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波動の龍者  作者: ケイマ
第1章
32/81

使者との対面

「遂に来ちゃったな。」

「そうですね。けど、少しの辛抱ですし大丈夫ですよ。安心して待っていてください!」

と、まだ零断が王都に行くことも決まっていないのに別れのような挨拶をする2人。

その様子に呆れながら

「まだ行けるかも決まってないんだぞ?まぁ、100%零断の存在は知られてるから大丈夫だと思うけどな。」

「まずまず、馬車が見えただけなのにそんなに物語を作れるお主らは凄いのう。」

そう。王都に行くどころかまだ見えた馬車が王都の使者とわかったわけではないのだ。

今零断達は村の入り口にいる。なぜ入り口にいるかと言うと、理由は簡単だ。零断が索敵を広い範囲で発動させたら馬車の存在を感じたからだ。そして今に至る。

「まあまあ良いじゃねぇか。っと、とりあえず何用か聞いて来るな。」

地味にそこにいたランドが馬車の正体を見に行く。

その様子を見て零断達はは村に戻る。なぜ戻るかと言うと、別に今すぐばれる必要はないので迫力がある戦闘シーンを見せた方がいいと思い、零断とグレンは逆方向の町外れ、つまりいつもの訓練場所に行って訓練をするのだ。他の人もいつも通りを見せた方がいいのでウィリアムは家に帰って仕事を。

セリアは農作業をしに畑へ向かった。

さて、王都の使者が来るまでいつも通り訓練を行うことになった2人。最近はグレンが身体強化 火 を覚えたので身体強化無しの零断vs身体強化有りのグレンの戦いになっている。

もちろん零断の全戦全敗だが。

ちなみに身体強化は火、雷、土しかない。風の場合身体に風を纏うので風の鎧と呼ばれるものはある。あと、白い狼が使ったような風に乗って動きを早くすると言うこともできる。

雷の身体強化はもう知っているだろう。不思議なのは火だ。原理的には体を適正気温に整え、暑さで筋肉を刺激するらしい。零断はそのことを聞いてもあまりしっくりこなかったようだ。土の場合、そのままの意味の身体強化だ。骨や皮膚を硬くするだけだ。動きが良くなったりはしない。さらに、土の身体強化は皮膚の強化ができないと実質には意味がなく、使える者は少ない。ウィリアムは使えるらしいが。

流石、元一流冒険者のタンクだ。

今日はあやふやにしてきた波動での身体強化だ。ボルケニクス戦で使用してからまだ一度も意識的に使えていない。マグネス戦は波動の制御を波動に任せた後に身体強化がかかった。と言ってもあまり強いものではないようで零断的にも『ないよりはある方がマシ』と言うレベルだ。だが、訓練ならば話が違う。現在零断とグレンの間には大きな実力差ができてしまっている。その実力差が一番小さいのが現在だ。2人とも身体強化無しでやると零断の長年の技ですぐに決着がついてしまう。

しかし、グレンが身体強化を使うことで零断が防戦一方になるが、戦闘はできているのだ。

そして、もし零断が波動の身体強化を使えるようになったらどうだろう。結果は『ほとんど同レベルになる』だ。と言っても零断の感覚上だが。

そう言うわけで王都の使者が来るまで訓練だ。

正直やり方なんてわからないのが零断の心情だが、身体強化なら身にまとうだろと言うわけでオーラを凝縮して体に馴染ませている。その状態でグレンと剣をぶつけ合う。

「な、ちょっ、これは…っと!はっ!」

オーラを体に馴染ませると、グレンの動きが明らかに悪くなる。

【…なぜだろう。これが波動の身体強化の力か?】

と思ってたりする零断だが、そんなわけもなくグレンが止める。

「ちょっと待った。おい零断。オーラやめろ。」

「なんで?」

「その迫力のせいでのけぞっちまう。」

「あ〜」

納得したように手のひらにポンっとぐーの手を当てる。

「むぅ。ならどうしたらできるようになるんだろうな。」

「んなことしるか。早く続けるぞ。」

「ま、いずれできるようになるか。」

結果的に投げ出して気合を入れる零断。ここからが零断の本番だ。身体強化有りたい無しの真剣勝負だ。

「いくぞっ!」

「はああっ!」

勢い良く剣がぶつかり合った。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


零断とグレンの激しい攻防を側から見てる2人の人物がいた。王都の使者『ラユ・ダラス』とランドだ。。ちなみにダラスは貴族なので名字がある。ラユが名前でダラスが名字だ。基本村人にはダラス様。ウィリアムとグレンにはダラスさん、ダラス殿と呼ばれている。

2人は零断のオーラに引き寄せられてここにきていた。と言っても、オーラを感じのは少しの間だけであり、ダラスは零断の存在を知っており、零断に会いたがっていたのでランドが連れてきたのだ。

「これがS級魔物を単独撃破した者の戦いか…」

「いや、こんなんじゃないですよ。零断が本気を出したら。」

「どういう意味かね?」

「だってあれ零断は身体強化使っていませんし、彼の個人職の能力すら使っていませんからね。」

「な…あれで身体強化無しですか…“彼”と同レベルなのかもしれないな…」

ランドは最後の言葉を聞き取ることができなかったが、驚いたことはわかったので少し自慢げに話し始める。

「零断に訓練を指導してもらう前と後では我らの傭兵団の戦力は明らかに変わりましたからね。」

「なら、数日間滞在する中でその強くなった騎士団の訓練も見させてもらおうかね。」

「はい。喜んで。」

と、そこまで話していると、零断の剣が大きく上に飛ぶ。勝敗が決まったようだ。

「ああぁぁぁ〜!負けたぁー!!」

「いや、これで俺が負けたらもうプライドの糞も無くなっちまうよ。」

そう言って2人は地面に倒れて笑い合う。汗はダラダラで、体力も消耗しきっているようで息が荒い。そこに、ランドとダラスが近づいていく。

「いやぁ。凄いですな零断殿。あの動きで身体強化無しとは。」

「ん?ああ。まぁな。んで、あんた誰?」

突然知らない人に話しかけられたので取り敢えず名前を聞く。

「ああ。これは失礼。私はキルノーン王国の貴族をさせていただいています『ラユ・ダラス』と申します。以後お見知り置きを。」

「…ユ・ダ?裏切り者?」

少し早口だったため、最初と最後が聞き取ることができず、間の裏切りの象徴のような名前をつぶやいてしまう。内心では

【こいつ、ただの裏切り者じゃね?】

と、思ってしまっている。

零断が呟いたことに苦笑しながら話を続ける。

「いえいえ。そんな裏切り者なんかではありませんよ。私のことは『ダラス』と読んでください。」

「了解。んで、王都の使者が俺に何の用?」

《んで、こいつの本名なに?》

零断はダラスに言葉を発しながらグレンに念話する。無駄にうまい技術だ。

《ラユ・ダラスだ。ちゃんと覚えとけよ?》

《あざっす》

グレンもその不意打ちにもうまく念話を返す。

と、その念話は一瞬で終わり、零断はダラスの話に耳を傾ける。

「そのことなんですが、零断殿。王都の騎士団の団長になってくれませんか?」

「…は?いきなり団長?」

斜め上のことを言われたせいで固まる零断。いきなり団長になんて普通言われることではない。

「はい。その通りです。あなたの力があれば同然の地位かと。団長になることで様々な恩恵があります。まずは公爵家になれるということですね。」

「公爵家っ?!?!それって一番高い地位なんじゃ…」

団長くらいなら男爵、高くて子爵くらいかと思っていたが、まさか一番上の位とは思わなくてまたまた驚く零断。

「まぁ、しっかりとした功績がなければどんどん下がっていきますけどね。」

「まぁ、そりゃそうだよな。」

驚きっぱなしの零断にさらに追撃する。

「それに今、王女様が強く誠実な男性を探しておられます。今団長になれば王女様を嫁に取れるかもしれませんよ?」

「なっ?!?!」

王女様属性。

零断が好きな異世界タイプで2位にランクインする属性だ。しかし、零断はここで暮らすことを心に決めているので手を出したい気持ちも相当大きいが、気合いで踏ん張る。

「…いや、その誘いには乗れない。」

「なぜです?ここまでの地位が確立されているのに!」

確実に引き抜けると思っていたからか慌てるダラス。

「俺にはもう決めた女が2人もいるんだ。俺はそれ以外にいらない。それと、この村に住み続けると決めているんだ。すまないな。」

「な、ならばせめて王都を見るだけでも!」

この言葉に零断は内心ニヤリとする。

【その言葉を待ってましたー!】

「まぁ、そのくらいなら行ってみてもいいかもしれないな」

「本当ですか!ありがとうございます!!ここを2日後くらいに出発するのでそれまでに準備をお願いします!」

「お、おい。零断行くのか?」

ここでグレンの会心の演技が登場。普通にうまい。

「ああ。行ってみたいしな。涼音がいるかもしれないし。」

「スズネ?それは誰ですか?」

妙なところに食いついたな、と思いながらも別に隠すことじゃないのでいう。

「俺の彼女だ。別れちまったから今探しているんだよ。」

「スズネ…どこかで聞いたことが…」

「なにっ!本当かそれは!!」

何か情報が手に入るかと思い零断が立ち上がる。

少し悩んだあと、何か思い出したからのように顔を上げる。

「ああ。そうですね。“彼”が言ってたことですね。」

「彼?」

いきなり誰かを指す言葉が出てきたのでそれを聞き返す。

「“彼”のことも言ってませんでしたね。彼は突如王都に現れた大剣使いの男ですよ。名前は広められてないですが、王都では名前からか性格からか“キシン”と呼ばれ尊敬されています。

「キシン…だと…」

その名前は零断にとって相当馴染み深い、この世界に来ているだろう1人の男を指していた。



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