表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波動の龍者  作者: ケイマ
第2章
37/81

妖精と精霊

夜が明け、零断は早速儀式の準備をする。

子供達はまだ寝ている。まずまず零断が早起きすぎると言うのもある。

と言っても儀式は基本大量の魔力と決められた言葉を発するだけでいいのでやることなんてないのだが。

自分の魔力の循環を確認してから暇になったので魔法の練習をする。

手の中でバチバチと雷が出る。このくらいなら無詠唱でできるようになっていた。

魔力を支配できるようになったのが大きいのだろう。

それから数十分後、ユニが降りてきた。


「ふぁぁ〜。おはようございます。」


「ああ。おはよう。」


零断はチラッとユニを見てからまた魔法の訓練に戻る。

ユニは零断に近寄り魔法の訓練をじっと見つめる。

別に問題ないのだが、魔法の練習を見ててもあまり面白くないだろうになぜこんなにじっと見つめるのかが気になり、質問する。


「そんなに面白いものじゃないだろう。」


「え?」


いきなり話しかけられたので驚くユニ。

ユニは零断のことを必要なこと以外喋らない人だと思っていたのでこう言うことで話しかけられるとは思ってなかったようだ。

零断は無言でユニの返事を待つ。


「そんなことないです。すごい魔力が練られていて綺麗です。」


「…魔力を見えるのか?」


神職を持っていたらその神職の訓練をして魔力を感じることはできるだろうが、見るのはほとんどの人はできない。

零断も見るのではなく感じているのだ。


「見えてると言うんですかね…黄色の光が見えて、それが零断さんの魔力ってことはわかりました。」


「…そうか。」


零断は魔法の練習を終えて立ち上がる。

ユニは零断につられて立ち上がる。


「ユニ。先に神職決めるぞ。壇上に立て。」


「え。あ、はい!わかりました!」


ユニは側から見ても分かるくらいドキドキしながら壇上に上がる。


「あの!零断さん!私は何を選べばいいんですか?」


「自分がやりたい神職に決めろ。変えたいならいつでも変えてやる。やるぞ。」


「はい。わかりました!」


『神よ。この世を見る神よ。このモノに力を与え。世を生き抜かせよ。』


すると空から白く輝いた光の筋がユニに落ちた。

グレンから聞いたところこれで1時間ほど待てば終わるらしい。

取られた魔力は3分の1ほどだ。魔法の練習をすると次からが心配なので零断は朝ごはんを作ることにする。

白飯でいいだろうと思い、ご飯を炊く。ついでに痛んでいたためあまり持ってこれなかった貴重な野菜を添え、もともとアイテムボックスに入っていた卵を焼いて卵焼きにする。

そこまでの作業をしている間子供達は誰も降りてくることはなく、ちょうど1時間経った頃にユニに降っていた光が消える。


「零断さん!終わりました!」


「神職は?」


「“聖妖精使い”になりました!多分個人職です!」


ユニが零断に近寄りながら元気よく言う。

零断は目を大きく開く。が、すぐに優しい顔になる。そしてユニの頭を撫でる。


「あ…」


「っ!ごめん。」


零断は無意識に頭を撫でていた。涼音がよくユニと同じように報告してきたからだ。そう言う時は基本このように頭を撫でていたのだ。

ユニが呆然となっている中、零断は自分がまだあってかは1日しか経っていない女の子の頭を撫でるという失敗を犯したことに気づきすぐに手を引っ込めて謝罪する。


「い、いや!大丈夫です。もっと撫でてくれてもいいんですよ?」


ユニが冗談っぽく言う。

零断はユニの頭をポンっと叩いて


「また機会があったらな。」


と言ってご飯を蒸らしに行った。

残されたユニは


「またの機会を楽しみにしてます。」


と小さく呟いて零断の方へ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーー


あれから1時間経った頃にマサが起きてきた。マサに聞いたところ他の4人はまだ爆睡していて起きる気配もないようだ。

とりあえず3人は朝ごはんを食べ、マサの神職を決める。

そしてまたユニと零断の2人っきりの時間がきた。


「みんな起きてくるの遅いですね。」


「疲れてるんだろう。」


「確かに。牢屋にいた頃はちゃんと寝ることなんてできませんでしたから。」


「ユニは大丈夫なのか?」


「私は大丈夫です。みんなより寝る時間は短くていいですし、零断さんを手伝わないといけませんし。」


「そうか。」


ユニ達は牢屋に入る頃は硬い地面に暑い時も寒い時もそのまま寝ていた。子供はちゃんと寝ることができないだろう。


「零断さんはなんで帝国を目指そうとしているのですか?」


「…すまない」


「あ、いや、無理に教えてもらおうとしてるわけじゃないので。」


「ごめんな。」


「いえ…なら、零断さんはどういう魔法を使っているんですか?」


「魔法は雷魔法。個人職は波動者で波動を使ってる。」


「波動というのはどう言うのなんですか?」


そう聞かれると零断は周りの波動を支配してユニにも見えるようにする。


「わぁ…!綺麗…!」


見えるようにした波動は薄い紫色で光り輝いていた。


「戦闘はいずれ見せる。」


「わかりました!楽しみにしてますね!」


「ユニの個人職は?」


「私のですか。なんて言えばいいのかな…」


零断的には妖精も精霊もあまり大差ないと思っているので、とりあえず精霊魔法を使うだろうと予測する。しかし、零断は精霊魔法を見たことがない。

精霊魔法は希少価値が高いので当然である。


「私の精霊は普通の精霊魔法とは違うみたいなんです。精霊魔法も当然使えるのですが、妖精言うんですかね?様々な妖精を呼び出すことができるみたいです。」


「今はもうできるのか?」


「はい。なんなら呼んでみましょうか?」


「頼む。」


「わかりました!では。『精霊よ汝を求めるものここにあり。その力で我を支えよ。』“ピクシー”』」

ユニが呟くと周囲に光の玉がみえた。それがユニの手のひらに落ちる。すると手のひらサイズの小さな妖精が出てきた。


「お呼びしましたか?ますたー。」


「あなたがピクシー?よろしくね!」


「はい。よろしくお願いします!私はいつもますたーの近くにいるので何かあったらすぐに呼んでください。」


「うん!わかった!あ、じゃあ今他にどんな妖精がいるか教えてくれない?」


「今ますたーの近くにいるのは私と小さな鳥で、いずれ聖鳥となる鳥と、まだ小さいですが、聖なる馬がいます。」


「鳥と馬かぁ〜」


【…鳥ってフェニックスで馬ってユニコーンじゃね?】


そう思っても零断は声を出さない。出してもこのネタが通じるとは思えないし言っても全く意味がないからだ。


「零断さんはどっちがいいと思います?」


「…馬かな。」


移動手段ができて行動が早くなりやすいという観点で零断は馬が良いと言ってみる。ユニはその通りに馬を呼び出すことにした。ちなみに詠唱はほとんど一緒で最後に呼び出す名前を変えるだけである。

早速馬を呼び出す。今現状況だと一種類の妖精しか呼び出せないようだが、どんどん使って妖精を増やし、仲良くなると何匹も一緒に召喚できるようになるようだ。

精霊と妖精を一緒だと思っていた零断。なんとなく内心恥ずかしそうである。


「お呼びでしょうか?」


馬はピクシーとは違い、念話で話すようだ。

零断の波動の念話とはまた少し違った感覚がする。

馬は予想以上に大きく、ユニだったら普通に乗っても違和感がないくらいだ。将来二人乗りするのも夢ではないかもしれない。

全体的に白く、毛並みはすごく綺麗で触り心地が良さそうだ。

頭に一本の角が生えているので日本人が見たら


『あ!ユニコーンだ!』


というだろう。


「あなたが馬だよね?」


「はい。そうです。ユニ様。そちらの方は零断様でよろしいですか?」


「ああ。」


「あなたのおかげでこの方を見つけることができました。ありがとうございます。」


「どういう意味だ?」


いきなり御礼を言われたので理由を聞く零断。


「零断様は不思議な魔法をお使いになられてますよね?」


「ああ。」


「その力の影響でもともとピクシーだけ覚醒するはずだったところを私と彼を覚醒させてくれました。」


「彼は鳥のことか?」


「はい。その通りです。」


「つまり私は零断さんのおかげで普通より多く妖精を召喚できるということ?」


「はい。その通りです。」


「そうだったんですか!零断さん!ありがとうございます!」


「別に何もしてないぞ。」


「それでもです!」


「そうか。よかったな。」


「はい!」


ちなみにどうやって妖精が増えるかというと、それは各地にいる妖精を集めるか自分で目覚めさせるしかないらしい。

自分で目覚めさせるのはほとんど不可能である。かと言ってどこにいるかわからない妖精を探すのもいい策とはいえない。

普通ならば最初のピクシーしか召喚できない弱い職業なのだ。

しかし、これが普通ならば、だ。

ユニはもう三体もの妖精を召喚することができる。しかも、零断という覚醒させられるかもしれない力を持つ者もいる。

この力は周りに恵まれていれば相当強者となる神職だったのだ。

妖精の成長はユニが強くなれば強くなるし、信頼を深めれば強くなる。

結果的に三体全員召喚して見て一番気に入ったのは馬だったので馬は基本召喚状態にすることにした。


「お気に入りにするのはいいけど、なんで私たちずっと馬って呼んでたんだろう…名前つけてあげないと!」


「ユニが考えろ。」


「うーん…何がいいかなぁ〜!零断さん何かいい案あります?」


「白いからクラウドとかは?」


「クラウドってなんですか?」


この世界では通用する英語と通用しない英語がある。そこの判別は謎だ。


「雲っていう意味だ。」


「雲ですか…確かにもふもふしてますもんね〜!決まりです!あなたの名前は“クラウド”です!」


「わかりました。改めてよろしくお願いします。」


「うん!よろしくね!」


「よろしく。」


この後、鳥とピクシーの名前を決めることになった。

鳥は金色の羽をしているため、ゴルと名付けた。

ピクシーは


『ピンク色だしピクシーでよくね?』


という零断が何気なく言ったその言葉がそのまま採用されピクシーとなった。

そこまで決めるとマサに降り注いでいた光が消えた。

マサは生き生きとした雰囲気で零断とユニがいる場所に走ってくる。


「僕の神職決まりました!僕は“炎精霊使い”でした!個人職ですよ!やった!!」


またまた零断は目を見開く。まさかマサまで個人職とは思っていなかったのだ。

零断は拳を前に突き出す。マサはそれに気づいて同じく拳を前に出して零断の拳とぶつける。


「よかったな。」


「はい!」


マサは炎精霊使いなので正真正銘の精霊使いである。


「僕の場合、精霊魔法専用の個人職になったので1体だけ妖精を呼び出せるようです。」


「つまり私より魔法を使えるけど召喚ができないというわけね?」


「うん。まさにその通りだよ。今は一番弱い状態なんだけど、仲良くなったりする強くなることで妖精も強くなるみたいなんだ!」


「妖精の成長の仕方は2人とも同じだな。」


「みたいですね。マサも妖精を召喚して見たら?」


「そうだね。やってみる。

『燃えさかる炎の火種よ。その火を我と共に大きくしようぞ。』“火種”」


そういうとちっちゃな二本足で立っているトラのようなものが出てきた。


「名前が火種って…まだ決めてないってことなの?」


「うん。ユニはどんな名前にしたの?」


「私はクラウドとゴルとピクシーかな。」


ついでに名前の由来も説明する。

マサは顎に手を当てて悩む。こういう名前決めは子供なのでじっくりと悩むようだ。

そしてユニと同じく結果零断に話を振る。


「零断さんは何がいいと思いますか?」


「…イフリートでどうだ?」


もう考えるのがめんどくさくなったので炎の妖精といえばイフリート的なノリで深く考えずに提案してみる。


「イフリートですか。うん。いい名前です。きまりだ。お前は今日からイフリートだ。」


「きゅっ!」


火種改めイフリートはまだ幼いらしく人の言葉をしゃべることはできないようだ。それでもマサは多少言いたいことがわかるらしくうまく触れ合っている。

ユニはユニでクラウドと会話を始めた。

零断は1人暇になったので魔力回復を早めるために少し仮眠を取ろうと思った直後、


「おはよーー!!!!!」


朝から元気いっぱいのティアが起きてきた。


「あ、おはようティア。」


「今日も元気だね。」


「おはよう」


「おはよー!ってあれ?なんか魔物が懐いたの?」


何も警戒せずにクラウドの方へ近づくティア。

ティアはユニから神職の話を聞くと自分も早く知りたいと言い出した。

零断ももう起きた順から神職を決めて行くつもりだったのでそのまま儀式を始めることにした。

ティアに光がかかった後、クロノが次に降りてきた。

零断的には魔力が結構危ないので仮眠をとることにする。

もしものことがあっても零断は起きられるし、クラウドが戦ってくれるだろうから安心だ。

そう思って零断はまだ朝10時くらいなのに仮眠を取り始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ