龍
前の話の終わりが気になると思いましたのでさらに投稿します!
「くそっ!もうすぐ夜が明けちまう!早くしないと!」
零断は今、残り10分の1の距離を通過したくらいの場所にいる。
ここまで4時間ほどでついているので零断がどれだけ本気を出しているかがうかがえる。
零断の足ならば後10分せずにテニラ村へ着くだろう。
零断はさらにスピードを上げた。
そして、遠くに何かを見つけた。
「あそこだ!あと、ちょっと…おい!嘘だろっ?!?!」
その見つけたものは大きく立ち上がる煙であった。つまり、
「テニラ村がもう襲われてるのか!くそっ!もっとはやく!」
限界を突破する勢いで零断は走る。もはや常人には姿が見えないほどの速さだ。
少し走ると建物が見えてくる。が、その建物は赤く燃え上がっていた。
「あと30秒でつく!」
その言葉通り零断は30秒でつくべくスピードを上げる。もはやこの後戦闘になったとしても魔力が残らないほどに。
村につき、慎重に中に入る。そして最初に目に映ったのは紅蓮傭兵団の戦士が串刺しにされているところだった。
「うっ、ぐぅおえォ…」
零断は吐き気を抑えられず軽く吐いてしまう。
「くそ、ごめんな。」
泣きそうになりながら零断は村の中へ入っていく。
盗賊が一番集まりそうなのは村の真ん中の広場だ。そこまでいくのに軽く走っても30秒もかからない。しかし、この短な道で零断は虐殺された男と屈辱的な形にされてから殺されている女を多くみた。
しかしその中にはセリアはいなかった。
「セリアッ!邪魔だ!“バースト”!」
崩れた家のせいで広場が見えない。それを零断は波動弾で吹き飛ばす。そこに見えた光景は。
セリアの胸から剣が突き刺さっているところだった。
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俺はその光景を見た時には周りにいた男の頭を波動弾で吹き飛ばしていた。そしてセリアの隣へ行く。
「セリアッ!ダメだ!逝くな!」
俺はそう叫びながらセリアに刺さっている剣を慎重に抜き、雷魔法でセリアを治療する。
するとセリアが目を開けた。
「セリア!大丈夫か!」
「れ…だん?」
耳を近づけないと聞こえないほどの小さな声だった。
「ああ!俺だ!零断だ!」
俺がそういうとセリアは微笑むと最後の言葉を呟いた。
「零断…あなたに…………よかった…」
そういうとセリアの目から光が消えた。
そう。セリアが死んだのだ。
セリアの体を見てみると、他の女と同じように屈辱的なことをされた後だと気付いた。
そして、最後俺に何かを言っていた。
俺はこう言われたと感じた。
『あなたに会わなければよかった』
と。
広場には俺を逃さないようにするためなのかこの村にいた全ての盗賊が集まっていた。
けど、俺にはそんなことどうでもよかった。
だって愛した人が俺のせいで殺されたんだから。
くそっ!なんで、なんでセリアが死ななきゃいけないんだよ!おかしいだろ!
「まだ生き残りがいたか。良いものを…」
雑音が聞こえてきたから聞こえてきた方に波動弾を撃って殺した。
そして俺は行動に出る。
お前らのせいでセリアは死んだ。なら、お前らが死ぬ覚悟もあるんだよな?
俺はその場で波動を全て解放させた。それだけであいつらは全員尻餅をつき、意識を失いかけている。
動かないならただの的だな。全員死ね。
俺は1人残して他全員を波動弾で撃ち抜いた。
「ひ、ひぃ!」
残った1人は怯えている。そんなこと知るか。俺の質問に答えれば良い。
「テメェらの基地はどこだ」
「ひっ!さ、山脈の麓…」
この盗賊に死を与えるために俺は山脈の麓へ向かった。
〈しかし、零断は気づかなかったが、この行動を見ている者が2つあった。〉
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俺は…今、何をしているんだろう。
何してても良いや。そんなの関係ないし。
もう生きてる意味ない。なんでかわからないけどそう思える。
なら死んじゃっていいかな?どうせ何もしないだろうし。
俺が死んでも誰も傷つかないし。
《本当にそうか?》
ああ。そりゃそうだろ。こんなやつ誰が死んでほしくないと思うんだ?
《なら、なぜお前はそう思う?》
なぜかって?
当たり前だろ。自分が愛していた人を自分のせいで殺したんだからな。
さらにその死ぬ直前に“いなければよかった”って言われたんだぜ?
つまり、守るって言った約束を完全に守らなかったんだよ。
こんなことをしたやつを誰が信用する?
《主ならばその言葉の矛盾に気づいているんだろう?》
矛盾?そんなのないだろ。これが事実だ。
《彼女が本当にああ言ったと思っているのか?》
そりゃそれ以外ないだろ。実際俺に会わなければずっと幸せに暮らせていたんだから
《それは本当の幸せか?》
そりゃ死なないんだからな。
《死ななければいいのか?》
生きていればいずれ何か起きるだろ
《彼女の心は主に会うまで死んでいたのだぞ?》
…
《それを助けた主をなぜ攻める?今まで生きてきた時間の中で一番幸せを感じさせてくれた者をなぜ恨む?》
うるさいっ!お前に何がわかるっ!
俺はそう怒鳴って初めて目を開けた。
そこは何もない白い空間だった。ここには前に来たことがある。そう。神職を決めるときに来た場所だ。
目を前には男が立っていた。
しかし、人ではなかった。
綺麗な紫色の羽を生やし、頭には角を生やしていた。
そして、鱗のついた尻尾。
そう。俺の前にいたのは龍人であった。
《もう一度聞こう。本当に彼女がそう言ったと思うのか?》
そうさ。そうだと思う。だってセリアを殺したのは俺だから。けど。
《ん?》
誰かが…そんなことないと言っているそんな感じがした。
そんなわけない。けど、そう感じた。
《ならばその答えを探すのだ。》
探す?セリアはもう死んだんだぞ!聞けるわけがない!
《貴様は彼女ではなく他の者に言われたと感じたのだろう?ならば、答えは探し出すことができる。》
っ!
《生きていれば。主が先に言った言葉だ。
主よ。生きよ。そうすれば答えは見つかる。》
けど…けど、俺にはもう守りたいものもやりたいこともない。探す方法もわからない。何もできないんだよ。
《確かに今は何もない。全てを奪われたのだからな。しかし、奪われたのはこの世界で得たものだろう?》
…涼音を探せというのか?
《それは自分で決めるべきことだ。我がいうべきことではない。》
涼音を探す当てもない。まずはがむしゃらに生きろってことか。
だが、見つけたとしてどうする。また奪われるだけじゃないのか?
《それは主がどうするかによって全てが決まる。》
俺が…どうするか…
《そうだ。それで全てが決まる。それが人生というものだ。
守るべき者を守るには何が必要だ?》
守るためには…力が必要だ。
《それは単純な力だけでいいのか?》
それだったら今回の二の舞になるだけだ。
《なら他には何が必要だ?》
人に信頼される力。
人を見極める力。
騙され、利用されない力。
権力。
そして、誰にも負けない力。
《ならばそれを手に入れろ。》
ああ。そうだ。そうだな。大切な者を守るための力。それを手に入れるために。
《我は主の力となる。我を使いこなせることができるならば主は神をも超えるであろう。》
…波動の龍…か。これからも手伝ってくれ。
《それが我が選んだ道だ。》
はは。すごい奴に目をつけられたものだ。
俺はこの白い空間を出る。
この世界で見つけた新たな目標のために。
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現在零断がいる場所は盗賊のアジトである。
あの日、零断はこの盗賊のアジトに来て全員を殺した。
そして、零断はギルドの壁に寄りかかりながら3日間何もせずにただ眠っていたのだ。
そして今、零断が目を覚ました。
零断は無言で食料がある場所を索敵して食べる。
食べ終わると次は盗んだ物などが置いてある倉庫へ向かった。
その倉庫の中には普通は手に入らない貴族が住む屋敷くらいの容量を持った腕輪型のアイテムボックスが置いてあった。
零断はそのアイテムボックスを取り、腕につける。
そしてそれに魔力を流し、いらない物などを全て吐き出す。
その代わりに食料や金になりそうな物をアイテムボックスに入れた。
そして零断は地下にある牢屋へ向かう。ここには数人の子供が捕らえられていた。
ここの盗賊は子供に1週間分の食料をおいて置き、その時がくるまでほとんど触れないという方法を取っていた。
確かに面倒は無くなるが、死ぬ可能性もあることだ。何を考えてそうしていたのかはわからない。
なので、零断が牢屋へ行った時も子供は普通に生きていた。
突然入って来た見知らぬ男に怯えながら子供たちは部屋の隅で小さくなる。
こういう時はほとんど子供を買いに来た人だからだ。
零断は子供たちの様子など気にもせずにつぶやく。
「“バースト”」
そういうだけで鉄格子は粉砕される。子供に飛ばないように壁も作ってあった。
同時に子供達についていた鎖などもすべて壊す。
鉄格子が壊れる音に怯えながらも鎖を取られて困惑する子供たち。
「…名前は?」
零断が発した言葉にびくりと体を震わせるが、1人の男の子が声を震わせながら答える。
「お、俺はマサ…です。俺たちはどうすれば…」
マサは8歳くらいで平均的な体型だ。髪の毛は朱色で髪は後ろで結んである。
零断はとりあえず少し説明する。
「帝国へ連れて行く。それだけだ。自分の村には帰れないかもしれないが、王国より帝国の方が安全だ。」
そういうとマサは顔を綻ばせる。
「帝国に、連れて行ってくれるんですか?」
「ああ。」
ぶっきらぼうに答える零断にマサの後ろから声を上げる女の子がいた。
「どうやって帝国に行くんですか!」
「山脈を超える。君、名前は?」
「ユニ…です。」
ユニは白く長い髪をしていて紐で1つにまとめていた。ようはポニーテールである。こちらも平均的な体格だ。
「他は?」
マサとユニ以外にの場所には4人子供がいた。
「ティアでちゅ!」
この盛大に噛んだ女の子。ティアは肩にかかるくらいの髪の長さだ。色は水色で、少し小柄だ。そして、獣人族なのか犬の耳と尻尾が生えている。
「何噛んでるんですか…すみません。僕はクロノです。よろしくお願いします。」
次にいったのは少し鋭い目が特徴なクロノだ。黒い髪で髪は短め。眼鏡をかければ優等生になれる雰囲気の子だ。
「ムペです。」
明らかにおとなしい雰囲気の男の子がムペである。髪は焦げ茶色で髪はちょっと長めで謎のアホ毛が生えている。
「チャマです。お兄さんは?」
同じくおとなしそうな雰囲気の女の子がチャマだ。髪は綺麗なライトグリーンで髪をストレートに伸ばしている。エルフらしく、耳がとんがっている。
「俺は零断だ。それじゃあマサ、クロノ、ムペ、ユニ、ティア、チャマでいいな?」
「「「「「「はい。」」」」」」
「それじゃあ行くぞ。」
「え、外には盗賊が…」
この盗賊に捕らえられていた6人の中でリーダー的存在のマサが零断に聞く。
「安心しろ。全員殺した。」
そういうと6人は目を輝かせる。
「れだんさんは強いんですね。」
チャマがそうつぶやく。
零断はそれに対して肩をすくめるだけだった。
こうして、零断の新たな旅が始まった。
次から第2章入ります。
そしてすみません!セリアが死んでしまいました…泣
自分でも死なせたくなかったのに…
ここまでセリアのことを好きだった方。本当にすみません。