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波動の龍者  作者: ケイマ
第3章
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2つの話題

少し遅れました!

ウワラズッレを出て約1ヶ月ほど経った。

その間に零断とユニの冒険者ランクがCとなっていた。

帝国は実力主義の国だ。その影響はもちろん冒険者ギルドにも反映されている。よって、帝国にある冒険者ギルドに入るときに試験を行い、一定以上だと、飛び級でランクを上げられるのだ。

零断とユニの相手はどちらもCランク。

死なない程度にほぼ瞬殺し、Cランクになった。

Bランクに上がるには昇格試験を行わなければいけないので別の町に行かなければいけないようだった。

そして、今目指しているのは帝都との距離が残り半分くらいの町。フェンゲルである。

この一ヶ月でフェンゲルまでの距離が4分の1ほどになった。思った以上にハイペースである。

零断は焦らずに冒険者ランクを上げながら帝都へ向かおうと思っていたが、その必要がなくなったため早く移動できているのだ。

ちなみに2人はしっかりと冒険者の仕事をやっている。

2人はパーティを組み、CからAランクの魔物を狩り、もうBランクに上がるのに必要なポイントは集め終わっている。なので尚更泊まる必要がないのだ。

そして、引いている馬はクラウド。クラウドは夜少し休めば長い時間走れる。つまり、本当に休む必要がないのだ。


そしてさらに一ヶ月後。2人は今までで一番大きな町であるオークラードで2日の休憩を取ることにした。

理由は特に無いが、あえていうならば食料調達と、仕事したいなぁ…という要望である。

いつもご飯は零断とユニの2人で作っている。

基礎能力を持つユニと、肉料理ならばなんでも美味しくする謎の能力を持つ零断が料理することでものすごく美味しい料理ができる。

前に出会った冒険者におそそわけしたところ、すごく評判が良かった。

特に零断の肉だ。肉料理の料理人でやっていけると思うレベルだ。

そんな意外と料理好きとも言える2人はいつも食べてる料理がパターン化してきているので、新たな料理を求めて街を散策するのだ。


「あ!零断さん!お肉だよ!行ってみよ!」


「んーこの匂いは少し焼きすぎだな。肉の質にもよるが、これは基本的に焼きすぎだな。」


立ち食いの屋台にそんな高レベルなことを求めてはならないのだが、そこは肉マニア。必ず突っ込む。

とりあえず肉差しを2人分買い、食べてみる。


「はむ。ん?これは少し硬いかな?あと、タレが偏りすぎているね。」


ユニも長い時間零断の肉を食べていたからか、肉に関しては評価が厳しい。

他にも日本にはないような食べ物を多く知り、色々と習得したユニと零断。

2日の休憩と言っても1日は歩き、もう1日は本当の意味でダラダラするのだ。最低限の訓練だけをして、ダラダラして、寝て、グダグダするのだ。

ある意味次の日が楽しみな零断とユニであったが、その耳に不思議な話題が2つも流れ込んでくる。

それは冒険者ギルドに入って、情報収集中の時に聞いたことだ。

零断とユニは部屋に帰ってからヴァルとクラウド含めて話し合うべきと決め、取ってある宿舎に帰る。


「さてと、ユニ。呼び出してくれ。」


「了解だよ。来て。」


ユニが呟くだけでヴァルとクラウドが現れる。


『例の件ですね?一応聞いていました。』


『同じくです。まずはどちらからですか?』


「まずは『謎の病気』のことだな。」


「…正直に言っていいかな?」


「ん?」


「なんでそれが零断さんの興味をそそるのかなって。だって感染病とかよくあることだけど、私たちはそう言うのにはかからないから。」


零断とユニは体自体が強いので感染症などにはかからない。

零断の場合、一部が龍化しているのでさらに病気になる確率が減る。

ユニはユニで神の加護を受けているのでかかることはほとんどない。

ユニの問いに零断が問いで答える。


「ユニが言う理由もわかる。けどさ。誰も感染病とは言っていない。そして、聞いたところその病気が多く出ているのはフェンゲルなのに、ここまでその噂が流れている。つまり、それほど長い期間ずっと治す方法が見つかっていないんだよ。つまり、どう言うことがわかる?」


「えーと…ヒントが少なすぎる気が…」


確かにヒントが少ない。具体的すぎて詳しい内容がわからない。

しかし、それはしょうがない。ヒントというか答えを言うようなものになってしまうからだ。


「まぁ、わからないよな。つまり、その病気がこの世界のものではないとしたら?」


「あっ!つまり!」


「そういうこと。異世界から来た病気。または異世界人が作った新たな病気っていう可能性にたどり着くんだよ。」


「確かにそれなら零断さんの注意を引きますね。」


ユニが納得したかのように頷く。

しかし、ヴァルは疑問に思ったようで質問する。


『しかし、貴方様がかかる可能性もありますよ。』


「いや、それはないさ。もしかかったとしても龍化を進めて治す。」


『ユニがかかったとしたらどうします?』


「妖精化をすれば治るさ。これは龍から得た知識だから偽りはない。」


『それがわかっているなら大丈夫でしょうね。』


零断は龍化をしてから夢の中で龍に会うことが出来るようになった。

といっても会うのはランダムでその時に話せるかどうかもわからない。

しかし、話せる時には世界の質問などをして知識を蓄えている。


「俺たちがその病気に耐性がある。だからこそこの問題を解決したいんだが、どうだ?」


「わかった!」


『可能性としては異世界からのものと考えても不思議ではないですからね。』


『異世界の手がかりになるかもしれないですね。』


3名からの許可が出たのでこの問題には首を突っ込むことに決まった。


「次に2つ目の話題だが。」


「…王国の王女が消えたっていう話だよね。」


『王女は2人の凄腕の護衛を連れて山脈を登っているっていう噂もありますね。』


「その2人はおそらく異世界人だな。」


「どうしてそう思うの?」


異世界人と決めつける零断に疑問を持ち、ユニが聞く。


「まぁ、自意識過剰かもしれないが、俺のことを追ってるのかもな。」


「それなら早めに倒しておいた方が良いのでは?」


「違う違う。簡単に言えば俺に助けを求めてるんだよ。」


零断の言葉にさらに頭の上にはてなマークが浮かぶユニ。


「王都には俺の親友がいる。おそらくそいつも俺が帝国へ行ったことは知ってる。だから、その王女に俺の後を追わせた。おそらくその王女は常識人なんだろうな。イかれている王国の中で数少ないな。そして、それについていくのは俺を知ってる異世界人か、常識人。けど、山脈を越えられるほど強い常識人がそんなすぐに王都を抜け出せると思うか?王都のことだからもう手の内だろう。なら、この世界、この国に来たばかりの異世界人という結論に達する。」


『貴方様の親友はどういうお方なのですか?』


この話には慎慈が大きく関わっている。だからこそ、慎慈のことが知りたいのだろう。


「んーイケメンで、正義感強くて、運動神経抜群で、頭のいいやつ。」


「それって完璧な人間だよ!」


「まぁ、実際完璧な人間だと思うぜ。俺みたいにひねくれてない。けどまぁ、少し頭が硬いから間違っているところがあったら根気よく説明する必要があるけどな。まぁ、説明すればわかってくれるから悪いやつではないな。」


「へぇ〜会ってみたいな。」


「必ず会えるさ。いつかは。」


【その時には敵同士だろうがな。】


零断は心の中でそう呟く。


【まずまずあいつがずっと王国にいる時点でおかしい。すぐに異変に気付いて出ていくはずだ。けど、それをしないってことは、弱みを握られているという可能性が大きい。だとすると、王国へ喧嘩を売りに行ったとしたら、確実に対決する。】


その時には殺す覚悟も必要だと考える。

その覚悟を決めた顔からユニもその可能性に気付き、何かを言おうとしていたが辞めた。

少しの沈黙が流れ、零断が口を開く。


「とりあえず、王女との接触はしたいと思っている。その後どうするかはさておきな。殺しても良いし、仲間としてみてもいい。」


「え?仲間にしていいの?」


王国の中心人物だった人物を仲間にして良いという零断に驚くユニ。


「なんかユニ、俺の対応に驚きすぎないか?」


「うぅ…私も少し思ってた…まだまだ零断さんのことを知らないんだなぁって思ったよ…」


「まぁ、知ろうとしてくれるならいいさ。それなら俺も嬉しいし。」


『…ごほん』


ユニと零断がいちゃつき始めたので咳払いをして現実に戻すヴァル。

その咳払いに気づいて、零断は目そらしながら話に戻る。


「王国を出るなんて王国が嫌いかスパイしかないだろ?スパイなら、プライバシーがなくなるが、風呂でもどこでも波動で見張っとけばすぐにわかる。」


「あー確かに。みていることを伝えなければ零断さんの波動は気づかれないもんね。」


「最強の犯罪道具じゃねぇかよ…」


零断が自分の能力の間違った使い道を見つけ、落胆する。

そんな零断にユニは顔を赤くさせながらいう。


「そ、そんなに我慢してるなら私が…」


「あ、いえ。大丈夫です。」


勇気を振り絞った言葉に零断は即答。


「なんでよ!というか、せめて最後まで言わせてよ!」


「ふ、俺は夢と希望を打ち砕くのが大好きなんだ。」


「あ!この人最低だ!騎士団さん!犯人はこちらです!」


「まぁ、あの時は襲われたけど、基本16になってからだ。」


「…16?伸びてない?」


「…伸びてない。俺の世界では16から結婚できる。」


「この世界ではそんな理屈はありません。」


「元の国のしきたりを受け継いだりするだろ?同じようなものだ。」


「なら襲うよ。」


「すぐに極論に走ったな!俺を襲えると思ってるのか?」


「零断さんがうなされている…つまり、龍との会話中なら余裕だよ。」


「なっ!なら風雅に守ってもらうか。」


「あ!それはずるいよ!」


「獣魔の強さだ。」


「うぅ〜!なら、ヴァ…」


『諦めてください。』


「せめて最後まで言わせてよ!」


ユニの扱いが酷くなる。

そんなことを話しているうちに空は暗くなり始めていた。


「じゃあ、夕飯でも食いにいくか。」


買い食いと言う名の夕ご飯が始まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


アリィ一行は山脈の頂上付近で戦闘をしていた。


「“構築”!“実行”!」


穂高の魔法で瞬間的に拳銃ができて、それを撃つ。

球は魔物の顔面にあたり、爆破して周りの魔物にもダメージを与えた。


「くそっ!数が多すぎるだろ!」


穂高の叫びが響く。現在20匹以上の魔物に囲まれているアリィたち。

囲まれているので、魔法で一掃することもできずに困難を極めていた。


「2人ともしゃがんでくれ!“リクウィジットアロー”!」


この技は相手がどれだけ移動したとしても必ず当たる矢を放つ技だ。

この先頭を始めた直後から準備していたので、全部の敵に当たった。

しかし、全部の敵に当たったからって倒せたわけではない。

明らかに強そうな5体の魔物は残った。

それに対してアリィが魔法を放つ。


「炎よ来て!“フレイムブラッド”!」


慎慈のアドバイスから編み出したオリジナル魔法。最短詠唱に近いのはこれまた努力の結晶だ。

その銃弾のような球は魔物の頭を全部貫き、3人は先頭を終える。


「あと少し登りましょう!そうすれば山脈のてっぺんに着きます!」


アリィは2人を促す。

悠太と穂高も同感のようで戦闘で疲れた体を動かして頂上を目指す。

そして、森の中の視界が不意に開ける。


「わぁ…!」


「こりゃすごいな。」


「へぇ。」


そこには草原があった。草原はほんの少し緩やかな坂になって続いている。


『これはこれは。まさか日があまり開かずに2組目が来るとは驚きましたね。』


穂高と悠太、アリィはその迫力に後ずさりしてしまう。

そこには零断も戦った神鳥がいた。

神鳥はその存在だけでも圧倒的な実力を見せつけている。故に3人は後ずさってしまうのだ。

そんな風に緊張している3人に神鳥は声をかける。


『そんなに固まらなくていいですよ。あなた達は何をしにここへ?』


「あ、えっと…“零断”と言う方を探しているのです。山頂を通りましたか?」


その言葉に神鳥はある程度納得する。


【あの男性2人。彼らは異世界から来た零断様と同じ存在でしょう。しかし、龍や神、鬼に見定められていないのでしょう。何を考えているかなどは丸わかりですね。と言っても私とあってからは恐怖でいっぱいみたいですが。対して少女の思想は読めません。この少女は…神に一目置かれていますね。ならば導くのが役目ですね。】


神鳥は零断の行動を教える。


『零断様は現在この山脈を下っています。ペースが早いようでそろそろ帝国の街に着くでしょう。彼らに聞いた話ではその後、帝都を目指すようです。』


「本当ですか!有益な情報をありがとうございます!」


『いえいえ。それが私の役目ですから。ところで、貴女は私の正体に気づいていますか?』


「…神鳥…様ですか?」


当たると思っていない質問にアリィは答え、神鳥は驚く。


【…彼女は零断様と一緒にいたあの子よりも神に愛されているのかもしれませんね。】


神鳥はそう考える。


『よくわかりましたね。』


非常に不安だったようでアリィは安心した表情を出す。


そんなアリィに神鳥はアドバイスする。


『零断様を追うならばこのまま直線より、少し帝都よりに斜めに進むのが良いでしょう。お金や証明書である冒険者カードがあれば知らぬ町についても大丈夫でしょう。健闘を祈っています。』


「あ、ありがとうございます!では、今日はここで休んで行っていいですか?」


『大丈夫ですよ。できれば話し相手になってくれませんか?前に来た零断様一行もあまり会話をしなかったので。』


「わかりました!是非お願いします!」


アリィと神鳥はその後夜まで話し続けた。








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