表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波動の龍者  作者: ケイマ
第1章
19/81

波動の使い方

「おーいウィリアム!荷物持って来たぞ。ここに置いておくからすぐに取って置いてくれ!」

「了解じゃ。」

グレンはウィリアムの荷物を家の玄関の中において帰ったようだ。

ウィリアムはグレンがいなくなったとほぼ同時に玄関へやって来て大きな木箱を見つける。

ウィリアムはそれが荷物なのだと理解し、開けるために一歩踏み出す。

それと同時に木箱が開く。

「うーん!やっとでれた〜」

なんとも呑気な声が聞こえ、ウィリアムは固まる。そして、出て来たのが零断だとわかるとため息をつく。

「はぁ。老人を驚かすでない。」

「スマンスマン。気をつけるよ。」

と、挨拶を交わす。

すぐに零断は本題に移る。

「それで、索敵と隠蔽なんだけどあまりいい感じのイメージが浮かばなくて困ってるんだ。実際に体験したこともないし波動弾とか波剣技より難しいと思うんだ。何かいいアドバイスとかないか?」

と無茶振りする。

するとウィリアムは

「うーむ。わしは実際に使ったことがないからわからないのじゃが、気配を読むのが大事だろうな。まぁ索敵なのだから気配を感じないと全く意味がないからのぉ。お主の話を聞いていると感覚に頼りすぎているぞぃ。」

言われて理解した。ずっと波紋のような『感覚』とか、前に使ったことがあるような『感覚』でやっていたのだ。

索敵とは、人を感知して探すことができることと零断は認識してる。なら、まず気配を感じ取らないといけないと今頃気づいた。

「人の気配…か…。」

そして、考え込む。目を瞑り、周りに『波動』の気配がする。いや、これは感覚か。

そして、その感覚を自分の周りだけではなく、まずはウィリアムの家全体に囲んだ。

すると、ウィリアムがどんな動きをしているかや、どんな形のものがどんなふうにおいてあるかが詳細にわかった。

「うおっ!」

しかし、大量の情報がいきなり頭に入って来たので零断は頭痛に苦しむ。

ウィリアムはいきなり悲鳴をあげる零断を温かく見守っていた。

大物だ。

零断はその感覚に頭を慣れさせていると不意にウィリアムの家の前に多数の人を感じ取った。

「ウィリアム。お前の家に6人?くらいの人が向かってるぞ。」

「む。多分王都の使者だろう。2階に上がって隠れてろ。」

「了解。そのうちも練習してるわ。」

零断はタタタタと階段を上がる。

ちなみにウィリアムの家は平民とは思えないほどの金を使って作ったため大きく、2階建である。村長の家より大きい。

【この村。村長より権限や家がでかい人多くないか?】

と、なんとなく思う零断であった。

2階に上がり、適当な部屋でまた頭を慣らす。

そして、徐々に範囲を広げ、村全体を入るまでにするのが目標だ。少しずつじゃないと頭が沸騰しそうなので地道にやる。そして、この索敵を常時使うように心がける。

ほんの少しずつ大きくなっていく範囲。

その周りのすべてのことがわかるようになる感覚を零断は感じたことがあった。

【そうだ。“深夜の暗殺者”の特技に似ている。というか、ほぼ一緒だ。確か名前は“アサシンフィール”だったな。

…というか、正直名前かっこ悪りぃな。

“深夜の暗殺者”の特技、技は全て最初か最後に“ナイト”か“アサシン”が基本付いてたからな。それにしても『暗殺者が感じること』か…

俺この世界でも暗殺者になるのかな?】

しっかりと索敵の範囲を広げながら零断は意外と真剣に考える。

【つまり、索敵が一緒なら隠蔽も一緒か?確か、自分のMPを使えば使うほど隠蔽率が上がったな。うん。こっちで波動を纏えば纏うほど目立つよな。どうすりゃいいかな。】

地味に索敵の範囲を隣の家まで広げている零断。

しかし、零断の心はもう索敵ではなく隠蔽の方を向いていた。

しかし、そんなことは束の間。零断はすぐに索敵に注目することになる。

【ちょっと待った。なぜ大人数の人が2階に上がってくるんだ?ウィリアムっ!しっかりしろよ!】

と言いながらどうにか大きな箱の中に隠れる。隠れた直後に王都の使者が上に上がって来た。

ウィリアムと何か話している。

【聞こえないな…波動の密度を高くしてみるか。】

と考えてウィリアムの家から1.5軒ほどの距離まで行っていた索敵を一気に縮め、ウィリアムの家の2階だけにする。

すると声ではなく、口の動きから波動を通して『音』が聞こえて来た。

「……からウィリアム老師の力が必要なんですよ!王都の鍛治のレベルを上げるためにぜひ王都に!それか王都から弟子をとってください!」

「だから断ると言っておるではないか。早く下に降りるぞ。作業道具はもう見ただろう。」

さりげなくしたり降りることを進める。しかし、そんなことなど露知らず、王都の使者は2階にあるウィリアムの作業道具を見て回る。

零断はここが危険と気づく。もうこちらまで迫っているのだ。

この時。零断は無意識に隠蔽を使っていた。

ゲームでの癖だ。もともと『波動』の援護系の技が『深夜の暗殺者』に似ていることに気づいていたからだ。

今零断の頭の中は『GFO』の記憶が蘇っている。それが理由だ。

零断はバレないようになるべく早足で窓へ近づく。

と、その途中。いや、もうすぐそこの時に使者の1人と目があってしまった。

【や、やばい!!】

と、焦っていると何事もなかったかのように他の方を向いてしまった。

そして、零断が今まで隠れていた大きめの箱が開けられる。ウィリアムは零断が隠れるとしたらここだとわかっていたので開けられた瞬間どうするかと悩んでいたが、何もなかった言われ、辺りを見回す。

零断の方向を向く。

スルーする。

【なんでやねん!】

と、内心ツッコミをする。エレキトルムーブを使うために魔力を出そうとする。しかし、そこでやっと気づいた。自分が波動を纏っていることに。

そして意識してみると何をしているかがはっきりとわかった。

【…ゲームでの隠蔽をしているのか…でも、完璧にできているな。サポート系波動は“深夜の暗殺者”と基本似ているのか。】

そう考え、隠蔽、索敵とは違う能力を使ってみる。

それは視界内にいる特定の人物に自分の意思を伝える技。“深夜の暗殺者”は基本レイドの戦闘中も気配を消しているので自分のやりたいことを簡単に教えることができるのだ。そして、相手側もコツを掴めば返事を返せる。

とりあえず零断はウィリアムに

《窓からセリアの家に高速で帰る》

と伝える。

その瞬間。

《わかった。くれぐれも見つかるな》

とウィリアムから返された。

零断は苦笑いする。この伝達方法を初めて受けて返事を返せる人はほとんど会ったことがなかったからだ。

そして、零断は窓をゆっくりと開け、外へ飛び出す。

その瞬間に身体強化とエレキトルムーブをうまく使い、上空で高速移動する。

そして、セリアの家に着くと隠蔽を消さないまま中に入る。もちろんそっとだ。もし、セリアの家に王都の使者がいたら困るからだ。

実際は何事もなかった。セリアは農作業をしに行っているようでここにはいなかった。

零断は一息ついてから自室へ入り、他に使える技があるかを試すのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


零断が部屋にこもってから少し時間が経った後、1人の男性の気配を感じた。もちろん索敵で。

【この気配は…ウィリアムのはずだ。】

なんとなく覚えている気配に安心し、リビングへ水を飲みに行く。

すると予想通りウィリアムがドアを開けた。

「おお。零断いたか。」

「おう。うまく逃げられたよ。」

と、とりあえず零断の部屋へ入れる。リビングで話していると、もし使者が来た時にバレてしまうからだ。

「さてと、何か用?まぁ、予想はついているけど。」

「その予想通りじゃろう。あの時どうやって抜け出したかとあの伝達方法は何かということじゃ。」

零断は予想通りの質問だったのでもともと少し考えていた効率の良い説明をする。

「隠蔽を使っただけだよ。元の世界で使っていた技と似ていたから無意識に使っていただけさ。あと、あの伝達方法も元の世界で使っていたものだ。索敵、隠蔽ともに元の世界で使っていたものとほぼ同じだったからこの技も使えるかなって思ってさ。」

零断のこの説明は正直説明になっていない。どういう風に使ったかとかを何も言っていないのだ。当然ウィリアムは不思議に思うわけで、結果的に1から説明することになった。

「波動には2種類あるだろ?索敵や隠蔽に使うような誰にも感じられなかったり見ることができない状態と波動弾や波剣技に使う具現化した状態。先に言ったのを『無感知状態』。後に言ったのを『実感知状態』と言おう。

今回使ったのはその無感知状態だ。無感知状態の波動は広げることで索敵を行うこともできるし、範囲を縮めれば見えない相手や聞こえない声を感じることができる。さらに、それを纏えば隠蔽することもできるんだ。」

「ならば、あの伝達方法はどうやるのじゃ?」

「あれは俺とウィリアムの間に波動の濃い空間を作り、波動を相手に感じさせるんだ。

多分ウィリアムはその波動をうまく感じ取ったんだろうな。だから俺に言葉を返すことができたんだよ。」

「ほうほう。面白い話じゃ。ならばいつも零断が纏っている波動はなんなんじゃ?どちらにも当てはまらんだろう?」

「これはどちらにもなっていない無感知状態と実感知状態の元素ってところかな。この状態から2つの状態に分けることができる。あえていうならば『無変化状態』というべきかな。」

詳しい説明にウィリアムは感心する。

この零断の存在がバレそうになる事件のおかげで零断は波動の性質や使い方などを大きく理解した。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ