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波動の龍者  作者: ケイマ
第3章
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旅立ち

最近投稿するの忘れるな…

「もう…行くのか?」


「ああ。あいつをそんなに待たせるわけには行かないからな。帝都へ手紙は送れたか?」


「そこはバッチリである。ここの領主に直々に書いてもらったものであるから、粗末にされることはないだろう。」


「わかった。ありがとな色々と。ここにダンディがいて助かったぜ。」


「我も久々に旧知の友と出会えて楽しかったのである。また寄ることがあれば寄ってくれ。」


「当然。」


旅立ちの日の朝、零断は起きたばかりのダンディと話していた。

現在の時間は6時である。帝国の人々の朝は基本7時だ。その生活が子供から大人まで染み付いている。

しかし、零断達一行はそういうわけではなく、朝は早い。

今日は旅立ちなので零断とユニはさらに早起きしていた。

そして、ガチャガチャやっていたせいでダンディが起きてしまったようだ。

現在ユニは馬車にて荷物整理を行っていた。


「あー馬の件は少し迷惑をかけたな。」


「機にする必要はないのである。初めてのまともな旅なのだからミスも当然である。まぁ、我も旅などしたことないのだがな。」


ダンディに一昨日、馬が必要と話していた。

しかし、しっかりと考えてみるとユニにはクラウドがいるのである。クラウドは一体だけで普通の馬の何倍もの速さで何倍もの重さのものを運べ、さらに揺れもなく、障壁があるので危険も少ない。最強の移動用の妖精なのだ。

それに気づいた2人はすでにダンディが用意してくれていた馬をキャンセルしてもらったのだ。

ちなみに、鳥の妖精のゴルは偵察に適しているのだが、これは風雅がいるので全く必要ないのである。なので、あまり使っていない。

ピクシーに関してはユニが時々じゃれていることもある。

つまり、ゴルだけ使わないのだ。

他の子供達は今は寝ている。昨日は零断一行のパーティをやり、いつもは起きていない時間まで起きていたので寝ているのである。


「子供達は起こすのか?」


「無理やりは起こさないよ。午前中に出れればいいから子供達にもしっかりと別れをいうさ。」


「それがいい。何も言わずに出て行くほど子供達が傷つくことはないだろうからな。」


「アニメとか漫画の主人公は置き手紙とか置いてくだろうけど、俺はみんなに伝えたいこともあるしそんな風にはやらないさ。」


そこまで話すとユニが馬車から戻ってきた。


「あ、おはようございます。ダンディさん。」


「ああ。ユニよ。馬車はどうであった?」


「凄かったです。1から全て丁寧に作られていることがわかり、壊れることがないと思いました。」


「だろう?あれは我がつくったのだ!」


「え?そうなんですか?凄いです!」


「まぁ、ダンディはそういう系のスキルも相当あげてたからな。」


「カンストしていたのである!」


「それはすごい…」


「かんすと?ってなんですか?」


「元の世界でその1つを完全に極めた存在だよ。」


「つまり、ダンディさんは馬車づくりのエキスパートってことですか?」


「そういうことだ。」


「訂正すると、馬車だけではなく、船や家も作れるであるが。」


「そんなん極めようとも思わねぇわ。」


零断達はそんなことを話しながら食堂へ向かう。

食堂には多くの兵士がご飯を食べていた。

零断とダンディが入ると全員から視線を貰う。


「おはようございます!零断さん!」


「今日出発と聞きいたぜ!旅、頑張れよ!」


「子供達のことは俺たちに任せておけよ!」


「だから、安心して旅をしてくださいね!」


なぜ、こんなに兵士から話しかけられるかというと、少し前に紅蓮傭兵団にやったような魔法や剣術のコツを教えたからである。

最短詠唱は教えていないが、その魔法のイメージを強く持てと言ったので似ていると言っても良い。

零断が最初に来た時は厄介払いのような態度だったが、ダンディの命令で一度訓練を受けただけで態度が大きく変わったのだ。

しかも、午後から夕方にかけての短い時間だけである。

零断は教官になれるのではないだろうか?



「おう。ありがとな。また寄った時には顔出すよ。」


「おう!よろしく頼むぜ!」


そんな会話をした後に零断達は朝食をよそり、食べ始める。

ちなみに朝ごはんは白米で、バイキング方式である。

白米は鍋で大量に炊いてあった。


「なぁ、零断よ。この町に残って教官をやらぬか?我が呼べばリンも来るだろうし。」


「ごめん。俺は旅がしたいんだ。リンと会うのが第一だが、旅っていうのにロマンを感じないか?せっかく異世界に来たんだ楽しまないと損だろ。」


「そう…であるな。」


ダンディは何か納得したように頷く。

そして、真剣な表情に切り替えた。


「お主は元の世界に戻りたくないのか?」


直球な質問だった。数人の転移者を保護して来たダンディは聞いてみたかったのだ。

他の転移者が聞かれるのを避けていたことである、元の世界について。

零断はそういうそぶりを見せていない。ならばと思ってダンディは聞いたのだ。

ユニは目を大きく開く。そして、零断の方を向いて回答をまった。

それに零断は即答する。


「特に未練はねぇよ。家族が心配だが、その程度だ。あ、ゲームは大事だな。」


「……なぜ、なぜそう切り離せるのだ?我にはできない。いまだに悩んでしまうのだ。」


「それが普通だろ。俺の場合、親友もいるし、彼女もいるし、どうせ妹もいる。そして、この世界に来て知り合い、大切になった人もいる。

俺はそういう人の方が大事なんだよ。要は何が大切かなんだよ。それは人によって違うからな。」


「…そうか。我は未練があるから悩むのだな。」


「それも悪いことじゃないと思うぜ。死んだわけじゃないんだ。戻る方法だってきっとある。」


「そう…であるな。すまんな。旅立ちの朝にこんな質問をして。」


「気にすんな。聴きたくなるのは当然だよ。ま、俺は他人のリアルを聞くほどそのことを聴きたいわけじゃないからな。自分は自分で強い心を持ってるから良いと思ってる。」


「…さすがだな。気持ちが晴れた!感謝する!では、先に行ってるぞ。」


「おう。」


ダンディが先に食堂を出た後、ユニは零断の服の裾を引っ張る。


「ん?」


零断がユニの方を見ると何か言いたげな顔をしていた。


「どうした?」


「…零断さんがリスパルタに残ってくれるのは…いえ、残らせているのは私が原因ですか?」


悲しそうな、申し訳なさそうな顔でユニが聞いてくる。


「ふふ。」


そんなユニの表情を見ると、何故か笑いがこみ上げてくる。


「な、なんで笑っているんですか?!」


零断が笑っていることに気づいたユニは拗ねるようにそっぽを向く。


【おそらく、相当勇気を出して聞いたのに流されたから拗ねてるんだろうな〜やべぇ、超可愛い!まぁ、まずまず流してないからユニの勘違いなんだけど。】


零断はそんなことを思いながらユニの頭を撫でる。


「いや、ユニが可愛かったからだよ。」


そういうと、ユニはピクッと跳ねる。

零断のにやけが止まらない。しかし、ユニは零断がまだ笑ってるとわかっているので振り向かない。

そんなユニの頭を撫でながら零断はユニの質問に答える。


「…逆だよ。ユニが考えていることと逆。ユニがいてくれるからこの世界に残れるんだ。ユニがいるから、自分の居場所をここって決められているんだよ。俺の居場所は大切な人の隣。」


零断は涼音を助けた時に思ったことをそのまま口に出す。今はその大切な人という対象が涼音ではない。しかし、生き方はやはり変わらないのだ。

どの世界にいても、心が壊れたって大切な人と一緒にいたいと願うのが零断だ。


「だから、ユニはいなくならないでくれよ?」


零断にも一瞬声が震えたのがわかった。

涼音と離れ離れになり、セリアが亡くなった。零断はもう2人との別れを味わっているのだ。

もう味わいたくない。大切な人と離れたくない。

そういう心の叫びが少し漏れてしまった。



零断の最後の言葉を聞いて、ユニは複雑な気持ちになった。


【私と3年くらいしか違わないのに信じあった人と2回も別れているんだよね…だから…】


ユニは心に誓う。


【もう。零断さんをそんな目に合わせないようにする。】


ユニは丁度食べ終わった零断の手を握る。


「…ありがとな。さ、もうそろそろ行こうぜ。マサたちもも起き始めるだろうしない。」


「そうですね!」


零断とユニは食べ終わった食器を持って歩き始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「来て。クラウド。」


ユニがそう呟くといつも通りクラウドが現れる。


「クラウドこの馬車引ける?」


『当然です。鉄で作った50人乗りの戦車も私にかかれば簡単です。』


ユニの問いにクラウドは即答する。そんなクラウドに苦笑しながらダンディ含めた見送りのみんなの方を向く。


「もう…行くのか?」


「その言葉数時間前に聞いた気がするが…ああ。」


「零断さん。お元気で!」


「ユニ姉も元気で!」


「また来てねー!」


「…絶対にまた会いたい。」


「もっと、もっと強くなってみせます!」


それぞれが自分の気持ちを表すように顔の表情を変える。

マサの責任を感じた顔

ムペの不安ながらもワクワクしている顔

単純にまた会うのを楽しみにしている顔

不安、心配している顔

己の決意を固めた顔

零断はそんな彼らに別れの言葉を言いにいく。


「マサ。お前はリーダーだ。この中に死んでしまう人がいるかもしれない。」


「零断!それはっ!」


零断の言葉をやめさせようとダンディが手を出すが、それはユニに止められる。


「それは全てお前の責任となる。絶対にリーダーという事を忘れてはならない。」


その零断から発せられる重い言葉にマサは身震いする。

しかし、目は怯えるどころかそれを受け入れるようだった。


「そうだ。その目だ。リーダーは一番辛い役目だ。だが、自分が支え、みんなに支えられるという実感が一番するんだ。生きてるって思えるんだ。リーダーはやればやるほど楽しく人生を送れるんだぜ。だから俺から伝えることは1つ。」


零断は少しタメを作って言い放つ。


「その役を全力で楽しんで、全力で学んで俺を超えろ!」


マサは人をまとめることには才がある。

零断は圧倒的な信頼によるリーダーだが、マサは人をまとめ、信頼される。

零断にはなかったものを持っているのだ。

それを極めればリーダーとして零断を抜くことができる。零断はそれを望んでいる。


「わかり…ました!このパーティを絶対に殺させやしない!そう心に誓い、いずれ零断さんを抜くほど強くなってみせます!」


零断はマサの頭をぐしゃぐしゃと撫でて、隣にいるムペへ視線を移す。


「ムペ。自分を信頼できてないのはわかってる。だがな。お前は強くなった。だから大丈夫だ。安心しろ。お前がギガンテスに乗っ取られたり、制御を失うことなんてもうないんだ。」


「…ん…うん!」


ムペは感極まって零断に抱きつく。怖がっていた頃のムペとの違いがよくわかる。


「自信を持て。これからはパーティを守る盾となるんだぞ?自信を持たないとみんながいなくなるぞ。」


「そんなの…嫌だ!」


「そうだろ。俺も嫌だ。だから自信を持て。己を信じろ。どうせミスったってマサがフォローしてくれる。」


そういうと、マサはムペの方を向いて頷く。


「な?大丈夫だろ?何も問題ない。自信を持てよ。」


「…ありがとう!兄ちゃん!」


その言葉に皆が反応する。

零断は何かと間違えたのかな?と思ったのだが、子供達にはその言葉の意味が理解できて、そして当てはまったのだ。


「ん。私たちの兄さん。」


「そうだよー!零断兄は私たちの兄ちゃんー!」


「零断兄さん…ですか。なんとなく全てのピースが当てはまった感覚ですね。」


「そう…だね。零断兄さんは僕たちの兄さんなんだ。」


子供達は皆、その言葉を聞いた瞬間にはもう零断のことを兄としてみた。いや、もともと兄のような存在だったのだろう。それが具体的な言葉となり、当てはまったのだ。

子供達の言葉を聞き、本当の兄と思われていると分かった零断。

そのことに苦笑しながら問う。


「こんなのが兄でいいのか?泣き虫で自分勝手な異世界人だぞ?」


「零断さんないたところみたことないよ。」


「その自分勝手の中に私たちが幸せになってることも入ってるー!」


「…だから、自分勝手ではない。」


「まずまず異世界人とか全く関係ないですよ。零断兄さんは僕達の兄。それは確実なのですから。」


そんなことを言ったら全員に即否定された。


そして、ムペがとどめを刺す。


「零断兄ちゃんは俺たちが弟じゃ嫌か?」


それはずるいだろう。と零断は思う。

そして、零断も素直になって答える。


「そんなわけないだろ。こんなに素直で信頼してくれて可愛い兄妹がいて嫌な奴なんていないさ。」


すると、横から服を軽く引っ張られる。


「ん?どうした?ユニ。」


「…零断お兄ちゃん?」


上目遣いで零断に疑問系で話しかける。

これは零断の理性を大きく削るが、そんなにやわではない零断はユニの頭を撫でて問う


「妹と恋愛する気は無いが?」


「やっぱり普通に零断さんで。」


即答だった。そんなユニに苦笑しながらムペの隣にいるティアに視線を移す。


【というか、妹が嫌というわけでは無いが…いや、逆に萌えると思うが、リアルブラコン妹がいる俺にとってはどうかな…】


久しぶりに火憐のことを思い出す。

最近になって、涼音や慎慈、火憐などの仲のよかった仲間と会いたいという気持ちが大きくなってきている。恐らく、今まで忙しかったから深く考えてなかったからだろう。

3、4ヶ月危険と隣り合わせの生活から解放されたのは意外に大きいようだ。

そんなことを考えているとティアが相変わらずの元気の良さで話しかけてくる。


「零断兄!強くなりたいー!もっともっと強くなって、零断兄を支えたいのー!だから、強くなって支えられるまで無事でいてね!」


「はは、まさかティアにそんなことを言われるとはな。…当然だ。兄妹の成長を見るのは兄の仕事だろ?」


「うん!ありがとー!」


零断はティアの頭を撫でてから右手を出す。

ティアはその意味を理解して、同じように右手を出し握手をする。


「約束だ。」


「うん!まっててね!」


そこで、握手を終わらせて横にいるチャマの方を向こうとすると、横から抱きつかれる。


【あれ?チャマってそんな子だったっけ?】


零断はそう思いながら、抱きついてきたチャマの頭を撫でる。


子供達をあやすのは基本頭なでなでなのだ!


チャマは震える声で零断に問いかける。


「本当に…いくの?」


その声は別れるのを怖がっている声だった。

零断は驚いた。チャマはこういう時はしっかりとみんなの面倒を見ると思っていたが、一番不安なのはチャマだった。


「ああ。行かないといけないからな。」


「……せっかく見つけたのに…嫌だよぉ…」


その言葉に零断は過去の恐怖が入ってることに気づいた。

チャマはあまり自分のことを話さない。よって、零断もチャマがなぜ奴隷になっていたのかなどは全く知らないのだ。

しかし、今の言葉にはその過去についての気持ちが詰まっているように感じた。


【ここで言葉をミスったら取り返しがつかなくなる。】


零断は圧倒的な緊張に見舞われながらも言葉を繋ぐ。


「チャマが俺をどう思ってたかは分からないし、聞かないよ。だからこそ言うよ。俺に依存するな。ずっと俺に見ててもらっていたら俺がいなくなった時に何もできなくなるだろ。それが愛ならいいと俺は思う。けど、依存で身を滅ぼすのはダメだ。」


「……」


チャマは顔を埋めたまま動かない。

零断は言葉を紡ぐ。


「まぁ、安心しろ。俺とはどうせ会える。ユニも会いたがるだろうしな。」


「…ほんと?」


心配そうに顔を上げるチャマ。そんなチャマに抱き返しながら零断は続ける。


「帰ってくるのを待つより早く会える方法ならあるよ。それは強くなることだ。」


「強く…なる?」


チャマは意味がわからないようで首を傾げている。


「詳しく言うなら、有名になるんだよ。そうすれば遠くにいてもみんなのことを知れるだろ?どこにいるかわかれば会いに行ける。」


「…確かに。わかった。私、強くなる。」


「ああ。けど、1人じゃ強くなれないぜ?」


「…うん。みんなと一緒に、強くなる。」


「そうだな。みんなと一緒に強くなれ。強くなれば世界が広がる。いろんなことを知れるんだ。」


零断は最後に強くチャマを抱きしめる。

チャマも零断を強く抱きしめ、満足した様子で離れた。

そして、最後にクロノへ視線を移す。

クロノの目は強くなると決意した目。この目に似たものを零断は見たことがある。


【ボルケニクスの時のグレンだな。決意し、それをひたすら追い続ける目。だからこそ。】


「クロノ。お前は絶対に無茶をするな。」


「わかりました。」


「いや、分かってないな。お前は確実に無茶をする。そうだろ?」


「…」


クロノは黙り込む。


「そんなに早く強くならなくたっていいんだよ。」


「けど、零断兄さんの弟子として早く強くならないと!」


「その焦りのせいで俺はお前を死なせるわけにはいかないんだよ。」


「…わかり…ました。」


「なら、クロノには特別なお願いをするか。仲間を守る為に無茶をしろ。強敵と遭遇したなら、無茶して止めて、パーティがダメな方向に進みそうだったら無茶してでも止めろ。そういう時の無茶なら、成長があるんだよ。ただがむしゃらに討伐して、強敵に挑んでも成長は少ない。なら、家で魔法の練習していたほうが効率がいいからな。」


「仲間を守る為に…」


「ああ。クロノ達にもいずれ困難が来る。それは強くなるのに必要なことだから確実に来るんだ。それを乗り越えられなかったら死ぬ。その場面に出会ったならば無茶を通り越して限界を超えろ。」


「そんなことあるんですか?」


「ああ。ユニはもう一度体験したと思うぞ?」


「え?あ、そういうことですか。確かに、使命感というか、強くならないと死にましたから、ヴァルを呼び出せましたし、そういう時のことなんですよね?」


「ああ。だから、確実にそういう経験はするものだ。その体験をする前に死んだら成長もなにもない。人間は極限な状況になっても折れずに抗うから強くなれるんだ。」


「…そうか。焦っても仕方がないのか。…つまり、今は基礎を固め、倒せる敵と戦うことで実践の立ち回りなどを身体で覚えることを優先するわけですね。」


「ああ。正解だ。それをやるだけでも実力は少しずつ上がっていく。その積み重ねをするからこそ、重要な時に限界を超えれるんだ。」


「ありがとうございます。最後まで教えてくれて。」


クロノが零断に深く頭を下げる。


「だってお前は俺の弟子だろ?弟子に色々教えるのは師匠の役目だ。本当はもう少し教えたかったがな。」


「十分ですよ。あせらず、着実に実力をつけます。」


「ああ。雷魔法の才能だけで言えば俺よりクロノの方があるんだ。すぐに俺を抜けるだろうな。まずはエレキワープを完璧にしろ。あれができればどんな時にでも対応できる。」


「はい!師匠!」


「クロノに師匠と呼ばれる日が来るとはな。」


零断はそんなことを言いながらクロノの前に拳を突き出す。

クロノも同じように拳を突き出した。


「「また、会おう(会いましょう)」」


ぶつけた拳から電気がピリピリと流れ出る。

零断の1人だけの弟子との別れ。その別れで言いたいことはこの拳で全て伝わった。


「さて、そろそろ行くぞ。風雅。」


「おん!」


零断は背後に準備してある馬車に乗る。クラウドは召喚済みだ。零断の隣に風雅、ユニは零断の反対に座る。

この馬車は4人乗りなのでもう1人入ることができる。


「きて、ヴァル。」


『…御者の為に要請を呼ぶ人なんてユニ以外いないでしょうね。』


「実際には馬を操らないから御者もどきだけどね。」


『…まぁ、いいでしょう。』


『では、そろそろ出発します。』


クラウドの合図で馬車動き出す。子供達はその馬車を大声を出しながら見送る。


「兄さん!ユニ姉!元気でな!」


ムペが最初に送り出し、


「またいつかー!」


ティアが両手を大きく振りながら見送り、


「強くなってまた!あいたい!」


チャマが必死に声を出して決意し、


「絶対にこのパーティを守ってみせます!」


マサが零断に言われたことを守ると宣言し、


「次に会うのを楽しみにしてます。師匠。」


と、誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。


ユニは窓から顔を出して手を振る。


「ムペ、ティア、チャマ、マサ、クロノ!またね!」


零断は馬車の中で念話を使う。

対象は見送っている5人とダンディ。


『また、生きて会おう。この残酷で理不尽な世界で。』


その念話は6人の体をふるわし、使命を負わせた。


「「「「「「はい!(おう!)」」」」」」


こうして、零断とユニはウワラズッレ町を後にした。






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