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波動の龍者  作者: ケイマ
第1章
29/81

オーラの副作用

更新遅れましたっ!

朝、零断が起きると外は騒がしかった。

今寝ている部屋は零断、グレン、ウィリアムの3人で寝ていた。今はグレンがいないので零断とウィリアムの2人である。

ウィリアムは老人なので朝は遅い。いつも早く起きている零断が先に気づくのは当然だった。

窓から顔を出してみる。

「あっ!あれは零断殿ではないか?」

「ほんとだ!零断殿〜!」

「キャー!零断様ぁ〜!!」

バタンっ!

とりあえず零断は窓を閉めた。

「…何が起こっているんだ。」

そのうるささのせいでウィリアムも起きたようだ。

「なんじゃ?何事じゃ?」

「いや、窓の外がうるさくてよ。」

「むう?」

そういってウィリアムは窓を開ける。

「ウィリアム老師だ!ウィリアム老師っ!零断殿はどこに!」

「ジジイはどいて、ボグラァッ!」

「零断様はドコォ〜!」

1人ウィリアムのことをジジイと呼んで周りの人からボッコボコにされた人がいたが、やはり、みんな零断を呼んでいるようだ。

「おいおい。まだ朝早いのになんなんだよ。」

そういって2人は部屋を出て宿舎のホールへ行く。朝ごはんを食べに行くのだ。

ホールにはほとんど人はいなくて安心した零断。そこに宿舎のおばちゃんが話しかける。

「零断君よね?」

「ん?ああそうだが。」

【あー外がなんちゃら言うのかな】

なぜか名前を確認してきたのでそう予想したが、おばちゃんの答えは零断の予想の遥か上をいった。

「私の娘がね。あなたに一目惚れしたようなのよ。だから娘を嫁にとってくれないかしら?」

「……は?」

予想の上を行きすぎて反応できない零断。とりあえずウィリアムを見る。

「このようなことはよくあるのじゃよ。いや、惚れるのは珍しいかもしれないが、子を強い者に引き取ってもらおうとする親は多くいるのじゃ。」

「んな馬鹿な」

ウィリアムがおばちゃんに聞こえないように小さく口を寄せて言う。その謎さに

【これが…一夫多妻の世界か…】

と思ってしまう。

「それで、どうかしら?」

おばちゃんが答えを聞いてくる。

答えは決まっている。

【俺はnoと言える日本人だ!ちょっと意味違うかも…】

「すみません。俺はもう愛している人が2人いるんです。だから無理です。」

言わずもがな涼音とセリアである。キッパリと言い切った。しかし、そこにその娘がやってきた。

「あ!零断様っ!」

そういうと零断のライトニングムーブ並みの速さで外へ続く扉へ走り、思いっきり開いた。

「零断様が今ここでご飯たべてますよ!!!」

この瞬間零断は悟った。これはやばいと。

即座に隠蔽を発動させる。ウィリアムは突然気配を消した零断に少し驚きながらも溜息をついていた。

開け放たれたドアからはテニラ村の総人口並みの人がいるんじゃないかと思うほど溢れかえっていた。

零断は隠蔽を発動しながら残りの朝ごはんを高速で掻き込んでいる。

そして、その零断ファン達が零断とウィリアムがご飯を食べているところを見る頃には食べ終わって隠蔽に専念していた。

しかし、何故だろうか。

【…なんでみんな俺の方を見るんだ?】

席を椅子を動かさずに立つ。

零断ファンの視線が上を向く。

零断が右に動く。

零断ファンの視線が右に動く。

零断が大きく左にずれる。

零断ファンの視線が大きく左を向く。

零断はダッ!と借りている部屋へ走る。

零断ファンはようやく音を立て、いることを確信し、

「零断さまぁ!まってぇ!」

「零断殿!弟子にぃ!!」

「強さの秘訣をぉー!!」

と言って零断について行った。

ついてきていることに気づいている零断は決めた。

【俺はもうこの街を一刻も早く出るっ!】

そう思い、ウィリアムに念話で用件を伝える。

《おいっ!ウィリアムっ!俺今色々やばいからこの村出るわ!村の外で待ってる》

《了解じゃ。できるだけ早く行くから待ってるのじゃな。》

零断は自分が持ってきた少ない荷物を高速で背負い、町を出るべく窓から外に出て走る。まだ部屋にもついていないはずの零断ファンは何故か零断が外に出たことに気づき隠蔽しているはずの零断を逃さぬかのように追う。

「マジでこいつら魔物全滅させられるダロォォォォォ!!!」

キズト町に悲鳴のような声が響き渡るのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


零断とウィリアムは無事……にキズト町を出ることができた。

うん。零断は無事ではなさそうだ。結果的に捕まり結婚やら弟子やらコツやら至るところまで聞かれて精神的に疲れていた。

その中にさらにきちがいな奴らまでいた。零断の手を掴み大事なところに引っ張っていこうとする女や、いざ勝負とか言っていきなり切りかかってきたやつとか…

小1時間ほど零断が耐えに耐えウィリアムが来た瞬間に逃げた。さすがに遠くまで追っては来れないようで零断がマジな方での全速力で走ったらやっと見逃してくれた。

そして今零断とウィリアムはテニラ村への道を歩いている。

「まじで、本当に、あの町へは絶対に行かない…いや、これ絶対に…」

「…零断。さっきからそればっかり言ってるぞ。」

「いや、だってあれおかしいだろ。隠蔽使っても見つかるわライトニングムーブ使っても距離が伸びないわ、あいつら絶対にSランク冒険者だろ…」

「そんなわけないじゃろ。まぁ、確かに零断にとっては災難じゃったな。」

「はぁぁぁ。なんでマグネスを倒したらこんなんになるんだよ。」

零断はこの3時間ほどのことをウィリアムに愚痴りまくる。もう体が本当に重そうだ。

【早くセリアの癒しが欲しいぃ〜。】

零断は心からそう思った。

すると、近くにゴブリンのような魔物が寄って来たので“オーラ”を使い追い返す。

その作業をほぼ無意識に使った零断にウィリアムが意見する。

「もしかしたらそのオーラを浴びたからああなったんじゃないかの?」

「はぁ?んなわけねーだろ」

「本当にそうじゃろうか?生物というものは強者を好む。それは基本人間も同じじゃ。ならば、一度強い力を体の芯に感じたならばそれを放った者を好きになってしまう可能性だっているじゃろ?あと、強者がいるならそれに強さの秘訣を聞きたい者も普通にいるじゃろうな。それが体の芯まで届く圧倒的な強さならばさらにじゃな。」

「……結果的に俺の能力のせいか。この世界がこういう世界というわけではないのか…」

「ははは…」

零断はさらに落ち込む。それにウィリアムは苦笑いだ。

「ああ〜。涼音の癒しが欲しい…」

言った直後、零断は固まる。

零断はマグネスに会った後、涼音のことをよく思い出していた。夢で昔あったことが何度も繰り返し見ているのだ。そして今、無意識に涼音のことを呟いてしまった。

【あーくそ。ダメだな本当に。どんどん心が弱くなってる気がするな。多分この世界に疲れたんだろうけど。】

これ以上考えると様々なネガティヴになってしまうと思い零断は思想を停止した。心を落ち着かせるために無心になる。

すると、先ほどの零断のつぶやきを聞いていたウィリアムがフォローを入れる。

「零断がそう思うのも無理はないだろう。町に行くまでに色々思い出などを聞いたからのう。」

「…まぁな。」

零断はそっけなく答える。あまり聞いて欲しくないようだった。しかし、ウィリアムはもともと聞いて見たかったことを聞くことにした。今聞かなかったら次はないと思ったからだ。

「お主はもし元の世界に帰れると言われたらここに残るか?それとも変えるか?」

「………」

零断は黙っている。考えているのだろう。

「少し聞き方を変えるか。もし、元の世界で元のように暮らせるとしたら残るか?帰るか?じゃな。もちろんこの世界に来た者たち全員戻るぞ。」

「…………」

零断はまだ黙っている。流しているわけではない。真剣に考えているのだ。

ウィリアムはとことん待った。零断の思想がまとまるまで。

どれくらい経ったのだろうか。10分ほど考えていたのかもしれない。そして不意に零断が口を開く。

「俺はこの世界が嫌いではない。それは確実だ。なんだってセリアがいるからな。さらに、グレンやウィリアム、町のみんなもいるし。離れたくないと思う。

地球には正直未練はあまり残っていないというのが俺の本当の気持ちなのかも。特にやりたいこともなくひたすらゲームに打ち込んでいた。

けど、もし涼音と地球でしか会えないなら俺は地球に戻る。セリアを置いてでも。

セリアには悪いかもしれないけど、俺は涼音の方が大事で涼音が大好きなんだ。」

ウィリアムは何か言葉を返そうとしていたが辞めた。零断の顔がいつもとは全く違うほど真剣になっていてその顔に気圧されたからだ。

その後、2人は何か喋ることもなくハイペースで歩いた。

途中昼食にそっけないおにぎりを食べた。

【はぁ。セリアのおにぎりの方が100倍美味しいなぁ】

そんなことを思いながらもぱっぱと食べ終わる。

昼食タイムを終わった2人は零断がウィリアムを背負い、零断がライトニングムーブを使ってなるべく早くテニラ村へ帰るという方法をとった。

その効果は絶大で先ほどのペースの何10倍もの速さで道を走った。

通常2日3日かかる道のりを零断は全く全力ではない速さで9時間という短さで走りきった。

ウィリアムはライトニングムーブの本当のすごさを思い知った。

基本高速移動は短時間短距離しか使えない。しかし、ライトニングムーブは圧倒的とも言えるその速さを何時間もキープすることが出来るのだ。

つくづく零断はなんでも出来ると思ってしまう。しかし、心は少年ということも同時に思い出す。やはりこの子を支えるのは自分とグレンだなと思う。

話が変わるが、その圧倒的な速さだと風が強すぎて吹き飛ばされるのではないかと思うが、そこは零断が波動の壁を作り風を防ぐ。

そうしてウィリアムと零断はついに村の入り口を見ることができた。

しかし、

「なんだ…これは…」

「な、なんなんじゃ…」








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