撃を行うことで攻撃ができずに削りきられる可能性が高い。さらに、サンタ黒ースはHPが低めに設定されている。そのせいでさらにサンタ黒ースを押し切ることは容易い。

となると、相手の起死回生の技としてドレインが実装されていると考える。

大技なしでボスがやられるように設定するような運営ではない。そう考えると確かに当然だったんだ。

基本的にラストゲージになると相手は防御力を上げてくるので俺がトナカイにやった『夜の破滅』ですら今のサンタにやったら1ゲージの半分を削れるかどうかだろう。

まずまず、全スキルの中で一番ダメージ量が多い技を今このゲームで一番レベルの高い存在が放てばそりゃもうおかしいほどのダメージになる。リンのも同じで、1発1発の火力が一番高い刀の一番火力の高い技を現状のゲームの中でベスト3に入るレベルを持つ存在が放てばダメージ量は普通とは思えないほどになる。


ああ、くそ!後悔だけじゃダメだ!次を考えろ!行動に移せ!


「いま生きてんのは俺、リン、シン、かろうじてカレンか。」


俺ら3人はボスに近いながらも敵の行動を見ていたのである程度対応できた。

しかし、カレン、ミジュー、ポンはボスのことを見ることすらできないだろう。

なぜなら100体近い雑魚に群がられていたんだから。

おそらくカレンが生き残ったのは風魔法という瞬間的に生き残るのに適してる魔法があったからだろう。

しかし結果オーライか、さっきのボスの攻撃で雑魚は全員倒されたみたいだ。


「全員状態異常とかは大丈夫か?」


「大丈夫だ。もうヘイト受けてやりあってるぜ!」


「デバフの準備は完了してるからいつでもできるよ。けど、少しHP回復する時間をくれないかしら?」


「それは俺もだ。カレンはHP回復と麻痺回復に氷状態回復に専念な。」


「まぁそれはしょうがないからね。3人ともがんばれ!」


死んだ仲間を復活させれるのはカレンだけだが、今はHP毒、MP毒、凍傷、スタンという大量の状態異常にかかっているせいでその魔法を使うことができない。だから2人の蘇生は後回しだ。


俺はHP回復薬を飲んで少しずつ回復しながらずっと使っているパーティチャットで予想と作戦を練る。


「シンは聞いてるだけでいい。まず、クエストで知った敵の大技はドレインと予想する。理由はサンタ黒ースは人の一番大事なものを盗む。つまり、俺らのHPを奪うという発想になった。」


「それには賛成ね。私もそう考えた。」


「だよな。んで、重要なのがその対策だけど、正攻法がいいよな。」


「撃たれる前に押し切るってこと?」


「もし本当にドレインなら、やりきらないとまた長時間の戦いになりかねないからな。倒し切る方がいいと思う。」


「賛成だ!タイミングを教えてくれ!『神の怒り“ゴッドオブアンガ”』を使う。」


「…シンの覚悟受け取った!やり切るぞ!」


『神の怒り』とは、剣と盾に神を宿らし、怒りをモンスターに食らわす技だ。しかし、いまだにこの技に耐えられる剣と盾を見つけることができてないので、使うたびに壊れる。

壊れるというのは、修復可能の可能性もあるし、修復不可の可能性もある。

今シンが使っている武器は高校の夏にオーダーメイドで作ってもらった超一品で思い入れのある代物だ。

それが壊れる可能性がある超大技を放つというならばやり切るしかない。


「わかったわ。なら私ももっと強いデバフにして成功率を上げるわ。氷耐性のバフをつけるわね。」


「頼んだ。」


「あ、あと、これ勝ったらリアルでご褒美ちょうだいね。」


「フラグたててんじゃねーかよ。まぁいいか。わかった。ご褒美を出してやる。」


「ふふ。期待してるわ。」


リンは相変わらずだ。


ボスの行動パターンは変わらないが、大技でバフがついたのか、攻撃力が上がっているようだ。

いや、攻撃速度なども上がっているのだろう。しかし、リンのデバフによって帳消しにされているのだ。

よってさっきと同じペースでHPを削る。


「これでっ!」


大きく飛んで首に二刀流で6連続切りをする。

その攻撃で予想通りHPがレッドゾーンにはいる。


「シン!」


「おうよ!『神の怒り“ゴッドオブアンガ”』!」


レッドゾーンに入ることで背中から黒い靄が出てきたところでシンが大技を使う。


「これでも喰らえ!“ゴッドストロング”!!」


神の怒り中に使える神の技。

サンタはシンに攻撃しようとするが、大きく押し負けて吹き飛ばされる。


「“氷絶”!」


続けてリンが目にも見えぬ速さで剣で切り裂く。

サンタのHPゲージはもう大技1つで吹き飛ぶほどだ。

しかし、サンタの攻撃はもう発動しそうなのに俺は遠くにいた。


「決める。『龍の反乱“ドラゴニックリベリオン”』!!」


深夜の暗殺者でようやく使えるようになった二刀流スキル。

二刀流の深夜の暗殺者はドラゴンに関わることが多い。


瞬間的に対象の目の前に移動して怒涛の36連撃。ボスの顔面に連続ヒットする。


一撃一撃はあまり火力が出ないが、36度も攻撃をすれば『夜の破滅』並みのダメージ量となる。

サンタ黒ースはゲージを全損し、ひかりのこなとなって飛び散る。


「勝った…のか?」


「そう、みたいね。」


「しかも、旗が立った!」


旗とはその高難易度のダンジョンやクエストを初めてクリアした時に出る攻略の証のようなものだ。この旗は初クリアの証拠でもあるし、永遠に変わることはない。

最前線でこの旗を持つことは全プレイヤーの夢とも言われるものだ。


「お疲れ様でござる。いやぁ、面目無い。」


「死んでしまって申し訳ございません。油断をしていました。」


「いや、気にすんなって。全員油断してたんだ。」


「ありがとうございます。」


やられてしまった2人は棒を倒す頃には復活していて、HPの回復に謹んでいた。


「さてと、報酬はっと…な、こ、これは…レダ…じゃなくてゼロ!早く来てみてみろ!」


シンが俺の呼び方を間違えるなんて珍しい。

ボスを倒すことで手に入る討伐報酬を見ていた俺はシンのところへ行ってクエストクリア報酬を見てみる。


その報酬は片手剣と盾のセットと、ローブ、などが。しかし、一番目に付いたのはこれだった。



『聖夜の指輪』



[このアイテムはゲーム内で結婚しているプレイヤー2人のみつけることができる。片方がつけている場合もう片方をつけていなければならない。]



「まさにこりゃ結婚指輪でござるな。2人にぴったりでござる。」


「聖夜の指輪っていうネーミングがいいよな。ステータスの上昇量も正直化け物だ。これはリンとゼロがつけるべきだな。」


「そう、みたいだな。遠慮なくもらわせてもらうよ。リン、ちょっと来て。」


「え、あ、うん!」


リンは俺の思想に気づいたのか、俺の眼の前に立って左手薬指を出す。


「リアルでのご褒美って言ってたけど、ここでもご褒美をあげることになったな。」


「ゼロ…ううん。零断のご褒美だったらいくらでも嬉しいよ。」


そう会話して、俺はリン…いや、涼音の薬指に指輪をはめる。すると、指輪に赤い線が通る。


「ふふ。本当に結婚してるみたいね。」


「確かにな。」


俺は涼音と手を繋いで他にも報酬を確認する。


「流石にクリスマスは豪華だよな。この聖伝の盾と聖伝の大剣はシンに渡そう。」


赤と白のラインが入ったシンにぴったりの武器だ。

その中で俺は気になるものを見つける。


「この短剣…」


『黒夜の短黒剣』


[聖夜にサンタクロースがサンタ黒ースに盗まれた武器の1つ。他の武器がそのままなのに対して、この武器はサンタ黒ースの暗黒を吸収してさらに輝く剣となった。]


いつも短剣は二刀流の時しか使わないが、この短剣には惹かれた。黒と白が混ざったような不思議な色をした剣。


「…これはゼロにあげていいと思うけどいいかなー?」


「そうですね。能力的にもゼロが使うのが一番でしょう。」


「…ありがとう。他のものは自由に決めてくれ。仲間割れは許さないからな?」


「とうぜんさ。流石にそれはないさ。このメンバーならな。」


「確かにそうだな!」


俺たちは今年のクリスマスイベントの最速クリアでさらにGFOに名を轟かせた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅー!クリスマスイベント楽しかったな!」


「そうね〜流石GFOだわ。期待を裏切ることはないわね。」


現在俺は相変わらず涼音の家で涼音と一緒にダラダラしている。時刻は23時。あと1時間でクリスマスの日は終わる。


「零断。ご褒美の件なんだけど。」


「ああ。そんなことも言ってたね。何して欲しいの?」


「えっと…零断お風呂も入ったし寝るでしょ?それでね。一緒に寝るときに私の耳元で私のことをどう思ってるかを教えて欲しいの。」


「わかった。俺の気持ち、期待しててね?」


涼音は顔を赤くして頷く。

本当に可愛いよな!こんな可愛い彼女を持てて俺は本当に幸せ者だ!

ベッドにはもう涼音が入り込んでいる。そこに俺も入って2人で抱き合う。

最初は涼音の髪を撫でて落ち着かせてから、俺の気持ちを伝えよう。


波動の龍者番外編 聖夜の指輪





では良い聖夜を!

メリークリスマス!

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