表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波動の龍者  作者: ケイマ
第2章
46/81

ユニの妖精

私が目覚めてから約1時間ほど経った頃。風雅が偵察から戻ってきた。

風雅の言葉をクラウドに翻訳してもらって報告を受けると、周りには全く気配がないらしい。けど、多分隠れてるだけだよね。できるだけ見つからないようにしないと。


「ふぅ。みんなの様子も見終わったしとりあえずご飯かな。」


アイテムボックスから白米と魔物の肉を取り出して調理する。

そういえば零断さんが焼いてくれる魔物の肉は美味しいけど私が焼いてもあまり美味しくならないんだった…

お肉は零断さんに任せよう。

私は白米と少し卵を炒めようかな。



はぁ…やること終わっちゃった…

ご飯はアイテムボックスに入れちゃったからもう別に何もしなくていいからなぁ〜…


私はボォ〜っと視線を泳がす。

視線の先には零断さん。体のあちこちに包帯をつけてるけど一部、左脇腹と右肩は空いている。そこには不思議な傷跡。切られたというのはわかるけど自然に治ったというより無理やり直された感じがする。この傷は今日零断さんが寝ている間に気づいたので零断さんに何があったのかはわからない。けど、やっぱり普通じゃないことがあったのはわかる。だって零断さんの世界は平和って言っていたから。

まずまず魔物がいないから人間同士の戦争しか起こらないらしい。魔法もないなんて不便そうだな…

けど、その中で零断さんはこんな傷を…

ダメダメっ!わからないことを何回も考えてもただループするだけ!


はぁ…ついついそんなため息をついてしまいながらこれからを考える。


多分まだ私たちのこと探してるよね。とりあえず見つかったら何もできないから零断さんの回復を待たないと。まだ誰もあの人たちと戦えるほど強くないから…せめて私だけでも戦えたら違かったのに…はぁ…


やっぱりネガティヴな方向へ考えがいってしまう。


もしこのままあの人達がきたら…もう…


ユニの考えを肯定するような静けさの中、ひしひしと時間は過ぎていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


洞窟の中で聞こえる微かな足音でユニはハッと顔を上げる。

かれこれ数時間思想の中に囚われていたユニは周りを見る。

その周りには、目を閉じて、子供達を守るように丸くなっているクラウドとその中にいる子供達。そして、包帯を巻かれた零断がいた。

おそらく風雅は見回りに行ったのだろうと思い、自分も外を覗きに行く。

しかし、その行動は凶と出てしまった。

風雅が張っている隠蔽は現在見回りに行っているので範囲は小さくなっている。風雅がいる場合は洞窟全部範囲内なのだが、外にいる場合は自分の隠蔽をしないといけないので今零断達がいる部分だけになるのだ。

このことをユニは知らない。

そうなるとこうなるのは必然的だったのかもしれない。

風雅が足音を立てないことや今起きてるのは自分だけということを思想に入り過ぎて忘れていたというのも大きな理由になるだろう。


ユニは洞窟の入り口近くまでくると不意に両手を掴まれた。

反射的に振りほどこうとするが口にハンカチを当てられまともに声を出せない。そして、背後から出てきた男が話しかけてくる。


「やっぱりここかぁ〜。半日以上探しても見つからなかったからおそらくどこかの洞窟に隠れてると思ってたけど。」


「〜〜、!!」


「そんなに騒がないでよ。ん?君可愛いね。俺の好みのタイプにジャストミートだよ。」


背後から出てきた男…スカルプはユニに欲望に満ちた視線を送る。

その視線に対してユニは恐怖に体を震わせる。

その反応が心地いいからかスカルプはニヤニヤとしながら舐めるようにいやらしい目線でユニを見る。


「ん〜こんな可愛い子があのクソ野郎のところにいるなんてもったいないにもほどがある!君。今すぐ俺のものにならないか?」


ユニは全力で首を横に降る。その反応が欲望心を掻き立てるのかさらにニヤニヤとした表情でユニの体を触る。

体に触られた途端、ユニにはものすごい不快感などが押し寄せてきた。


【いや、いや!なんで!何度こんな人に触られないといけないの!】


ユニはできる限り暴れようとするが、実力差は明らかだ。それでも足掻くユニにスカルプがある提案をする。


「そうだな。しっかりと君を屈服させるためにこう言うのはどうかな?

君が俺のものになれば子供達は奴隷じゃなくて普通の子供として王国の孤児院に入れてあげよう。」


その言葉にユニは体の抵抗を弱くしてしまう。


自分が我慢をすれば他のみんなは助かるのではないのか?


と。しかし


「あ、けど、あのゼロは殺すから。あいつだけは殺す。絶対にね。」


この言葉を聞いた瞬間、ユニはまた抵抗を始める。

今まで助けてくれた零断を見殺しにして自分たち…正確にはユニ以外の子供たちが助かるなんて認められないのだ。


「うーんそっか。君はあのクソ野郎のことを大事に思ってるんだね。なら、まずあいつを殺そうか。そうしたら君の考えも変わるかもしれないしね。」


そう言ってスカルプはその場にいる暗殺者を連れて洞窟の中に入って行く。

洞窟は意外と奥が深い。ゆっくりと歩いていけば一番奥にいる零断達の場所に15分くらいかかるだろう。地面が平らなら早いが、非常にデコボコしていて、所々に大きな岩があり乗り越えないといけないのだ。

早く進もうとすれば数分もかからずに奥までつけるが、スカルプは時間をかける。それはユニにもうすぐ心の拠り所にしていた人が殺されると実感させて心を折るためだ。

スカルプはユニの心を折り、自分を心の拠り所に変え、完全に屈服させるつもりなのだ。

実際、ユニは零断を心の拠り所ではなく恋愛対象としてみているので屈服ではなく自暴自棄になる可能性が高いが、そんなことは知らないスカルプには予想もできないことだ。




スカルプ達がゆっくりと歩いている中、1人の暗殺者に捕まって身動きが取れない状態で運ばれてるユニは自分の無力さに絶望していた。


【私が動かなければこんなことにはならなかったのに…】


【私は零断さんの役に立ちたかっただけ…】


【何を考えていたの?私は。少し考えればわかることなのに…】


《本当に馬鹿なのね。》


【うん…私は…何もできない…力もない…一つに定まった心もない…何もない…】


不思議と頭の中に響いた言葉。しかし、ユニはそれを肯定する。自分自身がそう言っているように感じたからだ。


《そう。貴女には何もない。弱いだけのただの少女。そんなただの女の子が自分の力を過信したらどうなると思う?》


【…】


《そう。こうなる。全てを失う。好きな人の邪魔をして好きな人の目的を達成させないで死なせてしまう。》


一言一言に重みがあり、ユニの心に刺さって行く。


《貴女は死なないでしょうね。いや、相当いい人生を送れるでしょう。強い男に好かれ、何もない貴女はその男を拠り所にする。》


【…ぜ……】


《どうしたのかしら?ああ。諦めてしまったの?》


ユニの心に響く声はユニをどんどん落として行く。そんな中、ユニは言葉をつぶやく。


【…なぜ……私は…弱いの……?】


《それは貴女に何もないから。だからこうなる。好きな人。いえ、好きだと思ってた人は殺されて新たに好きだと思う人ができる。そうね。貴女達を襲っているリーダーでしょう。》


その言葉にユニの心は反応する。


【好きだと思ってた人?】


【違う…そんなんじゃない…】


【思ってたんじゃない。好き。恋をしてる。私は。】


《それが偽り。すぐに消える感情。》


【違う。絶対に。消えない…この気持ちは!私のこの気持ちは絶対に変わらない!たとえその人がいなくなってもしても!】


そしてユニはようやく自覚をした。自分が零断のことを好きだということに。

そして、この感情は偽りではなくなった。

本当に好きな気持ち。そのためには何もかもを捨てられるほどの気持ち。

その気持ちが芽吹くのは人それぞれだ。人を好きになるときに芽吹くこともあり、戦うことで芽吹くこともある。

そして、この感情はユニに眠る一つの力を呼び起こす。





次の瞬間にはユニは真っ白い空間の中にいた。


【神職を決める時の感覚に似ている…?けど、ちょっと違うような…わからないけど…】


ユニは周りを見渡す。すると、真後ろに騎士姿の女性を見つけた。

ユニが女騎士を視認すると女騎士が話しかける。


「貴女がここに来るのは随分と先…いえ、延々にこないとさえ思っていましたが、予想外でしたね。」


女騎士はユニにそう言葉をかける。


「あなたは?」


「私は…そうですね。ヴァルと名乗りましょうか。あなたに眠っている妖精の1人です。」


女騎士…改めてヴァルはそういうと背中に透明な蝶のような羽を出す。これで誰が見ても妖精だと思うだろう。


「あなたが現れた理由はなんですか?私に力を与えるためですか?それとも私の心を折るためですか?」


ユニは自分でも驚くほど冷静に状況を判断して質問する。ヴァルはそんなユニの様子に多少目を貼りながらも淡々と説明する。


「心を折るためではないですね。」


「なら、力をくれるんですか?あの人達に対抗できる力を。」


「私は妖精です。認めた者に力を与えましょう。しかし、私は貴女のことをまだ認めていません。」


「なら何を示せば良いですか?」


「心です。貴女の感情はどれだけ本気なのか。それですね。

ユニ。なぜ力が欲しい?」


「みんなを守るためです。」


「自分でそれが偽りだと気づいているのでしょう?本当は?」


見透かされたかのようにユニの最初の発言は切られた。しかし、ユニもそれは当然だろうとばかりに心からの理由を言う。


「こんなんじゃ零断さんと対等になんて立てない。零断さんを好きになる資格もない。そして今。力がないと零断さんの隣にいることすらできなくなる。そんなの嫌に決まっている。なら、どうするか。そんなの子供に聞いてもわかることだよ。この状況を覆らせられる力を入れてに入れること。それが理由だよ。」


ヴァルとの本当の話し合いになってからユニの口調も変わる。デスマス調からいつも子供達に接している時の口調になる。変えたことでユニの本当の気持ちをさらに表している。


「それはただの偽りと言っているのですよ?」


「本当にそう思う?貴女…ううん。ヴァルは私の感情がわかるんでしょ?なら理解できるんじゃないかな?」


「…ははっ、そうですね。貴女は変わりましたね。その気持ちを自覚しただけで。」


「自分の心に嘘をつかないのは難しいと思う。けど、それができるようになったからこそ、ヴァルとここで話せるんでしょ?そして、ヴァルとの対面は最後のチェック的な感じかな?」


「まさにその通りです。立派になりましたね。

“感情を司る妖精。ヴァル。ここにユニを主人と認め、尽くします。”」


その言葉をヴァルがいうことでユニに新たな力が湧く。

新たな妖精、ヴァルを呼び出せるようになったのだ。そして、ヴァルはユニを認めて覚醒した妖精。つまり、ユニとの信頼は明らかである。そして、ヴァルの強さは妖精化によって出される。

この後少しで零断が殺されてしまうかもしれない状況でユニは妖精化の力に目覚めたのだ。


「ヴァル。ここはどこなの?」


ユニはずっと気になっていたことを尋ねる。神職を決めた時に似ているがそうなった場合時間が早く進むため、こんな長時間話していた場合何日後担っているかわからないからだ。


「ここは域です。おそらく神職を決める時に感じたのと似ているでしょう。あれも域です。しかし、今いる域は長い時間を短くするのではなく短い時間を長くなるようになっています。なので域を出ても1分立っているかどうかというところでしょう。」


「なら、この域を意図的に発動させることはできる?」


「それはできません。今回のように妖精などの特別な力に覚醒する時に起きる現象なので意図的には難しいでしょう。」


「そっか…」


この域をいつでも使えたら相当強い力になるとユニは思ったがやはり無理だった。

その後もユニは質問を続ける。


「ヴァル以外に目覚めてない妖精はどのくらいいる?」


「おそらく後2体です。」


「条件とかは?今目覚めさせられるのはある?」


「今覚醒させられる妖精はいません。」


ヴァルは1度目を瞑り、鋭い眼差しでユニを見る。その目を見てユニも今から大事なことを話すと理解した。


「もともと、ユニに眠っていた妖精は4体。ピクシーと私、あと眠っている2体です。」


「ゴルとクラウドは?」


「あの2体はおそらく殿方の力が無意識に呼び起こしたのでしょう。妖精は様々なところにいます。ゴルとクラウドはユニが神職を手に入れた時に近くにいて、覚醒できる状態だったからでしょうね。」


「そういうことだったんだ…」


「そして、現在眠っている二体は私の姉妹に当たる者です。」


「え?どういうこと?」


「深くは説明できません。簡単にいうと、私が感情、他の二体が力と魔力を示しています。」


「…つまり、もっと強くなって、もっと魔法ができるようになればさらに二体を呼び起こせると。」


「そうです。」


そして、ヴァルはもう一度目を瞑り、優しい表情に戻る。


「さぁ、もうそろそろ時間です。少し長話をしたので数分経っているかもしれません。戻れば私の呼び出し方などはわかると思います。」


「わかったよ。じゃあ、よろしくね?」


「こちらこそ。」


ユニは目を瞑って白い空間を出た。






中途半端な場所ですみません!8月はおそらく短めで中途半端に終わる可能性が高いでしょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ