フワンの過去
クリスマスイブで疲れてたら更新忘れてたぁぁぁ!!!!!
クリスマス更新もあるので楽しみにしていてください!
フワンが泣き始めてから約10分くらいで泣き止んだ。体に電気がたまっていたせいで、泣くどころか表情を変えることすらできなかった状況から解放されたのだ。泣くのも仕方がないだろう。
そして、泣き止んだフワンは零断に治療してもらっている。
「すみません。いきなり泣いてしまって。」
頭の電気が抜けたことによって表情を動かすのに痛みはないはずだが、フワンはほとんど無表情で感情を表に出さない。
もともとそういう子だったのかもしれない。
「謝らなくていいよ。それより、何故体に電気がたまってたのかを教えてくれないかな?」
零断が奴隷を買おうとした理由は謎の病気のためだ。
零断的にフワンを助けたことに後悔はないが、もし謎の病気ではなかったら目的は達成できない。
もう1人買うという手をあるが、2人も面倒を見れないので、違っていたら別の方法で調べるしかない。
「子供の頃…6歳にもなってない頃くらいに外で遊んでいたら突然、真上に龍が飛んでいて、その龍に雷を落とされたんです。」
「っ、!?!?」
その言葉を聞いた瞬間にユニと零断は目を見開く。
「フワン。その話は他に誰かにしたか?」
「いえ。もう死んだ母にしか言っていませんし、母も誰にも言っていないと思います。」
「そうか…」
零断はフワンの体から電気を吸収しながら考える。
【まぁ、謎の病気ではなかったな。それは今更どうでもいいが、おそらくフワンは属性龍の雷龍に選ばれたんだろうな。まぁ、そんな人材が俺と関わるなんて、本当に偶然なのか?】
フワンが龍に選ばれし者ならば、零断が帝国に来てから出会った人は基本的に全員龍や神に選ばれた特殊な人間になる。
それは本当に偶然なのか。
それとも誰かに仕組まれたのか。
考えてもわからないことだが、疑ってしまう。
【まぁ、まだフワンには色々教えることはできないかな。奴隷だからって信用しちゃダメだし。また、あんなことになりたくない。】
テニラ村の事件から、少し関わるだけでは零断の違いはわからないが、根の部分の『人への信頼』がなくなっている。ある程度たつと人を信用していた零断だが、本当に親密な関係にならないと信用しなくなった。
なので、見た目では仲が良いように見えても内心では警戒しているのだ。
そう見ると、ユニ含めて子供達は一番警戒心が強い頃に零断から大きな信頼を得ているので一歩有利だろう。
GFOで散々お世話になったダンディに対しても零断は警戒を怠ることはなかったのに、ユニに対しては警戒もクソもないのである。
「それからは日に日に体が動かしにくくなっていって、体を動かすこと自体が痛くなり、村の人達から『雷刻症』と言われて村の奥の小屋に隔離されました。感染しないようにと。」
「そんな…病気じゃないのに…」
フワンの話にユニが声を上げる。
「時々母が見に来てくれましたから大丈夫でした。しかし、父は私みたいな異端児を村に置いておくわけにはいかないと言って口減らしと言う理由で私を奴隷商に売ろうとしました。そこに母が文句を言い、家族は壊れてしまいました。」
「…」
零断は深刻な顔を、ユニは今にも泣きそうになっている。
そこにさらに追い打ちをかける。
「それでも母は私をかばってくれましたが、私をかばうことで村からはぶられ、小さな村なので別れた父とはよく合い、その度に私に関することを言われる。そのような日々が続いたせいで母は精神的病にかかって死んでしまいました。」
「…」
2人はもう何も言えなかった。零断は体の電気を吸収するために動かしていた手を止め、ユニはもう泣いている。
「そして、母が死ぬことで村はすぐに私を奴隷商に口減らしとして売りました。その時に父に言われた言葉。『お前がいなければ俺は妻とずっと幸せに暮らせたのに。全てお前のせいだ。奴隷にでもなって死ね。』と。」
「…そんな…そんなに言われる筋合いなんてないのに…フワンちゃんは何もしてないのに…」
ユニは零断の膝の上に座っているフワンの頭を撫でる。
「…結局ここはそう言う世界なのか。いや、人間という生物はこういうものなのかもな。」
零断はそう言い放つ。
零断やユニのように人間の素が“善”でできてる人もいれば、フワンの父やスカルプ、ダラスのように素が“悪”の人もいる。
結局その人の魂なのだ。大切なものを失ったせいで素が悪に染まる者もいれば、心を改めて善になる人もいる。
「けど、母の最後の言葉は嬉しかったです。『私の願いは、貴女のその状態が治って幸せに暮らせるようになることよ。』という言葉です。」
フワンは今まで自分の辛い時のことを話していた時は動かさなかった表情をほんの少し変化させた。
間違いなく、フワンの母は“善”なのだろう。
「なら、そのお母さんの願いを叶えてあげないとな。この治療が終わればフワンはもう自由だぞ。」
もともと謎の病気を調べるために買った奴隷だが、その手がかりがつかめないのならいてもいなくても変わらない。一緒にいたいのならば連れて行くし、自立したいのならばそれができるだけの資金を出す。
だが、そんな心配は必要ないようでフワンの気持ちはもう決まっていた。
「自由になったとしても、ご主人様の世話をさせていただきたいと思っています。あの奴隷生活や、この病気から救ってくれた方に使えるのが今の私にとっては一番の幸せです。」
「そうか。フワンがそれでいいならそれでいい。けど、俺らについてくるなら、魔物とかと戦闘することになるけどいいのか?あと、その時に使う魔法はおそらく雷魔法になる。」
「え?どういうこと?」
零断の雷魔法になるという理由がわからずにユニが聞き返す。
「まずまず雷の龍…雷龍に雷を当てられる…いや、当ててもらうにはまずまずその属性の適性が必要なんだ。あえていうならば、俺のような半端な適正ではなく、クロノみたいなその属性に特化した他を寄せ付けない才能がな。俺はそれを努力と経験で補っているおかげで対等に立てるが、結果的に強くなれるのは才能を持ってるやつだ。」
零断はGFOで最も得意としていた魔法は雷魔法である。最近は“深夜の暗殺者”の能力で全てできたが、それに至るまでは雷魔法の使い手だったのだ。だから使いどきなどがわかる。
「たしかに龍に選ばれるのには適正が必要だフワンちゃん大丈夫?雷に長く苦しめられて来たのにそれを使うって。」
「全く問題ないですよ。それよりもご主人様と同じ能力が使える方が嬉しいです。」
ユニの心配は無用なようだ。
「私は雷龍のことを恨んでいるわけではありませんですから。」
零断もユニもその言葉に隠されている意味を読み取る。
要は零断と似ているのだ。フワンが雷に蝕まれても村のみんなが協力してくれれば直せたかもしれないのにそれをしなかった。
よってフワンの恨みは村の人々へ向けられているのだ。
といっても復習したいというほど恨んでいるわけでもないので、関わりたくないという気持ちだろう。
「戦闘も大丈夫そうだな。じゃあ、今日武器とか買って、明日冒険者登録して早速訓練してみるか。」
「はい。よろしくお願いします。」
この日は思った以上にフワンの電気を吸収するのに時間がかかったせいで武器も買えず終わってしまった。
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「あっ!『雷白の狼牙』だ!今日は従魔も連れてるぞ!」
「なんだあの獣人。奴隷かな?」
「そういう噂聞かなかったけどねぇ〜」
零断たちが冒険者ギルドに入ると先日もいた冒険者が騒ぎ出す。
そういうのを無視して零断は受付嬢と会話を始める。
「こんにちは。試験を行いに来ましたか?」
「いや、今日はこの子の登録かな。別に試験は今すぐ受ける必要もないし、もう少し後でいいかな。」
「わかりました。では、名前や神職、年齢などを書いてください。」
「「…あっ!!!!」」
零断とユニはここで大きな失敗を犯したことに気づく。
「「フワン(ちゃん)の神職ってなんだ?」」
「調べていないのでわかりません。」
「…すみません。少し待っててもらっていいですか?彼女の神職を調べて来ます。」
「あ、はい。というか、10歳で神職は必ず調べるはずなのになぜわからないのですか?」
「あ〜えっと〜」
零断はどうにか収めようとする。
しかし、フワンが自分からはまっていく。
「私はご主人様の奴隷ですから。」
「「「「はぁ?どれい?!?!」」」」
後ろの冒険者から大きな声が聞こえる。
「ユニちゃんがいながら奴隷だと?」
「女の気持ちも考えていない奴ね。」
「見損なったわ。」
零断の評価がダダ下がりとなる。
しかし、ここはしっかりとフワンとユニが否定する。
「まずまずフワンちゃんを買おうといったのは私なので問題ないですよ。まずまずれだ…フレンはフワンちゃんにそういう目を向けていないので。」
「私がご主人様の相手など恐れ多くてできません。」
対象の2人から否定されたことで冒険者たちは黙り込む。
しかし、ギルド側から見ると、違う意味で質問しなければならない。
「その少女は奴隷なのですか?」
「ああ。」
「奴隷に戦わせるんですか?」
「ああ。」
「…肉壁にするために。ですか?」
ギルド側から見ると、壁ように買う冒険者を見えるのだろう。
昔、そういう冒険者が多かったせいだろう。
そこになぜかフワンが反応する。
「私はご主人様の肉壁になっても大丈夫ですけど…」
「フワン。そういうこと言うな。自分の命を大切にしろ。お前はもう俺らのチーム。不本意な名前だが、『雷白の狼牙』の一員なんだよ。死ぬことはゆるさない。」
「…すみません。」
「フレン。少し口が強い。」
「あーすまん。まさか考えてもいなかったことを聞かれたからさ。少しピンと来た。」
零断からして見ると肉壁にするなんて発想が出てくるギルドに少し失望し、人間の命が目の前で無くなるところを見た人にとってそう言う風に言われると腹が立つ。
しかし、よく考えて見ると、そうさせないためにギルドが忠告してると分かったのでキレはしなかった。
「フレンさんの様子を見ていると、逆にそう言う発想がなかったようですね。なら大丈夫です。」
受付の人も野暮な質問をしたと思っているようで申し訳なさそうに言う。
「まぁ、とりあえず神職を調べてくるから、またくるな。」
「はい。お待ちしております。」
零断達はギルドを出てから、とりあえず宿に戻るために歩く。
「神職か。盲点だったな。あれは光が天から舞い降りるから下手にやると目立つんだよな。」
「だよね。前は誰もいない時に零断さんが1人でやってくれたけど、そう言うわけにはいかないもんな。」
こんな会話をしながら零断は変なことを考える。
【ユニがフレンの時は呼び捨てだが、零断の時はさん付け…少しの間呼び捨てられたこともあったけど、結果的にさん付けがしっくり来たのかな。】
本当にどうでもいい内容だった。
「さてと。森の奥に行きますか。」
「そうだね〜」
零断は特に何も考えず森の奥でフワンの神職を確かめることに決めた。