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波動の龍者  作者: ケイマ
第2章
39/81

契約

その後、無事にチャマとムペの神職を決めた。

やはり予想通り、チャマは水精霊使いでムペは土精霊使いだった。

全員の神職が決まった次の日。零断達は山を大きく上がることにした。

ペース配分だが、零断は1日で大きく上がり、6日間休むというスローペースで進むことにした。

これは子供達の体力的な問題もあるが、神職の魔法を使いこなすための時間が欲しいというのもあった。

山脈の上の方へ行くと魔物も強くなり、思わぬ事態になるかもしれない。そういう時に各自に対応できる方が死ぬ確率も減り、安全だからだ。

そして今。絶賛急坂を高速で登り中の一行であった。


「…それにしても零断さん。よくこの坂をクラウドと同じ速さで2人背負いながら走れますね…」


「まぁ魔法使ってるしな。」


「いやいや。魔法使ってても精霊より早く動くのは相当難しいと思いますよ。」


「クロノも雷精霊を使うならいずれできるようになる。」


「それは今雷魔法を使っているんですか?」


「ああ。ライトニングムーブという魔法だ。」


「どのような原理で?」


と、零断とクロノが雷魔法について話す。

先日のことがあってからクロノは零断への警戒を1段階下げたようだ。よってこのような会話もできるようになっていた。

ちなみに零断が背負っているのはティアとマサで、他は全員クラウドに乗っている。

クラウドは地面を走っているように見えるが、実際は浮いている。なので重さとかはあまり関係ない。

零断も零断でエレキトルムーブで浮いているのでどっちも疲れないのが現状だ。

だからと言って馬に乗るのは疲れるし、1日中同じ体制というのも辛い。

子供達の体力はだんだん削られて行くのも当然だった。


「ティアね!早く自分で速く走れるようになりたいの!風に乗ってビューんッ!って!」


「そうだね。ティアの風精霊ならすぐにできるようになると思うよ。」


「…結果的に走ることになりそうなのはティアとクロノ。」


「そうですね。なるべく零断への負担を減らさないといけないと思うしね。」


「うーん。そうだね。そうなるとムペはユニと一緒がいいだろうし、チャマ的にも零断さんに背おられるよりクラウドに乗った方が良いだろうし結果的に僕は零断さんの背中かな?」


「ああ。けどそんな簡単にティアとクロノが走れるようにはならんがな。」


「えぇー!!すぐに走れるようにならないの?」


「そりゃそうですよ。まずまず魔力が足りませんし、精霊達に頼まないといけないですしね。」


「えぇ〜!速く走りたいよ!!」


「やり方を明日から教えるから安心しろ。」


「は〜い!」


とりあえず、走りたがっているティアを落ち着かせる。そこでユニが気になっていたことを言い出す。


「それにしても…何故私たちは全員個人職使いだったのでしょうか…?」


「確かに今までスルーしてきましたがそこはかなり大事ですね。」


「零断さんは何か知ってます?」


わからないことがあったら年長者に聞く。という流れで子供達全員は零断に意識を向ける。

この質問はクラウド的にも興味があるようで耳を動かして聞く準備をしている。


「情報はないな。けど、予想はついている。」


「予想…ですか?」


「ああ。まぁあっているかはわからないがな。」


「…その予想を聞きたい。」


「まず、盗賊に何らかの神職を見る魔法具があるとする。普通そんな魔法具ないだろうが、王国と深く繋がってるであろうあの盗賊だ。ある可能性の方が高い。そして、捕まえた子供の中に個人職持ちを見つけ、絶対にバレないような場所。つまり、」


「私達が捕らえられていた場所に集めるということですか…」


「ああ。あと、あの場所には精霊使いだけが集められている可能性もある。精霊を見えるか見えないかは相当魔法の腕が立つ奴がよくよく観察すればわかることだからな。精霊使いが必ず個人職とは限らない。普通の神職で精霊が見えるやつもいるからな。」


「…私も同意見です。さすがに奴隷を集めてそれが偶然というのは考えにくいですしね。」


今まで黙っていたクラウドが話に参加する。

子供達から見て年長の2人(1人と1体)の意見があったことで全員この2つのどちらかという考えにまとまったようだ。


【それにしても俺はよく個人職の奴に出会うな。まぁ、偶然か。】


零断は今日中に少しでも上に上がるために足を早めるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日。やはり疲れ切ったのかユニ以外の子供達は全員爆睡していた。

ユニは自分の精霊なのであまり疲れなかったようだ。

というわけで相変わらず朝の早い零断とそれに合わせたのかだんだん起きるのが速くなってきているユニが適当な雑談をしていた。


「零断さん!今日から私たちに何を教えてくれるんですか?」


ちなみにユニもクロノも敬語じゃなくて良いと言ったが、結果的に敬語で収まったようだった。


「ユニだけに先に教えたらみんなに卑怯だろ。」


「あ、確かにそうですね…みんな早く起きないかなぁ〜!」


この反応に零断は少し笑みを浮かべる。

ユニはいつも子供達の前ではお姉さんという雰囲気をもたせてみんなを引っ張っている。

しかし、零断の前では年相応の反応をする。それが零断は少し嬉しかったのだ。

大人ぶっているだけじゃ成長はしない。自分がそうであったように。


「話変わりますけど、この辺って魔物が多いんですよね?」


「ああ。」


「なら何故全然魔物と遭遇しないのでしょうか?まだ零断さんと行動してから一度しか会ってませんよね?零断さんなにかやってます?」


「…いや、何もやってない。」


【よく考えれば確かに。俺が無意識にオーラを使っているのか?いや、そんなことはない。なら何故?】


零断はそこまで考えるととりあえず索敵を開始する。いつも以上に細かく周りを感じる。


「零断さん?…あ、すみません。」


ユニも何をしているか察したようで静かにした。

すると、左斜め上方面に魔物を見つけた。


【いや、何かおかしい。何故1体しかいないのに戦っているんだ?】


零断の索敵には魔物一体しか見えないのだが、その魔物は何かと戦っているのだ。


【ちょっと待て。あれは…波動?何故波動があの魔物と戦っているんだ?】


そう。魔物と戦っていたのは零断が持っている“波動”だったのだ。さすがに零断も動揺する。

その動揺を見ていたユニも何かあったのかと心配になり、


「どうしたんですか?何か問題が?」


「確認したい。ユニ、マサを起こしてきてくれ。」


「わかりました。」


ユニはマサを呼びに行くためにみんなが寝ている場所へ向かう。

その間に“波動”は魔物を倒してこちらに戻ってくる。そのスピードも零断のライトニングムーブと同じくらい早い。

ユニが帰ってくることにはもう近くに来てしまっていた。


「零断さん!連れて来ました!」


「時間がない。マサ、みんなを頼む。ユニ、俺についてこい。行くぞ!」


「というわけでマサよろしくね!ってキャッ!」


「何が何かわからないけど頼まれました!」


零断は“波動”が自分たちに接触する直前にユニを担いで移動する。

零断が移動したことで“波動”は減速した。そして零断を周りように大回りする。

零断もそれに合わせて横にずれる。

そして“波動”はそこに止まった。

それは零断には


『こっちにこい。』


と言われてるような感じがした。

零断は“波動”がいる場所へ向かう。


「零断さん。どこへ向かっているのですか?」


「違和感がある場所だ。」


「…それって危なくないですか?」


「まぁな。」


そう言って零断は少しペースを上げて歩く。ユニは不安に思いながらも零断について行く。

数分歩くと“波動”がある場所へ着いた。


「あれは…」


「狼?」


そこにいたのは白き狼だった。

白き狼は零断へ歩く。

そして、零断の足元に来るとその場に座って


「ワン!」


と吠えた。

ユニは何が言いたいかわからなかったようだ。

しかし、零断にはしっかりとわかった。


「お前は…あの時の…?」


「ワン!」


「俺を追って来てたのか?」


「ワン!」


「ははは。そういうことか。お前変異種になったのか。俺の波動のせいで。」


「ワン!」


零断の足元に座っている白き狼は昔と明らかに姿が変わっていた。

大きさは簡単にいうとゴールデンレトリバーくらいだろう。前はあまり長くなかった毛が、長く綺麗な白い毛になっていた。

そして、頭にアホ毛のような緑色の毛が立っていた。

明らかに零断が助けた時と雰囲気が違っていた。

なぜ零断があの時助けた白い狼だとわかったかというと、白き狼が念話のようなものを零断に使ったからだ。だから零断には言ったことはわからないが言いたいことはわかった。

ユニは全く内容がつかめないのでぽかーんとしている。


「それで、お前はこれからどうする?」


「わん!」


「まぁそうだろうな。けど、その前に質問だ。なぜ隠れていた?」


「クゥーン…」


「…そうか。わかった。」


「って何がわかったんですか!?!?」


白き狼がクゥーンとしか言っていないのにわかったという零断についにユニがツッコミを入れる。


「あとでみんなにも話すからその時な。」


「うぅ〜…分かりました…」


ユニが凄く悲しそうにする。零断はその表情を見て少しため息をつく。


「簡単にいうと俺が昔助けたやつが俺のことを見つからないように助けてくれていたってことだ。」


そして結果的にユニに軽く話す。ユニ以外には厳しいのにユニに対してだけはなぜか甘くなってしまう零断。


「そういうことですか。なら同じですね!よろしくお願いします!」


「ワオン!」


おそらく助けられたことが同じということでユニが白き狼を撫で回す。白き狼はまんざらでもないようで気持ちいいのか く〜ん と鳴きながらされるがままになっている。


「あ、零断さん!この子の名前なんですか?」


「名前か…」


「え、なんで考えてるんです?」


「いや、だって名前ないし。」


「え?!?!ということはこの子って誰かが手懐けて契約した魔物じゃないんですか?」


「ああ。」


「…なんでこんなに大人しいんですか?普通を人襲うのに…」


「まずまず俺の波動を受け継いだことで知能が上がったんだろうな。あと早く契約したそうだし。」


「ワン!」


「ユニ。契約ってどうやるかわかるか?」


「あ、はい。確かこの場合、その魔物と魔力を交換すればいいはずです。それか契約用の魔法陣を作るかですね。」


後に言った契約用の魔法陣を使うのは瀕死状態まで魔物をした後に仲間にするために使う方法だ。と言っても効率が悪いので基本討伐している人が多い。

今零断がやろうとしている契約はしっかり人間の言葉を理解することができる知能を持っていることが条件なので滅多にされない。

また、知能を持つ魔物は基本人間と行動したがらないので本当に稀なのである。


「それじゃあやるか。」


「オン!」


「…どうやって魔力を交換するんだ?」


「…零断さんって意外と天然?」


「…ノーコメントで。んでどうやるんだ?」


「うーん…魔力の塊を相手に食べさせちゃえばいいんじゃないですかね?」


「よしやるか。」


零断はおにぎりサイズの魔力の玉をつくる。

白き狼も同じようにつくる。


「よし。いただきます。」


「ワオン」


2人(1人と1匹)は同時に魔力の玉を食べた。すると、零断から魔力の線が出て来た。同じく白き狼からも出て来ている。

そしてその線が繋がるとその線は消えた。


「ワオン!」


「おお。すごいな。ここまで変わるとは」


「何が変わったんですか?」


見た目何も変わっていないのでユニがどうなったかを聞く。


「まずこいつが言いたいことがもっとわかるようになった。あと、魔力をやり取りできるな。プラスなんとなくだがこいつがどこにいるかがわかるようになった。」


「おん!」


「それは結構地味なんじゃ…」


「いや、こいつの魔力俺と同じくらいだし、離れてても意思疎通がある程度できるから逸れても安心になる。それに一心一体になってるからコンビネーションとか練習しなくても完璧。」


「うーん…」


ユニにはその強さがピンとこなかったようだ。

ちなみにここまで契約したことで使うことができるのは白き狼が零断のことを認め、信頼しているからだ。普通こうはならない。

できてどこにいるかを確認できるくらいだ。

魔力共有なんてできたことがある人などいないだろう。


「まぁ、早く詳しいことを聞きたいので帰りましょう!マサも緊張して待っていると思うし!」


「ああ。」


「…く〜ん」


「ん?ああ。名前か。」


「あー!そういえばそれを聞いてたんだった!零断さん!いい案を!」


「…俺が?このネーミングセンスナッシングで単純すぎと言われ続けて来た俺がか?」


「そこまで言われてるんですか…というか零断さん今日やけに饒舌ですね。」


「…元々はよく話してたからな。少し気分が浮いていたからかな。」


「けど、零断さん。話してた方が接しやすくて良いですよ?」


「…今はまだ今まで通りになるのは無理だ。割り切っていたとしても精神的に、な。」


「わかりました!なら、零断さんが今まで通りになれるようになるべくフォローしますね!」


「ああ。頼む。」


「クゥーン…」


「あ、そうだ。この子の名前だよね。」


また別の方向へ行きそうになった零断とユニを白き狼が戻す。


「そうなると私が考えるしかないですよね…どうしましょうか…どんな魔法を使うんですか?」


「基本風の魔法だな。あと、爪とかで戦ってたな。」


「うーん…ならウィンドウルフとか?」


「それ、俺よりネーミングセンスないぞ。」


「うぐっ、!零断さんに言われるとすごく傷つきます…」


「ユニは置いておくとして、」


「置いておかないでください!」


「なら風雅はどうだ?」


「うぅ…無視された…」


「ワオン!!」


ユニが落ち込んでいるが零断はサクッと無視して白き狼の名前を決める。

白き狼も気に入ったようだ。


「よし。じゃあ風雅。帰るか。」


「おん!」


「零断さん…本当に無視しないでください…」


ユニが泣きそうな声で零断にお願いする。

零断はそれに対して子供達に見せたことのない笑みを浮かべてユニの頭を撫でながら謝る。


「ごめんな。もうしないよ。」


その言葉、その表情、そして撫でられている手の感触にユニはドキッとしてしまった。

いつもとんがっている口調の零断が優しい声で、今まで見せたことないような笑みを浮かべて優しく撫でている。

そう思うだけでユニの心がドクドクとなる。


「え、あ…その…」


ユニは顔を真っ赤にして口をパクパクしている。

零断はその反応を見ていたずら心が湧き出てくる。


「え、ちょっ!零断さん!?!?」


零断はユニを後ろから軽く抱きしめて髪をクシャクシャにするかのように撫でる。

ユニはさらに慌てて手をワタワタしてどうにかしようとする。

その反応を見て零断はついつい言葉を漏らしてしまった。


「ユニ…可愛いな。」


「え!いや、えぇ!?!?あの、その…へ?」


ユニの頭はさらにオーバーヒートしてしまう。

零断はもうそろそろ良いかなと思いユニを離して歩き出そうとする。

しかし、そこでユニが謎な行動をとる。

零断に抱きついたのだ。


「…ユニ?」


「ふえ?って、私なにやってるの〜!!」


ユニも反射的行動だったのかわからないが抱きついたのはわざとではないらしく自分が零断に抱きついたと認識した直後、零断からパッと離れて頭を抱えて悶えた。

零断は結果的にユニが自分の世界から帰ってくるまで少し待ってから少し顔を赤くしているユニと零断のそばから離れない風雅を連れて子供達がいる場所へ帰って行った。






ついに白い狼が仲間になりました!

もう狼はペットで外せないです笑

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