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波動の龍者  作者: ケイマ
第1章
20/81

戦闘時間わずか1分たらず

王都の使者が来てから一週間。無事零断の存在がバレることなく王都へ戻っていった。

そして、零断は無感知状態と実感知状態を完璧に使い分けることができるようになった。

それに、GFOで零断が使えた“深夜の暗殺者”の特技を全て波動で再現した。多くの技があるので全て紹介はしない。

というわけで零断は今初めての旅の準備をしている。旅と言っても数日でつくレベルだが。

グレンと約束していた冒険者登録をしに行くのである。

これにはウィリアムとグレンもついて行く。

グレンは普通に付き添い。ウィリアムはまた冒険者になった時のために冒険者レベルを保存しておいたらしい。それの復旧をするそうだ。

それも、王都へ行くからである。

王都へ行くのは零断のため。つまり、全て零断が最初である。しかし、その零断はというと…

「ああ〜…なんかマジで今日力が入らねぇ〜」

「「「……」」」

ついさっきまでゆっくりゆっくり作業をしていたはずの零断はいつの間にか自室のベッドでだらけていた。

これには零断にアドバイスをしていたウィリアムとグレン、そして、世話を焼いていたセリアもびっくりである。

珍しく零断に元気がないのでさすがに心配になる3人。

「おいおい。熱でもあるのか?」

「最近魔力を使いすぎで疲れたのかのぉ。」

「零断。大丈夫ですか?」

上からグレン、ウィリアム、セリアである。

零断は片手を力なく上にあげてを振りながら答える。

「あ〜多分昨日無茶しすぎたからだわ。ちょっと試しで脳から出る電気を調整して索敵範囲を大幅に広げようとしたんだが、ミスって頭がかち割れるほどの頭痛にあってな。それは寝たら収まったんだが、どうも体に力が入らなくてね。明日出発なら今日の午後に準備させてくれ。朝はマジできつい。」

「「「……」」」

またもや沈黙。

1人は零断の馬鹿さに呆れて。

1人は新たなことへの挑戦をした零断を讃えるのと同時に『ノウ』とはなんなんだろうと結構重要なことを考えて。

1人は単純に零断を心配して。

というわけでこの日の午前中は零断の体調不良により潰れたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


午後1時ごろ無事に零断は復活した。

先ほどの説明にはまだ伝えていないことがあった。

それは体を動かすだけではなく、口を動かしたり、考え事をするだけでその部分が痛くなったのだ。なので、顔全体から徐々に電気を抜いていかないとこの痛みが続いていたらしい。脳や体に過剰な電気を与えるとその電気が体に残り、体を蝕むことになる。

零断は寝ながら無意識に体から電気を抜いて行った。

【人は痛みがあるとそれに対応したり改善しようとするからな。】

というのが零断の持論だった。

というわけで、零断も旅の準備をする。

と行っても持って行くものはないに等しい。私物と呼べるものがコンヴィクスしかないからだ。

結果的にグレンと久しぶりの訓練に行ってしまった。といっても明日から旅なので控えめだ。

ウィリアムとグレンは午前中に荷物整理を終わらせたので空いている。

ウィリアムは2人の訓練を横から眺めていた。時々ダメ出しをする。そんな感じだった。

相変わらず一週間体を動かさないと鈍るので1回目は零断はグレンにボコされた。しかし2回目は零断も調子を取り戻し、ギリギリ負けた。

【いけると思ったんだがな。】

次の日に旅なのでこの日はこれで終わりとなった。

ウィリアムは細かいところをグレンと零断に話している。剣で戦うとしても長年高レベルな剣技を見てきたウィリアムはいい師であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日の朝

ウィリアムとグレンと零断は村の入り口にいた。傭兵団やセリアなどの村の人々が見送りに来てくれたのだ。

「お前ら!訓練を怠るんじゃないぞ!」

「「「「はっ!!」」」」

と、グレンが傭兵団に声をかける。

そろそろ行こうかというときにセリアが前に出て来た。

「零断…」

「なに湿っぽい顔してるんだよ。セリアは笑顔が1番だよ。ほら。笑って。」

「…零断。その言葉は口説いているようにしか聞こえないぞ。」

セリアが心配している様子で零断を呼ぶ。零断はそれに気軽に答える。

それにセリアが言葉を返そうといいかけた時にグレンからツッコミが入る。

「別に事実なんだからいいだろ?

セリア。たった一週間だ。王都へ行くときはもっと長いからな?俺に依存するな。」

「…そうですね。私は零断に依存してるのかもしれません。

わかりました!零断の帰りを待っています!どうかご無事で!」

「ああ!じゃあ、いってくる。」

「はい。いってらっしゃい。」

そういって零断一行はテニラ村を出たのであった。

と言っても、街道を歩いて行くだけなので魔物と出会う確率はないに等しい。

さらに、魔物にあったとしても零断とグレンがいる時点でAランク級の魔物出ないと驚異にすらならないのだ。

零断一行は他愛ない話をしながら街道を歩いて行く。その間で零断の波動の力の話になり、必然的に零断の故郷の話に話題が移って行く。

グレンも森の中で少しは聞いたが、零断と涼音との関係などを詳しく聞きたかったようなので零断の過去についてを話すのであったが、その話はまた別の場所で。

朝に出たので、すぐに昼、夜となる。零断の歩くペースが結構ハイペースらしく、このペースで行くとキズト町につくのは1日と半分くらいらしい。昼はセリアに作ってもらった握り飯で、夜はウィリアムとグレンが持ってきた軽い食事になった。零断はどういうのを持っていけばいいかわからなかったので聞いたのだが、

「わしたちに任せなさい」

と言われてしまったので持ってきていない。

ちなみに夕飯は近くにある川から取ってきた水と、それで炊いた米。あとは保存できる干し肉などだった。

干し肉は基本魔物の肉を使うらしい。

魔物の血は人間には毒だが、しっかりと血抜きをした魔物の肉はしっかりとした食べ応えに保存がしやすいので冒険者には欠かせない一品だ。今食べているのはウィリアム作である。肉はグレンが狩ってきたらしい。

夜はウィリアムの昔話を話した。ウィリアムの冒険者時代の話だや、なぜ鍛冶屋を始めたかなど、様々な話をした。そして、気づかぬうちに3人とも眠りについた。

一度零断が無意識に発動している索敵に何かが引っかかり飛び起きたが、それはただの鹿だったので

【明日の朝ごはん】

と思い、一撃で倒してすぐに寝た。

そして、翌朝。零断達は魔物に囲まれていた。

もちろんこれに気づいたのも零断。深夜に鹿を殺して、そのままだったため、その血の匂いに誘われて何時間もかけ、集まってきたのだろう。なぜ零断達をすぐに襲わなかったかは謎だ。

「おいおい。どうなっているんだ?俺でも相当な量の魔物に囲まれていることがわかるぞ。」

「そうじゃの。零断。昨日夜に何かしたのか?」

グレンとウィリアムはまだ旅をし慣れていない零断に聞く。鹿を殺したことを悪いと思っていない零断はそれを正直に話す。

「ああ。索敵内に入ってきた鹿がいて今日の朝ごはんになるって思ったから殺しておいた。どこにいるかも覚えているよ。まぁこんな行動が魔物に囲まれる原因にはならないと思うけどな。」

「ああ。それだけか。なら…ってえ?」

グレンはついつい零断が何も悪いことをしましたという雰囲気を出さないで言ったのでスルーしようとしたが、よく聞いてみると原因はそこにあった。

そして、ウィリアムがそのことを教える。

「零断よ。魔物は血の匂いに帯寄せられてくるのじゃ。だから、殺した動物を放置していると魔物は寄ってくるのじゃよ。」

「……マジすか?」

「マジだ。とりあえず、対処するぞ。早く寝巻きを片付けろ。」

「…マジですんません。俺のせいだった。」

と言い、寝巻きを片付けようとする。それをウィリアムがストップをかける。

「わしがお主らのぶんを片付けておくから魔物どもを蹴散らしてこい。」

その言葉を聞いたグレンはさらにやる気を出し

「聞いたか零断。こいつら全員早く蹴散らすぞ。ウィリアムに全て任せていいのか?」

「いや、いけないな。老人は大切にしないと。」

と、2人は戦闘態勢に入る。2人ともパジャマ姿だが。

「わしそんなに老人に見えるかの?」

ウィリアムのつぶやきが戦闘開始の合図になった。

ウィリアムは2人が飛び出してからため息をつくとまずは自分の寝巻きを片付ける。そして、グレンのに入ろうとした時。零断がもう戻ってきていた。

戦闘時間わずか1分かからず。

「はぁ。雑魚だけだった。範囲技で終了。」

すぐにグレンも後ろから出てくる。

「ほんとだよ。零断が言う『数より質』はまさにこれだな。」

昨日聞いたばっかりの言葉をグレンが使い、その言葉に零断は賛成する。

2人は自分で自分の寝巻きを片付けて、朝ごはんに入ることになった。

と、そこで相変わらずやることがない零断が提案をする。

「あ、俺昨日殺した鹿の様子を見てきていい?」

「ああ。と言っても食い散らかされているだけだろうがな。」

「ありがと。すぐ戻る。」

「了解じゃ。気をつけて行くぞい。」

零断はエレキトルムーブを使い高速でその場所へ行く。ついたところには、透明な紫色に光る石が埋め込まれた鹿が息をせずに倒れていた。

「……あれ?俺が殺したのってまさか鹿の魔物だったのか。さらに、あの魔石結構綺麗だな。持って帰るか。」

というわけで、コンヴィクスを器用に使い魔石を剥ぎ取り、持ち帰る。

「帰ったぞー。」

「おう。もうできてるぞ。で、どうなってた?ってえ?」

結果を聞いてくるグレン。それに零断は魔石を見せる。当然グレンの頭の上にハテナマークが浮かぶ。

「俺が鹿だと思って殺した奴。実は魔物だったわ。」

これを聞いたウィリアムは呆れながら

「そうか。しかし、その魔石。相当透明度が高いのぉ。高く売れるのではないか?」

「ああ。それは俺も思った。というわけでキズト町に着いたら売ることにする。」

「一応、どういうことか詳しく頼むわ。飯食いながら。」

3人は鹿もどきについて会話しながら朝ごはんを食べ、キズト町へまた歩き出した。

その後は特に何があるわけでもなく、グレンの昔話。というか、なぜ王都ではなくテニラ村を選んだかなどを聞いたりしながら昨日と同じペースで歩き、とうとうキズト町に着いたのであった。




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