なんか英雄に“された”
か、書き終えた…
「やっと帰ってきた…この1日長かったな。」
目の前にキズト町があると思うとついついそう思ってしまう。
零断はすぐに冒険者ギルドへ向かった。
零断が扉を開けると一斉に視線を浴びた。
「な、なんだ?」
ついつい一歩後ろに下がってしまう。
どうやらみんな顔が青い。なぜかと考えていると後ろから大きな声が聞こえた。
「おいっ!大丈夫か!大きい気配を感じたからきて見た…」
「おぬしら!すぐに逃げるのじゃ!すごい奴がここにきて…」
「おう。グレン、ウィリアム。ただいま」
「「…」」
【なぜグレンとウィリアムは喋らないんだ?】
と、不思議に思い聞いてみる。
「何してるんだ?というか、逃げるって何?」
すると2人は「はぁぁぁ。」とため息をついて説明してくれる。
「町にすごく大きな気配がして住民に避難などを出して、冒険者ギルドにも依頼を出そうかと思っていたのじゃが…」
「まさか正体が零断だったとは…」
「へ?あ、ごめん。“オーラ”切り忘れてたわ。」
そして、2人はさらに大きくため息をつく。
零断がオーラを切ると冒険者ギルドの皆々もいつもの調子を取り戻したようだ。そして、グレンとウィリアムはそのオーラのせいであまり気にできなかった零断の体を見て驚く。
「おまっ!どうしたんだよその傷!大丈夫か?」
「大丈夫には見えんじゃのぉ。とにかく治療院に行くのじゃ。ここには確か個人職『治癒師』がいるはずじゃ。」
実は個人職は被っているものも存在する。それが先ほど出てきた治癒師や、鍛冶師、メイドとか様々なものがある。といっても、珍しいのは変わらずほとんどの町や村にはいない。
その町に治癒師がいるのはその治癒師がグレンのことを憧れているからである。もちろんグレンはそんなことを知らないが。昔助けられたことがあるらしい。
移動しながらウィリアムがそう零断にこっそり説明した。
そして、治療院に着きそこで零断は昨日今日で起こったことを全て話す。
マグネスのこと。そのマグネスが零断と同じ世界の住民だってこと。そして、殺したこと。白い狼のこと。
簡単に30分ほど話したら全身の治療も終わっていた。非常に時間がかかるため戦場などでは水魔法の方が使われることが多い。
「へぇ。零断お同じ世界の住民か…」
「ああ。見たかったとかいうんだろ?」
「まぁそりゃな。今やもう零断を疑っているわけじゃないが、やっぱり確信が欲しいしな。」
「まぁ大々的にはごまかすつもりなのじゃから大丈夫じゃろう。」
「大々的にごまかすといっておきながら今他人に聞かれてる気がするのは俺だけか?」
零断の発言は綺麗にスルーされた。
その後色々話した結果グレンがその死体を回収しに。零断とウィリアムはテニラ村に帰ることになった。しかし、1日2日はキズト町を見て回って良いと言われたので零断はゆっくりすることにした。
グレンはもうすぐに出発するようだ。その人狼とやらを早く見たいのだろう。
死んだ直後に萎れちゃったぞ
と零断が言ったのだが、やはり考えは変わらなかったようだ。
そしてグレンを見送り、なんだかんだで短時間しか寝ていない零断はベッドに入るか否かで風呂も入らずに寝てしまった。と言っても治療院に水魔法使いがいたのでその時に血や汗は流してもらっていたが。
そして次の日。零断は改めて冒険者ギルドへ出向いた。謝罪とクエストの報告のためである。
「こんちわー。クエスト報告に来ました。」
扉を開けてすぐにそんな呑気な声を出す。
すると
「「「「おはようございます!!!零断さん!!!」」」」
「お、おう。」
気軽に挨拶したつもりが冒険者ギルドにいた全員が立ち上がり頭を下げて来た。
ちなみにウィリアムは鍛冶屋に行っていていない。どうしてもって頼まれたようだ。
話を戻すが、とりあえず零断は受付に行こうと受付を見る。しかし、そこにはさっきまでいた先日あった受付係さんがいなくなっていた。
「俺どうすればいいの?」
とりあえず近くにいた冒険者に聞いて見る。
「はははいぃぃ!!!たたたぶんギギルマスを読んでいると思われますので、すす少し待ってくださいいいいっっ!!!」
「お、おう。」
同じ反応をしてしまう零断。けど、この冒険者の反応がさすがに引いてしまうものだったのだからしょうがない。
その冒険者は上の階の奴らにめっちゃ睨まれている。
【うわっ、これ俺のせい?どうしよ…】
そう考えていると中から前見たギルドマスターが出て来た。
「零断よ。お主は英雄だ。感謝する。とりあえずこちらへ来てくれ。」
「お、おう。」
あの盛大そうなギルドマスターがなぜか丁寧になっていて同じ反応しかできない零断。
とりあえずギルドマスターについて行った。
ついて行った先はめちゃくちゃ豪華な場所だった。いかにも王都からきたお偉いさんが来るような場所だ。
「あのぉ。俺場違いなんじゃ…」
思ったことを口にする零断。しかし、
「そんなことないぞ。先にも行った通り零断…いや、零断殿はこの町の…いや、この周辺区域の平和を守ったのだ。」
「…へ?俺ただ人狼倒しただけですよ?」
大袈裟に言われてさすがに否定する。しかし、ここからが本番だった。
「今回零断殿に受けてもらったものは最初はBランクの依頼だったのだ。何人も死者が出ているので最初はEだったのだが、上がって行ってな。」
「へぇ。それで?」
続きを促す。
「しかし、零断殿が行かれた後近くのここと同じような町から連絡が来てな。一週間ほど前に零断殿と同じクエストに出発した全員Aランクの7人パーティの1人がいきなり満身創痍で帰って来て、他のメンバーは全て殺されたといったらしいんだ。そして、本格的な討伐パーティが今組まれているのだ。」
「本格的な討伐パーティって…Aランク7人で勝てなかったんだろ?普通王都に応援を頼むんじゃないのか?」
「王都に応援?んなことしてもなんも意味ないぞ。あいつらはなんもやってくんねぇんだよ。」
零断は改めてこの王国の悪さを実感した。いや思い知った。
「まぁそういうことは置いておこう。それでな。人狼はSランクの魔物に認定されたのだ。つまり、零断殿はFランクながらSランクの魔物を1人で討伐したのだ。これは英雄の行動といって過言はないだろう。」
ちなみにSランクの魔物というのはやろうと思えばその地域一帯を破壊し尽くせるレベルである。零断は知らないことだが、ボルケニクスはA+ランクの魔物である。
Sランクの魔物を倒すだけで普通の町や村ならば英雄なのである。
「このことはいずれ王都へ伝わるだろう。グレンとウィリアムと話したが、王都へ行くんだろ?なら丁度いいんじゃないか?」
「俺はそんなすごいことしたのか…まぁいいや。なるようになれ。んで、王都へ行くのには確かにいいネタだな。多少融通を利かせてくれるだろうし。」
あと2、3週間後に行く王都がさらに楽しみになった。しかし、それに対して感じてしまう不安があった。
【俺は本当に王都へ行った方が良いのか?いや、行かないと涼音と会えない。会える確率がなくなる。ならば行くべきだ。】
そう考え事をしているとギルドマスターが何か思い出したかのように大事そうに話し始めた。
「あぁそうだった。零断殿。お主は最下ランクなのにSランクの魔物を倒した功績でFランクからDランクまで一気に上がることになったぞ。」
「え?まじで?それは少し助かるかも。」
Fランクだと色々面倒なのだ。せめて少し高い方が良いかなと思っていたところだった。
その後、ギルドマスターと少し話をしてから零断はギルドの応接室を出た。ウィリアムが来るまでギルドでのんびり色々聞こうと思っているのだ。
そこに待っていたのは質問責めだった。
「あ!零断殿!どうでしたか?」
「零断殿!どうやってSランクの魔物を倒したんだ?」
「零断殿!グレン殿とウィリアム殿の弟子っていうのは本当ですか?」
あっという間に囲まれてしまい、仕方なく全ての質問に答える。
「A.なんかDランクまで上がった。
A.気合い
A.弟子ではない。親友」
囲んでいた人は1個目と3個目の答えには満足したが2つ目は納得しなかったらしい。さらに這い寄ってきた。
「そ、そこを教えてください!」
「強くなりたいんだ!」
「才能なら諦める!けど、Sランクの魔物は才能だけでは倒せないんだ!努力も必要だ思うんだ!」
なんとなくだるくなった零断はいつもの訓練を伝えた。
「朝早く起きて2時間魔法の練習。朝飯食ってグレンと5時間くらいぶっとうしで剣の練習。昼飯食ってまたグレンと5時間くらいぶっとうしで魔法の練習。夕飯食って少し魔法の練習。以上。」
「「「………キッツっ!」」」
零断が訓練時間を言うと全員がそう答えた。零断的にはこのくらいやるのが普通になってきているのできつくも何にもない。実際ゲームは休日の場合もっとやっていた。朝食って夜までずっとやって夕飯食って朝までやる。これを思うと全然きつくない。むしろ楽だ。
そう思っているうちにウィリアムが帰ってきたようだ。
ウィリアムと2人で町中を歩く。ふとすれ違うとウィリアムに挨拶をしたりする人が多くいた。それどころか零断に挨拶する人も意外と多かった。ウィリアムがそばにいるからだろうが。
そして、キズト町を色々観光したあと明日は朝早くにキズト町を出るつもりなので寝たのであった。
次回投稿は来週の日曜日で。
少し溜まったら週2投稿。さらに溜まったら1日1回のつもりです。