表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波動の龍者  作者: ケイマ
第1章
34/81

後悔

「んんー!ふう。」

出発の日。零断はいつもより早く起きていた。決して今日慎慈に会えるわけではないのだが、それでも興奮が抑えきれず起きてしまったのだ。

零断の隣には薄いタオルがかけられているセリアがいる。夜に何をしたかは予想の通りだ。

「…セリアを見るのは半年後くらいになっちゃうのか…」

そう呟いてからセリアの髪を撫でる。綺麗なその薄い茶色でショートカットの髪を愛おしく感じる零断。

「大丈夫。半年だけだ。そうしたらまた今まで通り暮らせる。」

なんとなく心がざわめいている気がするの気になってしまう。

【このまま王都へ行っていいのか?】

そう思ってしまう。しかし、魔物に襲われても普通に討伐できる実力になった傭兵団もあるし、凶作になったとしても倉庫に1年は耐えられる食料がある。もしものことなんてほとんどありえない。

「まぁ、もう決めたんだ。やり遂げるさ。」

そう決意の言葉を発して不安を取り払う。

セリアを起こさないようにベッドを出て最後の支度をする。

ちょうど零断の支度が終わるころにセリアが起きてきて朝ごはんの用意をしてくれる。

あと1、2時間でテニラ村を出るので自然に話が活発になる。少しでも長く言葉を交わらせたいのだ。

しかし、その時間も長くは続かず、零断がグレンに呼び出される。

「じゃあセリア。また後でな。30分後くらいに戻るよ。」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

そう言って零断の服の裾を掴む。

「セリア?」

「あの…その…私も一緒に行ってはいけませんか?」

突然言い出されたことに困惑する零断。

「それは王都に?」

と、王都には連れて行くことができないとあらかじめ言われてるので断るためにきく零断。しかし

「いや、それは無理だとわかっているので…なので今から行く会議に…」

「ああ。だってよグレン。」

「…は?」

行きたいのが会議だったのでそのままグレンに話を振るためにドアを開ける。

だが、話が聞こえてなかったグレンには内容も何もわからず普通に聞き返す。

「従兄さん!私も今から零断の行くところに連れて行ってください!」

グレンに突っかかるように言うセリア。それに対してグレンは

「あ、ああ。それならいいが今から行くのはただの力仕事だぞ?見てても暇だぞ?」

「零断のそばにいたいだけなので大丈夫ですっ!」

「り、了解した。ならついてこい。」

そう言ってグレンが先導する。

向かう先はウィリアムの家だ。ウィリアムの鍛治道具を少し持って行くらしい。

こう言うものの持ち運びに適した“アイテムボックス”と言うアイテムがあるのだが、ウィリアムが持っているアイテムボックスは小規模なもので3人の用具などを入れるとパンパンになってしまうので直接馬車に入れるらしい。

ちなみにアイテムボックスはこの村ではウィリアムしか持っていない。

アイテムボックスとは、腕輪や指輪についている人の目くらいの大きさの石である。

アイテムボックスはすごく高価なものでウィリアムもそのアイテムボックスは何十年間貯めた金を全て使って買ったらしい。

使い方だが、その石がある場所から半径1メートル以内にあるものを持ち上げたりしなくとも入れることができる優れものだ。

また、入っているときの状態は保存されるので炊きたてご飯などを入れておいてもそのまま炊きたてでご飯が食べられる。

行きた物などは入れられないのも鉄則だ。

つまり、よくあるテンプレと同じだと思ってもらっていい。

と、話が逸れたが、鍛治道具は零断とグレンが身体強化して1人1つ持てるくらいだ。零断は2つ持てそうだが。

と言うわけで零断とグレン、セリアはウィリアムの家へ向かった。

向かった後は零断とグレンがそれぞれ一個ずつ鍛治道具を持って馬車まで運んだ。

この時もセリアは相変わらず零断の隣に立って甘えていたが。

そこに出発の準備を終えたダラス達がくる。実はこの使者はダラス含めて6人いたりする。いずれもダラスの部下で農産物や貯蔵の量などを図っていた。

よって零断とは今回まだ一度も顔を合わせていない。

「では零断殿、グレン殿、ウィリアム老師。そろそろ出発しますので挨拶を。」

気づけば周りに沢山の人が集まっていた。

「みんな!すぐに帰ってくるから待っていてくれ!もしかしたら嫁をもらってくるかもな!」

「「「「「「期待してるぞ!!」」」」」」

「農具の修理などはできんが、わしの倉庫の中に20本ほどの在庫が残っておる。それを使ってくれ。」

「「「「「「わかりました!老師!どうぞご無事で!」」」」」」

沢山の人から言葉を伝えられるグレンとウィリアム。

それに対して零断はセリアに近づく。

「零断…っ!」

近づくとごく自然な流れで誰にも突っ込みを入れられる間も無くセリアにキスをする。

「セリア。すぐに戻るから待っていてくれ。」

「…はい!零断も無理をしないでくださいね?」

「当然だ。」

そう言って3人は馬車へ乗り込む。

「またな!!」

「早く戻ってこいよ!!」

「「「「我々が責任を持って村人を守護するので安心して堪能して来てください!!」」」」

口々にそういう言葉が出され、紅蓮傭兵団に至っては涙を流しながら別れを言う。

セリアが手を前に組んで祈っている。

零断はたまらず馬車の脇から顔を出して

「セリアッ!指輪、買ってくるからな!」

「っ!!はい!」

プロポーズのような形で次の出会いを誓い合う2人。

零断の勘は警報を鳴らしているが、もう戻れない。


出発の少し前。村の人々がグレンや零断の見送りに行っている間、“7人目”が誰にもバレずに行動を成功させていた。


ここで運命は決まってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


テニラ村を出てからほとんど何もなく複数の村を渡りながら1ヶ月がたった。

キズト町より大きな町に来たこともあったが、旅に必要なもの以外は何を買わずにすぐにその町を出てなるべく早く王都へ向かっている。

零断的には嬉しいのだが、役人やダラスが妙に慎重に3人に接しているのが少し違和感があるくらいだ。

もしかしたら道中で魔物に遭遇した時瞬殺したからかもしれない。

と、旅は順調に進んでいた。

ある日、キズト町と同じくらいのそこそこ大きな町に1日泊まることになったら一同。

この日は2、3回魔物と遭遇した。しかもこの日は零断が乗り物酔いのせいなのかお腹の調子がすごく悪く、グレンはグレンでなぜか体が非常に重く、魔力をコントロールできない状態だった。だが、2人は気合と根性で乗り切った。

そのせいか零断の腹痛がなくなっても体はこの世界に来てから1番と言っていいほど重かった。

「ああ〜体重いなぁ。」

「本当に同感するぜ…もう俺寝たいわ」

零断とグレンが夕食を食べながらそう呟く。

ちなみにウィリアムはもう寝てしまった。疲れていたのだろう。

零断とグレンがだるそうにしているのをみてダラスが声をかける。

「お二人方大丈夫ですか?」

そう言いながら2人にお茶を配る。

「多分なぁ。こんなにだるいの久しぶりだから困惑してるだけで実際これ今までもこんなもんだったと思うし。」

「俺はこれが何日もかかるのは耐えられないな。」

口々に感想を話す。零断は毎日完徹だったので体のだるさ耐性はこの世界の人々より大きく強い。

「さようですか。それならば今日はできるだけ早めにお休みください。そちらの方が明日から良い日になるでしょうし。」

「ああ。そうさせてもらうよ。」

「また明日な。ダラス。」

「はい。おやすみなさい。」

2人はご飯を食べ終え自分たちの泊まる部屋へ向かう。もちろん零断、グレン、ウィリアムは同じ部屋だ。

部屋に着くと2人はそれぞれのベットへダイブする。

「明日は体軽くなればいいなぁ〜…」

「そうだなぁ〜…」

2人はそんなことを呟くと同時に深い眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


真夜中に零断はふと目覚めた。

【体は元どおりに軽くなってる。しかし、こんな短時間で体が回復するものなのか?】

そう不信感をもち、色々思想を重ねる。

そしてついた結論が

【誰かにそうなるように仕組まれた?今日は深く眠らさせるようにするとかそういう感じか?】

確かに深く眠っていれば暗殺などの時は楽になる。これは零断のゲームでの経験を基にしている。決してプレイヤーキルをしていたわけではなく、『深夜の暗殺者』のスキルで発動するユニークスキルを持つ者ならば必ず一度は悩まされるクエスト。ユニーククエストで大貴族を暗殺するというのをクリアしたからだ。

この時に零断が使った方法は屋敷の人が飲んでいる水に睡眠薬を入れて全員深い眠りにつかせ、こっそり大貴族だけを暗殺するという方法だ。

話を戻そう。その可能性を感じた零断は広範囲に索敵を広げる。

すると、隣の宿舎でダラスともう1人。零断がその気配を感じたことがない人物が話し合っていた。

零断はその内容が気になり、ダラスとその人物の会話を感じるために波動を集中させた。

「……だが、そっちはどうだ?」

「こちらも完璧だ。社会を知らない3人どもは深く眠っているさ。」

ダラスが発した言葉はいつも敬語なのに今はタメ語だった。

「そうか。ならもう心配はないな。3人は全員王都の管理下に置くことができる。これがどれだけ大きなことかわかってるよな?」

「もちろんだとも。正直あの英雄とやらが心配だったが、何事もなく任務を終えられる。」

零断は自分たちが利用されることに気づく。しかし、そのことを今追求しに行っても意味がない。とりあえず話を全て聞くためにさらに耳を傾ける。

「盗賊への連絡は?」

「だから完璧と言っているだろう?血のまつりだっ!とかなんとか騒いでいたさ。お前に渡された毒もちゃんと効果を示していたから安心しろ。」

「ああ。こっちでも確認した。3人が全員体調不良を言い出してな。耐性が強いから今になって出てきているが、本当だったらもっと早く出てるだろうな。特に体が弱いものには。」

「いやぁ。体内の魔力を暴走させて体調不良と魔力操作を妨害するなんてものをあれだけ吸わせりゃぶっ倒れるだろうな。」

零断は話している内容を理解するのに苦労した。

【つまり、俺が出発する前に毒を蔓延させて俺たち含めた村人全体に毒を盛ったのか。さらに盗賊へ連絡…まさか!テニラ村にっ!】

頭の中がごちゃごちゃになりながらもここままではいけないと行動を起こそうとする。

そして、この後に聞こえてくる言葉を聞いた途端、零断は誰にも気づかれないように夜の中走り始める。

その言葉は…

「3人はあの疲れにプラス睡眠薬で寝てるから昼までは起きんよ。」

「なら、今日の朝方に終わる盗賊たちのパーティは成功するな。もうこれで俺らの地位はうなぎ登りだな。」

というものだった。

窓を開け、2階から飛び降りる。

もともとこの世界に来てから筋肉は元の世界とは比べ物にならないほど強化されたので2階くらいなら飛び降りても何も支障はない。

「“ブースト”、“ムーブ”、“エレキ”!」

一気に3つの言葉を呟く。ブーストで身体能力を最大限まで上げ、ムーブでエレキトルムーブを使用。エレキでその出力を最大限まで上げる。

「くっ!風邪がっ!“バースト”!」

バーストをつかい、新幹線のような一点突破型のような形を波動で作る。

この時の零断の速さは時速300キロを超えるほどであった。

「セリア…!みんな…!生きていてくれ!」

零断はそう心から叫びながらテニラ村へ戻るのであった。







ここから相当進展します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ