受け入れる
零断さんが変わった。
私…ユニはそう思う。よく笑うようになり、話すようになった。
無駄に話すということではなく、少し説明不足な部分があったところを説明するようになったのだ。
そんな零断さんをいつものように起こす。
「零断さん!朝ですよ!」
「う、ムゥ…あと5分…」
「早く起きないと襲いますよー。」
「ばっちこい!波動の障壁を越えられるならな。」
「むぅ」
そんな会話をしながらも零断さんはしっかりと起きてくれる。
正直零断さんの寝顔をもっと堪能したい気持ちもあるが、もう朝ごはんだ。
今まで私と零断さんが起きるのが早かったのだが、私たちが夕ご飯を食べ終わった後の練習で疲れ果てて寝てしまうので、少し夜更かししているようなのだ。
といっても体に悪いほどではないらしい。ヴァルが教えてくれた。
私が目覚めてから10日経った。あの洞窟は私の傷が完治した3日後に出た。
もっと早く治ると思っていたのだが、思った以上に深かったらしい。もう傷は残っていない。
そして、今は相変わらず零断さんが作った木の床の上。零断さんと私以外のみんなが軽い朝練を終わらせて朝食の準備をしている。
私はそんなことを思いながら零断さんがいなかったら大傷になっているお腹をさする。
「どうした?また触ってほしいのか?」
「今はそういう意味じゃないです。ただ、零断さんがいなかったら大怪我になっているんだな、って思って。」
「まずまず、俺がいなかったら牢屋で植えてるよ。」
「ふふ。そうですね。ってひゃっ、!いきなりお腹触らないでください!」
「じゃあ離そうかなぁ〜」
「…離すのは認めません。そのままでお願いします。」
「うむ。正直でよろしい。」
あの3日間のせいで零断さんにお腹を触られるとこが好きになってしまったのです。
…だって気持ちいいんだもん!優しく撫でてくる手が病みつきになっちゃうんだもん!
「ユニー!まだー?」
あ、そういえば零断さんを起こしに来たんだった。
「今行くよー!零断さんもやっと起きてくれたし!」
「りょーかーい!はやくしてねー!零断さんがいないとクロノとユニと零断さんのご飯が作れないからー!」
「らしいですよ。零断さん。」
「お腹撫でたまま降りたい?」
「…それはすごく悩みどころですね。撫でられる時間を長くするか、みんなに見られないことを優先するか…うーーーん…」
「…そんなに悩むことなのか?」
何か零断さんが言った気がしますが、無視します!
「…普通に降りましょうか。」
「おう。それじゃあ後でいっぱい撫でてやるよ。」
「楽しみにしてます!!」
下に降りると零断さんはすぐに焼肉の準備に入ります。
最近は私と零断さんとクロノが朝昼晩全て魔物の肉です。
肉ばっかで大丈夫なのか?と思うかもしれませんが、問題ありません。魔物にも草食、雑食、肉食があり、それぞれの魔物によって栄養が違う………らしいです。
そこはヴァルの知識なので分からないけど、零断さんは納得してたみたい。
というわけで今まで風雅が狩ってきた肉を使っていたが、今は風雅にその日の肉食と草食の魔物を1日1日狩ってきてもらってます。
一体一体感触や味が違うので飽きる気がしません。
これも零断さんの肉付きのおかげですね。
ご飯を食べ終わった後は私以外は零断さんの指示のもと練習をします。
私に関しては練習というよりヴァルとの戦いなので零断さんもノータッチです。
しかし、今日は違うことをしようって零断さんと話し合って決めました。
何をやるかというと、今日だけみんなの練習を零断さんは見ないで、私とヴァルで零断さんの右足を見ることにしたのです。
今はただの右足に戻っていますが、強く波動を使うと龍の足になってしまいます。それが元に戻るには6時間以上の睡眠を取らなくてはいけません。もし、5時間59分だとしたら見た目は普通の右足なのに使い方は龍の足、という風になります。6時間になったらきっぱりと元に戻るらしいです。
これは零断さんが直接波動の龍に聞いたことらしいです。
なので、何が違うのかや、どんな風になるのかを試すことになりました。いずれ体全体が龍になることが確実となったので慣れていかなければいけないことです。
「んで、何をすればいいんだ?」
『とりあえず、ユニのお腹を触りましょう。』
「ふぇっ?!?!ヴ、ヴァル?!?!」
『ユニが「はぁ…はやく触ってほしいなぁ」と思っていますので。』
「そ、そんなこと思ってない!!…わけじゃないけど、言わなくていいから!って、零断さんも触らないでよぉ〜…」
「可愛い女の子が触ってほしいって言ってるんだからそれに答えるのが男ってもんだろ?」
「それ、零断さんがいうとえっちっぽくなります。」
「ぷえ〜」
「な、何ですかその反応…」
「ま、それはさておき、ユニのお腹を撫でてる間にヴァルは色々調べるんだろ?」
『無論ですね。とりあえず右足を見せてください。』
「了解。」
はぁ…2人に置いてかれた…けど、零断さんの撫でが気持ちよくて…あ、これ寝ちゃうやつだ…
ビリビリビリビリ!
「はぅあ!?!?」
「あ、すまん。左手に頬ずりしながら夢の世界に飛び立とうとしてるユニが可愛かったから電撃流しちゃった。」
「それっ!意味わからないっ!おかしいです!」
『まずまず寝るユニが悪いので関係ありません。』
「うぐっ、」
「まぁ今からが本番だからいいだろ。」
『まぁそうですね。』
「本番?」
「ああ。今から龍化するんだよ。」
「そういうことですか…危険はないんですよね?」
「全くもってないよ。簡単に言えばユニが妖精化するのと同じだし。」
「それは、そうだけど…」
それでも心配…という表情を見せていたら零断さんがポンっと頭に手を置いてくれた。
「安心しろ。もうユニを恐怖させたりしないから。」
っ、!そう言われて気づきました。
私は体を震わせていたみたい。あぁ、やっぱりトラウマになってるんだなぁって自分でも思う。もうみんなを失うのが怖い。
零断さんはその私のトラウマに気づいているみたい。本当に凄い人だよなぁ。
「なら、今私にキスしてくれたらいいですよ?」
わ、私何言ってるの?!?!
「はは、確かユニが恐怖に溺れてた時もキスで目覚めさせたよな。」
「んっ、!」
た、躊躇いなくキスしてきてくれた…!なんかぼーっとするなぁ〜
「これでいいか?」
「ふぁぇ〜」
「おーいユニさーん」
ああ、なんか頬が痛い…って、あれ?私何してたんだっけ?
「零断さん痛いですぅ〜」
「お、気づいた。んで、あれで良かったか?」
あ、そうだ!キスしてくれたんだった!
「はいっ!ありがとうございます!!」
「よし。じゃあやるか。」
零断さんが掛け声をかけた後、零断さんの周りはすごく不思議な空気になっていた。
『これが…波動…ですか。そして、これが龍の力…』
あぁ、これが零断さんの使う波動なんだ。
自然に心が安心して、心地いい。
「もうそろそろか…うっくっ、!」
「っ、!零断さん?!?!」
「大丈夫、だ。ふぅ。」
そろそろと言われ、零断さんの右足を見てみると丁度光り始めていた。
右足は青色の光に包まれ、形が変化する。そして、その変化と同時に零断さんから苦悶の声が聞こえる。
つい反射的に反応してしまったが、痛みはすぐに引いたらしい。
「もう…心配かけさせないでください。」
「いや、多少は良くないか?死にゃしないんだし。」
「それでも少しは痛いとかなんとかくらい言ってください!」
「ごめんな。」
「あ、頭撫でればなんでもいいと思ってませんか?」
そういうと零断さんはいたずらな顔を浮かべて
「思ってるよ。」
「もう!私はそんなに軽い女ではないです!今回は許しませんよ!」
結果的に求めてしまうのは私の方なのに私、何言ってるんだろう…
それに対して零断さんは しょうがないな という顔をして
「なら、ユニを波動で包んであげるよ。じっとしててね。」
と言ってくれた。
「波動で包む?どういうことですか?」
「簡単に言えば眷属…じゃないな。俺の保護下に置くことができるようになるんだよ。ただし、これには相手の信用がないと無理だ。」
「なぜです?」
「ユニは自分の体を信用できない人に知られて嬉しいか?」
私は首をブンブン横にふる。
「え、でもそれをしたら零断さんは私のことをいつでもわかるようになるんですか?」
「包む時だけだよ。ちなみに風雅はこれをもうやってるよ。まぁこれをしたから風雅は変異種になったんだけどね。あの時は包み込んだ後、何重にも俺の魔力と波動で囲んだから運良く変異種になっただけだからユニが波動を使えるようになる可能性は限りなくゼロに近いから。」
『いえ、ゼロです。人間に変異種はないですから。』
つまり、波動の加護ができるという意味ですか。
もう少し詳しく聞いたところ、防御力が上がったり、私に何かあった時にわかるようになるみたい。
これをするのは本当に受け入れた人だけらしい。これも波動の龍が言っていたこと。
なら、私は零断さんに受け入れられたってこと…になるのかな?なるよね!うん!ならもちろん!
「是非お願いします!!」
「了解。なら、効率を上げるためにある行動をするけどいい?」
「何をするのですか?」
「抱きしめあってキスかな。」
れ、零断さんさりげなく難易度高いことを言った!!
「は、恥ずかしいですけど…ヴ、ヴァルは戻ってください!」
『わかりました。戻ってもどうなるかはわかりますけどね。』
あうぅ…
「それじゃあ、ほい。」
零断さんが両手を開いて抱きつくように促してくる。
そ、そんな格好されちゃ断れない!!
私は勢いよく抱きついてそのままキスをする。
目の前には零断さんの目がある…!あ、頭撫でならが抱きしめて…!
すると、私の周りにさっき感じた波動が付いているのに気付いた。
そこから中に入り込んでくる感覚がする。
「ん、んーーーっ、!!!」
零断さんは異物が入り込んでくる嫌悪感がするかもと言っていましたが、そんなことはなく、逆に快感が襲ってきました。
私はその感覚に耐えられず零断さんをさらに強く抱きしめ、零断さんの唇に舌を入れ、股を擦り付けちゃいます。
零断さんは驚きながらも受け入れてくれました。
この抱き合いながらキスをしている時間は今まで生きてきた中で1番の幸福の時間かもしれないなぁ〜
そんな時間も長くは続かず、5分くらい経つと体の全てが包まれた感覚になりました。そして、芯まで届くと、零断さんをより近く感じることができました。
零断さんはやることは終わったと口を離そうとしましたが、私はまだ味わいたいので離されないように頭を抱えてキスを続けます。
零断さんはまたもや驚いた様子でしたが、やっぱり受け入れてくれて、さらに長い間キスをしました。
さらに10分経ったくらいかな?私から口を離しました。しかし、零断さんの頭を抱えたまま。
「零断さん。責任、取ってください。この状態でみんなの前に行くなんて無理ですよ?」
「……なんでそうなった。」
「零断さんのせいですよ?」
私は零断さんを押し倒しました。
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この日は人生で絶対に忘れられない日となりました。