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波動の龍者  作者: ケイマ
第1章
31/81

地味に戦闘力最高レベルの村

零断が傭兵達の訓練に付き合うこと1週間。

ついにグレンが帰って来た。

グレンの人影が見えたと言うことで村は朝早いと言うのに大騒ぎとなり、零断の魔法への集中も途切れてしまったのでグレンの迎えをすることにした。

ちなみに垂れ幕は零断のために作ったのでもうない。

【疲れてるようだし荷物でも持ってやるか】

と思い、ライトニングムーブでグレンに近寄る。

そして、話せるような距離になった直後にグレンは

「零断…お前はただの化け物かよ…」

と零断に聞こえるように呟いた。

「ん?俺は人間だが?」

と馬鹿正直に答える。すると

「あの規格外な魔物を1人で倒すとかただの化け物以外ないだろ!」

と、つい耳を塞ぎたくなるような大声で零断に突っ込む。

「なぜに?」

理由がわからない零断は首を傾げている。

その様子からグレンは呆れながら説明をする。

「あれはまさしくS級の魔物だ。しかもあのボルケニクスの変異種なんかよりずっと強いやつな。」

「なぜそうだとわかるんだ?」

「戦ったからだよ。」

「はぁ?」

まさか仕留め損なっていたのかと思い慌てる零断。しかし、グレンはそれを見越したかのように言葉を繋ぐ

「いや、完璧に死んでたよ。けど、魔物ではありえない無心状態になっててな。」

「あーそう言うことか。」

無心状態とは人間が死んだ場合によほど信念が強かったら起こる現象だ。

死にたくないなどの感情を強く持つことで体と心が分離され、仮初めの心がその体を漂着して暴れまくる状態になるのだ。

ちなみにその心は周りに意志の弱い生物がいた場合にその生物に取り付く。

しかし、取り付いた後でも人格などは全て崩壊して暴れまわるだけと言うもう厄介で仕方のないことなのだ。

今回グレンが戦ったのはマグネスの抜け殻なので、マグネスのような圧倒的経験の動きなどはないにせよ、あの肉体はそのままなのだ。と言っても零断に切り刻まれた後なので動きは鈍い。

その相手とグレン含めた10人ほどの人数で戦って死者無しでかろうじて勝ったのだ。

「マジであの強さで抜け殻かよ…しかもボロボロだし…あれが万全の状態だったら瞬殺されてた可能性が高いわ…」

零断に荷物を預けてしょんぼりした様子で村へ歩く。

零断と自分の戦力差を明らかに見せつけられた様子で相当ショックな様子だ。

この状態の時に零断が声をかけられることはない。グレンが落ち込んでいるのは零断が原因でもあるからだ。

しかし、村に近づくにつれて戻って来たっていう実感が湧いて来たのかだんだん顔を上げて歩くのが早くなって来た。

そして、テニラ村の住民が待っているところまで来ると後ろからウィリアムやセリアが出てきた。

「おかえりのぅ。グレンよ。」

「おかえりなさい。グレン従兄さん。」

後ろの人々も口々に「おかえりなさい」と言っている。紅蓮傭兵団の人は全員敬礼して見守っている。

その様子を見てグレンはいつもの調子を取り戻した。

「グレン!今帰りました!」

と、大声で叫ぶと町の人々から大きな歓声が上がった。

これがグレンの強さ。人からの信頼だ。この人から信頼されるところはいずれ大いに役に立つのだが、それはまだまだ先の話だ。

とまぁ、グレンは朝一に帰ってきたので村の人々は普通に農作業に入る。

グレンはなるべく早く帰りたくて最後の1日は寝なかったらしいのでぐっすりと寝込んだ。

零断はおそらく最後になるであろう傭兵団の訓練をいつも以上に気合を入れてしばいた。

その訓練は昼休憩を入れてグレンが起きるまで続いた。

グレンが起きたのは夕方くらいだったので丁度良かったので零断のスパルタ週間は終わりを告げた。

その後、グレンはセリア&零断家にお邪魔して夕ご飯を食べながら情報交換を行った。

と言っても結果的にグレンが持参した酒で日頃のストレス(主にキズト町に行ったから)を発散するかのようにぐびぐびと飲んだせいで潰れてしまい、零断はリビングのソファーで寝ることとなった。

次の日の朝、零断とグレン、ウィリアムがウィリアムの家で集まった。と言ってもグレンは

「二日酔いだぁ…頭いてぇ」

とか言ってベッドに入って眠ろうとしているのは置いておこう。

「んで、マグネスは確実に死亡。そして、俺が異世界から来たというのも確定したというわけだな?」

「まぁ…異世界については…俺的に納得しただけ…だけどな…」

「ん。それだけで十分だよ。」

1人でも確実に信じてくれる人が増えると無意識中に感じる居心地の悪さが明らかに違う。

そういう面では納得してくれて非常に助かるところだ。

「さてと、零断よ。次に王都からくる使者が来たら王国で向かうということでいいんじゃな?」

「ああ。」

「つまり…あと2週間くらいか…しっかりとしばくから…な…」

「死にそうな声をしてる奴にそんなとこ言われたくないぞ。」

グレンが声を振り絞ってしばくと言うが、そんな状態のやつに何言われたって何も現実感がない。

そのうち、零断とウィリアムが軽く話しているとグレンは眠りについてしまい、この場はお開きとなった。

零断は何もすることがなくなったのでとりあえずセリアの手伝いをするために畑へ向かうのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昼過ぎ。グレンがやっと復活してしっかりとした訓練を行うことになった。ちなみにまだグレンは傭兵達の変わりように気づいていない。

話を戻すが、まず零断の周りの支配を実際にやり、それをグレンが見て色々アドバイスをすることになった。

結果、零断が行う支配が圧倒的に高レベルすぎて全く理解することができなくてションボリするグレンだった。

これには零断も苦笑いをしてこの件は自力であげるしかないか、と、決めるのであった。

その日から2週間経つまでの間、零断は新しい魔法を作ることということもなく調整をしていた。

今までの戦闘では無意識に魔法を発動していたりと安定したことをしていなかったのためこれを安定させるために魔法、波動を発動するための言葉を決めた。

その言葉は合計5つ。

1つ目は“ブースト”だ。

これは基本的に身体強化を使うときにつぶやく言葉だ。

2つ目は“バースト”だ。

これは波動の基本攻撃技を使うときにつぶやく言葉だ。例えば波動を手にまとって相手を吹っ飛ばす時も“バースト”とつぶやくのだ。波動弾も全く一緒である。

3つ目は“チェイン”。

これは言わずもがな魔剣技の時につぶやく言葉だ。

4つ目は“ムーブ”。

これも言わずもがなライトニングムーブの時などの移動手段で用いる言い方となる。

最後に“エレキ”だ。

これは雷魔法を使う時につぶやく言葉だ。ちなみにエレキトルのエレキをとった。

今まで無意識の中のせいでミスをしていた(が、事前に波動によって対処されていた。)

場面のミスを明らかに減らすことができるようになった。これで多少でも波動を頼ることが少なくできた。

あと、この5つの響きを結構気に入ったらしい零断はグレンとの訓練中にもその言葉を叫んでグレンを大きく吹き飛ばしたりもした。

ウィリアムから見ても零断の魔力の支配能力は冒険者の魔法使い達より圧倒的にズバ抜けてるらしい。と言っても、今はウィリアムと同じくらい支配してるらしい。

ウィリアムの場合この支配を無意識に行なってらしい。零断が感覚を話してみると、

「ああ。わしもそんな感じじゃよ?なに?みんなできるものではないのか?」

というほどだ。全員できてると思ってたらしい。この技術は紅蓮傭兵団にも伝えてさらに強くなるようにするらしい。

そうそう。紅蓮傭兵団といえば。

グレンがキズト町から戻って来てはじめて広場に来た時の驚きようは見てて面白かった。

顎をダラーンと垂らして自分もできない最短詠唱を普通の傭兵魔術師がやり遂げたのだ。驚くのも無理はない。

グレンはこうしてはいられないと零断の魔力支配の練習などを全て無しにして自分の最短詠唱の先生として零断を使った。

まぁ、流石個人職所持者と言うべきか傭兵魔術師が5日ほどかかった最短詠唱の簡易魔法をグレンは1日で使いこなせるようになった。

と言ってももともと少しずつ練習してたので当たり前であるが。

その後2日3日は零断はずっとグレンの訓練に徹することとなり、その成果は零断と同じように個人職の魔法を最短詠唱(零断には劣るが)をできるようになった。

また、傭兵魔術師には教えてない魔剣技の最短詠唱も訓練したのでグレンは実質この世界で最強レベルの強者になったのだが、そのことをまだグレンは知らない。まずまず零断と一緒にいることで強さの基準がおかしくなっているのだ。

零断は零断で周りの人とか全く無視してただひたすら自分の強さを追い求める性格なので強さを比べることすらしない。

さらに強い武器を作るウィリアムがいるし、紅蓮傭兵団も王都にいる兵士と同等レベルの強さになりそうなので、地味に戦闘力最強レベルの村がつくり上がっているのだが、やはりこれも誰も知らない。

そんなこんなで零断、グレンは日に日に訓練を重ねて強くなり、ついに王都の使者が来る日がきたのだった。





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