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波動の龍者  作者: ケイマ
第1章
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帰還

「なんだ…これは…」

「な、なんなんじゃ…」

零断とウィリアムが呟いた先にはっ!

『Sランク魔物討伐お疲れ様!』

という垂れ幕が飾ってあった。

「おかしいだろ…だってまだ倒してから3日経ってないんだぞ…」

「ん?そこは普通だと思うのじゃが。」

「え?普通?」

【まさか俺より早い人がっ!?!?】

自分の存在価値の1つがなくなる気がして心配になる。

しかし、そんなことはなかった。

「村が危険な場合や、緊急の連絡の時に使用する魔法具があってのう。一度使うと1週間は使えなくなり、さらに時間は短い。そして一方通行。使い勝手は悪いが相当重要な魔法具じゃよ。」

魔法具とは、魔法を使うための魔法陣をその道具につけて魔力を通すことで発動する物だ。

魔力は自分のを使っても良いし、周囲にある魔力を使っても良い。ためのただし、周囲にある魔力を使うのは相当なテクニックか、そういう構造になっている魔法具でないといけないのでほとんどやることはない。

村にある通話用魔法具はある意味特殊で人が魔力を入れることができない代わりに周囲の魔力を吸うのだ。

そのことを知った零断は自信を失わずに済んだ。そして、もう目の前にいる愛しのセリアに会うために足を早める。

さらに近づくと町がざわめき出した。多分門番か誰かが零断とウィリアムに気づいたのだろう。

時間が経つにつれ村が騒がしくなる。そして、1人の少女が飛び出してきた。もちろんセリアだ。

歩き気味だった零断も小走りになる。

「セリアっ!」

「零断っ!」

セリアは零断に突進ごとく抱きつく。零断はそれを優しく受け止めて頭をなでなでする。

まさに戦争から帰ってきた兵士とその妻のようだ。じっさいそれに近い形だが。

「はぁぁぁ。零断だぁ〜。気持ちいいよぉ〜」

「気持ちいいってなんだよ。」

セリアの言葉に突っ込みながら頭をなでなでし続ける。

セリアはその感触に目を細めながら零断の胸に頬を擦り寄せる。

周りの村人は暖かい目で2人を見ている。

ウィリアムは一足先に村へ入って行った。ウィリアムを慕っている人達がウィリアムの介護をする。

あまり待たせては行けないので零断はセリアをお姫様抱っこして村へ歩いていく。そして、村の人々が待っているあの垂れ幕の下を通る時に

「みんな。ただいま!」

そういうのであった。

そして、

「「「「零断!おかえり!」」」」

そう返すのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


まず聞かれたのがグレンのことだ。魔法具の電話もどきではグレンが調査に行ったことは言われていなかったらしく、グレンが調査に出てたと言ったら驚きと納得の反応だった。

そして、零断はセリアに連行された。

「ウィリアムあとは任せた〜」

「はぁぁぁ。しょうがないのぉ」

という会話で村人全員笑っていた。

その後、セリアと何をしたかは言うまでもない。あえて言うならばすごい我慢したものを解放するような感じだったと言っておこう。

それは夜ご飯などの休憩と呼べるかわからない甘い雰囲気を醸し出した時間を含めて深夜まで続いた。

早朝。

セリアは零断の腕の中で幸せそうに眠っている。対して零断は疲れ果てた老人のようになっていた。

深夜セリアが寝た後も1週間ぶりのセリアとの添い寝で胸が高ぶり寝ているセリアを襲いたくなってしまうため、意識を話すことができなかった。昼にライトニングムーブをずっと使っていたためその疲れもどっときたのだ。

零断はセリアの頬をツンツンとつつく。

【あー。癒されるなぁ。この時間が永遠に続けばいいのに】

すると、セリアが起きる。

「ふぁぁ。おはようございます。零断……ふふふ。朝から元気ですね。」

「…おいおい。まさかだよな?俺まともに寝れてないんだけど?」

「寝れてないんですか?なら運動が足りないんですよ。さぁ。一緒に運動しましょう!ここ一週間分の!」

「え、ちょ、まて。さすがに…ってさするな!いや、握ればいいんもんじゃない…」

セリアは零断のそれを握って上下に動かす。零断がピクピクする。

「ふふふ。じゃあ、いただきます。」

「ちょま、ああああーーー!!!!」

零断の悲鳴(?)が響いたのであった。


ーーーーーーーーーーーーーー


セリアと零断の間で色々あった後、朝食を食べて2人は別れた。セリアはいつも通り農作業に。零断は一応ウィリアムと話すためだ。昨日零断が去った後何が起こったか聞くために。

ウィリアムの家に着いたがまだ寝ていた。

【俺とセリアがあんな長くイチャイチャしてたのにまだ寝てんのかよ。たく老人は…】

と、心の中では文句を言いながらも優しい笑みを浮かべる。

零断にとってウィリアムは叔父的な存在になってきている。このちょっとした旅でその意識はさらに大きくなった。

だからかわからないが、零断はウィリアムを他人扱いしなくなった。

今零断が他人扱いしていないのはこの村にはグレン、セリア、ウィリアムだけだ。

零断と仲良くなるのは簡単だが、それ以上。つまり、親友や恋人になるためのハードルは結構高いのだ。

【…まだこの世界にきて数ヶ月なんだな。今まで地球で暮らしてきた時間よりも充実していて長く感じる。けど、あっという間だったな。】

と、改めて回想しながら何も意識せずに歩く。どこへ行くかは気分次第だ。

【けど…涼音が恋しい。俺は多分あまり地球に戻りたいと思ってない。まぁそういうのに憧れてたからっていうのもあると思うけど。

けど、涼音は恋しい。会って抱きつきたい。会話したい。キスしたい。もし、永遠に会えなかったとしても涼音への気持ちは変わらないだろうな。】

涼音への気持ちを思ったからか、自然に零断の顔がにやける。しかし、その顔には悲しさも混じっていた。

零断が回想から戻り、顔を上げて見るとそこはグレンが作っている傭兵団の訓練場だった。(町の広場)

今日も二人一組になって木刀で撃ち合いしている。零断はそれを眺めることにした。魔法を使える人は的を狙って炎球や、水球を放っている。そこで感じたのは

「…水球って、相手を濡らすだけじゃね?」

感じたのではなくボソッと言ってしまった。

幸い傭兵には聞こえなかったようだが、零断は決心する。

【もうちょい本格的に訓練してしばいてやる。】

零断は傭兵達の元へ向かった。

広場に近づくと指揮していた1人の男が零断に気付いた。

「おお。これは零断殿。どのような用事で?」

「…堅っ苦しいからいつもグレンとかみんなに言ってるような感じで喋ってくれ。」

「ん?そうか。わかった。ああ、そういえば自己紹介してなかったな。俺はランド。紅蓮傭兵団の副隊長をやっている。」

【え、紅蓮傭兵団って、グレンの名前をそのまま使ってるのかよ。ははは。笑いが止まらねー!!】

内心大爆笑している零断だが表には出さない。【感情はコントロールされてるのだっ!】

決してこんなくだらない時に波動が感情をコントロールしているわけがないのだが、零断は適当にそう決めつける。

「知ってるかもしれないが俺は零断だ。よろしくなランド。」

「おう!んで、今日はいきなりどうしたんだ?」

恒例の挨拶が終わり、要件を聞く。

「いや、暇だから通りがかっただけだけど少し訓練に付き合おうかと思ってな。」

「ほう、付き合ってくれるのか。是非御教授願いたいな。よし!全員集合!」

剣で打ち合ってた者や魔法の訓練をしていた傭兵達が続々と零断がいる場所に集まってくる。

「うっし。みんな!今日は俺がお前らの訓練を考える!厳しくいくから逃げ出すなよ?」

その言葉に乗せてオーラも軽く使用する。

その影響力はすごかった。傭兵達の魂が燃え上がる。

「「「うおおおおー!!!やるぞぉぉ!」」」

【オーラ超汎用性高いわぁ〜。相手を脅すこともできるし味方の士気も上げれるとかこれ稀に見る真意魔法と同じくらい使えるな。】

こうして士気最高潮の状態で零断の訓練が始まった。

まず剣士。訓練方法は簡単に言うと旗取りゲームだ。剣士約20人を2チームに分けて戦闘をしながら相手の旗を取りに行くのだ。これは実際戦術ゲームだが、それに誰がいつ気づくかが大きいだろう。打ち合いだけでは足りないとマグネスとの戦いで学んだのだ。傭兵団は一対一で戦うことは少ない。なら、チームの連携をやるべきと考えたのだ。これの審判はランドがやる。

次に魔法使い5人。これは零断が直接教える。

正直零断に直接教えてもらうなどスパルタにも程がある。

1日の大半を魔法と剣につぎ込んでいる男だ。

果たして魔術師達は無事でいられるのだろうか…

「んじゃ、魔術師達も始めるぞ。まずは普通に俺の波動の球を狙って水球を当ててくれ。ちなみに俺の波動を霧散させられなかったら罰ゲームな。」

気が引き締まる魔術師達。

1人目。緊張しすぎて惜しいところで外す。

2人目。当たった。しかし、それだけ。

3人目。威力を強くしたようだ。しかし、波動は壊せない。

4人目、5人目も同様にダメだった。

「お前らさ。なんでただの水球を当てるの?」

言われている意味が理解できていない魔術師達。それに少し呆れながら説明をする。

「俺は水球と言った。ならさ…“アクアスラッシュ”てな感じで鋭い球を作り出そうぜ。」

零断が作ったのは水球を平べったくして高速回転させたものだ。もちろん殺傷性は大。

零断がさりげなく放った魔法は実はまだこの世界にない魔法だったりするのだが、それは魔法に関してあまり知らない零断と傭兵達は知らない話だ。

このアクアスラッシュを、他にも同じような形で作ったフレイムスラッシュやウィンドスラッシュなどを各個人で零断の波動の的を霧散させるために努力をする。

零断は魔術師達が放つ魔法の魔力を把握する練習をする。波動と魔力の支配はグレンが来てからだが、このくらいはやっておかないとグレンが帰って来てもすぐに訓練できない可能性があるからだ。そこらへんも怠らない。

傭兵達の訓練が終わるのは日が落ちてからだった。

その後、グレンが町に戻ってくるまでの1週間。零断の超スパルタ訓練は終わらなかった。

このスパルタ訓練を終えた傭兵は零断の見つけたイメージ魔法をうまく使えるようになってグレンを大層驚かせるのだが、それはまた別の話だ。








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