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波動の龍者  作者: ケイマ
第3章
63/81

2つ名

オークラードを出て早3ヶ月。ついにフェンゲルに着いた零断一行。

予想以上に時間がかかった理由は各町で聞き取りを行なっていたからだ。話題は『謎の病気』について。

しかし、多くある各町にそれぞれ2日ずつ滞在しても良い情報は得られなかった。


「ついにフェンゲルかぁ〜長かったなぁ」


「けど、意外とすぐについてよかったよ。確かここで冒険者ランクを上げられるからな。あと、病原も確かここが近いらしいしな。」


帝国は実力主義ということで他の国と違う体制を取っている。

その1つが冒険者ランクを上げるポイントが多くなるが、試験を受ければ一定期間待たなくともランクを上げられる点だ。しかし、そのポイントの量が相当多いのでそう簡単に上げることはできない。

早く上げることだけを意識して達成できずに死ぬ冒険者も少なくないらしい。しかし、その分実力のあるものの発掘が早くなるのだ。

よって帝国の冒険者ギルドには必ずベテランの冒険者が見張っていて無理だと思われる依頼を受けさせないようにしている。

といっても零断とユニはその反対を押し切ってランクが高い討伐依頼を楽々クリアどころか指定された討伐数の3倍の魔物を狩ってきて非常に驚かせた。

そして、2人に付けられた2つ名が


『雷刻の剣士』(らいこくのけんし)


『白灯の槍士』(はくとうのそうし)


そして、パーティとしての名が


『雷白の狼牙』(らいはくのろうが)


だ。

零断は雷魔法を良く使うからであり、ユニは髪の毛が由来だろう。そして、パーティ名はいつも一緒にいる風雅が由来だと推測できる。

ちなみにこの2つ名は2人とも知らない。

いや、知らなかった。


「とりあえず最低でも1週間はいようと思うからとりあえず拠点探すか。」


「そうだね〜」


と言ってもまだフェンゲル自体には入っていない。検査中だ。

帝国でも上位を争う大都市なので警備なども厳重だ。また、謎の病気も流行っているのでさらに厳しい。

と言っても冒険者は案外すんなりと入ることができる。カードを見せてある程度事情聴取をすれば良いだけだ。1分くらいで終わるだろう。

故に冒険者の列は進むのが早い。


「次の人。」


「ウワラズッレから来た冒険者です。」


零断とユニは冒険者カードを見せながら目的などを話す。


「ああ試験ね。わかった。入って良し。」


冒険者ランクを上げる試験と言ったらすんなり入れてくれた。


「何事もなく無事に入れたな。」


「逆に何かあったら困るけどね。」


そんなことを話しながら2人は馬車を停められる宿を探す。

ここは大都市。宿も普通の町などよりは圧倒的に多く存在していて、馬車が置ける宿も多くあった。

そして、逆にどこに泊まればいいのかがわからなくなる。


「え、どこにしよっか?」


「何が違うんだろうね…」


とりあえず物色する感じで馬車を走らせてると冒険者ギルドが見えてくる。

冒険者ギルドは冒険者用入り口からまっすぐ進めば着くのである意味当然だ。


「まぁとりあえず冒険者ギルドに行っておすすめ聞こっか。」


「そうしよっか。」


馬車を一時的に置いて置ける場所に止めてクラウドと風雅をそのままに冒険者ギルドへ向かう。

風雅をそのままにするのは他の冒険者に風雅を見られると時々剣を向けるからである。魔物との契約は意外と珍しく、ほとんど見ない。

なので、今まで契約した魔物に出会ったことがない人は反射的に向けてしまうことが多い。

また、クラウドをそのままにするのは防犯である。結界を張れる時点でもう優秀だ。万一にも盗まれることはない。

なのでこれまでもこのような形で冒険者ギルドに入っている。


「たのも〜」


「…零断さん。毎回毎回それいう必要あるの?」


「いや、最初は雰囲気作りでしょ。」


零断の気楽な声が物騒な冒険者ギルドに響く。雰囲気を壊してるのは零断である。

フェンゲルを拠点としている大規模ギルドは多くあり、こんなに気楽に入ってくる奴は大規模ギルドに入ってて、さらに位が高い人である。

なのに、見たこともない若い男がそんな雰囲気を出していて冒険者ギルドの人の目線は零断に集中する。


ここでギルドの説明をしよう。

ギルドとは、Aランク以上のリーダーとBランク以上のサブリーダーが2人以上いる場合に作ることができるグループのようなものだ。

その役割は大きく3つだ。

1つ目はその拠点にする町の護衛。

2つ目はそのギルドの知名度によって自分の強さを表すこと。

3つ目は強力な魔物が発生した時に迅速に大人数で対応できるようにするためだ。

そして、このフェンゲルにはギルドの中でも大規模なギルドが3つほどある。

1つ目は『グランソード』

2つ目は『フェアドロウ』

3つ目は『アンティーク』

この3つのギルドは帝国でも有名であり、同盟を結んでいることでも有名だ。この大都市フェンゲルは3つのギルドによって支えられているのだ。


話を戻すが、零断はそんな視線を物ともせず受付へ向かう。

当然あゆみに待ったをかける人がいる。王道だ。


「おいお前。見ねぇ顔だな。新入りか?」


大きな斧を背中に担いだ男が零断の後ろから話しかける。

零断はスルー。いや、キョロキョロして自分じゃないと思って気にせず歩いているのだ。これにはユニも苦笑である。


「おい!テメェのことを言ってんだよ!」


大柄の男が零断の肩を掴む。


「え?俺?」


零断は素で返す。本気で自分じゃないと思っていたようだ。


「ああ?ふざけてんのか?お前しかいないだろ?」


しかし、大柄の男はふざけてると見たのかキレ始めている。


「あ、いえ、ふざけてないけど?んで、何でしょうか?」


「この町に来て冒険者ギルドに来たら頭に頭下げに行くのは当然だろうが!」


「あ、そういうの興味ないんで。ギルド入る気もねぇし。」


零断は肩を掴んでいる手を弾いて受付嬢に話しかける。


「こんにちは。Bランクへの昇格試験を行いに来ました。」


「え、あ、昇格試験ですか。わかりました。冒険者カードをお出しください。」


受付嬢も驚いているようだ。いつもは大柄の男が話しかけたら逃げるか話を聞くのにここまであっさりとするのは初めてだろう。


「おい!聞いてんのかゴラッ!」


大柄の男が零断の肩をまた掴もうとする。

しかし、零断は後ろを振り向かずにその手首を掴む。

そして、顔だけ向けていう。


「なに?なんか用あんの?俺は試験と謎の病気について調べに来ただけなんだよ。俺は権力とか興味ないから。」


「このっ!離せっ!」


零断が少し不機嫌そうに言葉を話している間、大柄の男は零断に掴まれている手首を解こうとするが、離れる気がしない。

それどころかだんだん力が強くなってる気がするくらいだ。

大柄の男は全力で後ろに体重をかける。それと同時に零断も手を離す。すると当然大柄の男は尻餅をつく。

零断は見下したかのようにこう言い放つ。


「あんたがそのリーダーを尊敬するのはいいかもしれないが、その気持ちを人に押し付けんなよ。どこに『冒険者ギルドに寄ったらその町のギルドマスターに挨拶しに行く』って言うルールがあるんだ?」


見下したかのような目を向けられ大柄の男は完全にキレる。

背中の斧を両手で持ち、零断に向かって振りかぶる。

これには流石に見ていた周りの人も慌てるようで魔法を放とうとする人もいた。

しかし、その中で零断は はぁ とため息をつく。

ユニは相変わらず一歩引いて苦笑だ。


「そんな態度ならこの町にいる資格なんてねぇ!死ねぇ!若造が!」


おおきくふりかぶられた斧は零断目掛けて一直線に振り下ろされる。

魔法を放とうとした人は間に合わなかった…と目を瞑り、大柄の男を止めようと動いていた人もやめろっ!と叫ぶ人もいた。

しかし、零断がそんな斧ごときで死ぬわけがない。

その斧に対して右手を出して受け止める。


「…ヘ?」


大柄の男はなにが起きているかさっぱりなようだ。自分の最大火力の振り下ろしをしたのに片手で掴まれたのだから。


「…喧嘩を売って来たなら、俺が俺がお前を倒しても問題ないよな。“オーラ”“エレキ”」


零断は圧倒的な存在感を出して、これからいろいろ舐められないように力の差を示す。

“オーラ”だけでまだ冒険者になりたての者は気を失い、ある程度強い者でも顔を青くして震えている。

そのオーラを間近で感じている大柄の男はまさに恐怖の象徴を見たかのような表情だ。

そして、次に放たれたライトニングアローで大柄の男は冒険者ギルドの壁まで大きく吹っ飛ぶ。

零断は周りをひと睨みした後“オーラ”を解除し、また受付嬢との会話に戻る。


「すみません。お騒がせしました。」


「あ、いえ、冒険者同士のトラブルは多いですから。…それにしても強いですね。彼、Bランクですよ。」


「Bランクはあのくらいなんですか。あまり常識を知らない者でどのくらいが強いのかとかがわからないんですよ。」


「そうなんですか。えっと、フレンさんはAランク以上の実力を持ってると思いますよ?」


受付嬢も零断の強さを認めているようだ。ちなみに受付嬢には“オーラ”の影響を与えていない。おそらく与えたらちびってしまうだろう。


零断が受付嬢と会話している間、大柄の男対零断を見ていた冒険者たちはある噂を上げる。


「なぁなぁ。あいつ、『雷刻の剣士』じゃね?」


「あっ!確かに!じゃあ白い髪の女の子は『白灯の槍士』か!」


「確かに雷使いの剣士と白い髪の槍士。まさに『雷白の狼牙』だ!今一番乗っている冒険者だぞ!」


「となると、魔獣がいるはずだが…いないか。」


「…確か名前はフレンとユニって名前だったはずだ。確かめましょうか。」


女性の冒険者がユニに近づく。

女性はスタイルが良く、女性としては大きい方で、一部に鎧をつけてる状態で背中に大剣をさしている。

明らかにギルドで位が高いとわかる。


「ねぇ、少し話聞いていい?」


「大丈夫ですよ。けど、さっきみたいなことならお断りしますよ。」


「そう言うことではないから安心して。それで、あなたって『白灯の槍士』よね?白い髪をポニーテールにして、槍を担いでいる女の子だし。」


「ふぇ!?は、『白灯の槍士』って何ですか?!?!え、私のこと?!?!」


ユニはパニックに陥る。今まで何度か聞いたことがあった名前だが、まさか自分のこととは思ってなかった。しかし、今回女性に聞かれたことで自覚したようだ。

めちゃくちゃ顔が真っ赤である。


「名前はユニちゃん。あと、彼の名前はフレン君であってる?」


「ああ。あってるよ。というか、『白灯の槍士』ってなんだよ…」


そこにちょうど零断が受付嬢との話を終え、ユニに近づいて来た。ユニは相変わらず悶えている。


「…あなた達、自分の2つ名も知らないの?」


「俺らいつの間に2つ名なんて付けられてたんだよ…って、あなた達?俺もか?」


「ええ。『雷刻の剣士』。そして2人のパーティ名が『雷白の狼牙』よ。」


その言葉に零断も悶える。


「ぬぉぉ!雷刻の剣士ってどこの厨二病だよ!やべぇ!超恥ずい!」


頭を抱えてうずくまりながら大声で悶えている零断をギルド内の全員が凝視する。

今さっきまで圧倒的に強い冒険者という雰囲気を出していたのに今はただの青年だ。変わりようが激しすぎる。


「それで、魔獣もいるのかしら?」


「ああ。馬車で待たせてる。宿舎を見つけてないからな。オススメ教えてもらったからそこに行くつもりだ。何か用があったらいつでも来てくれ。1週間くらいは滞在する。」


「了解よ。何か問題があったりしたら伝えに行くわ。」


いつのまにか女性と変な会話になりながらも零断は顔を赤くしながらユニを連れて冒険者ギルドを出る。


零断達が冒険者ギルドを出たあと。


「やべぇ!やべぇよ!超カッコよかった!」


「最初怖いって言う感覚だったが、今思えばかっこいいよな!」


「あいつには悪いが、フレンの言葉聞いたか?『あんたがリーダーを尊敬するのはいいが、それを人に押し付けるな。』だぜ?確かにど正論だ!これからは俺も学ぼう!」


零断を見ていた全員がその話に盛り上がっている中、先程零断と話した女性は冒険者ギルドの特別室に入る。

中には頭の良さそうな男2人とメイド1人がいた。


「姉御!彼、どうでしたか?」


そのうち1人の男が女性を姉御と呼んで零断について聞く。


「…欲しいわね。うちに。」


女性は先ほど話した零断のことを思い出しながら考える。


「彼は私のものにして見せるわ。絶対に。それに、彼がいればこちらの戦力が大きく上がる。他の2つに良いようにやられていた時代が終わるのよ。こんな良いものなんてないわ。今すぐ行動を始めるわよ。」


「了解です。姉御。しかし珍しいですね。姉御がそんなに興味を示すなんて。」


「そうね…ふふ。何ででしょうね。久しぶりに私のことを見てくれたからかしらね。」


女性は零断のことを思いながら妖艶に笑った。



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