セリアの気持ち
村に戻ってからセリアや村長などになぜ昨日帰られなかったかを話した。基本全て驚かれたが、ボルケニクスを倒したと伝えた時は本当にすごかった。村人全員が零断と、グレンの胸ぐらを掴んでグラグラ揺らす。流石に連戦後のこれは疲れてきた時に、セリアが泣きそうな顔で他の人をどかしてやってきた。
【どこにそんな力があるんだよ…】
と、内心突っ込んでいる零断であった。
セリアは零断の目の前に来ると零断の手を掴んでその場を後にしてしまった。もちろん零断も連行された。
その出来事が終わっても、その場はカオスだった。セリアに引っ張られて、グレンが見えなくなった時に、零断は思った。
【後は頼んだぞ。苦労人】
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「セリアぁ〜。もうそろそろ自分で歩くよぉ〜。だから話してぇ〜!引きずらないデェ〜!」
あの騒がしい場所から抜け出せたことを感謝しようとしたらさらに早い勢いで引きずられた。立とうにも絶妙に早くて立ち上がれない。まぁ、魔法使えば立ち上がれるし引っ張られているこの状況を打開できるのだが、そんな気にもなれなかった。
その理由は一瞬零断に見せたあの泣き顔だ。全ての感情を溜め込んでいる時の顔だ。つい昨日この顔を見たことがある。グレンだ。
【よく似た従兄妹だな。】
と思い、もう立つのは諦めていたら、セリアの家に着いた。しかし、家の中まで引きずられた。そのまま何もせず引きずられていたが、リビングに着いた瞬間。不意に胸に抱きつかれた。泣き声が聞こえる。ボルケニクスを倒したと聞いた時から我慢していたのだろう、と思い、零断は背と頭を撫でる。すると、さらにギュッと抱きつかれる。嗚咽も聞こえてきた。零断はセリアが泣き終わるまで撫で続けた。
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それからどのくらいの時間が経っただろうか。セリアが泣き終わり、2人はソファーに座っている。ちなみに2人は恋人のようにくっついている。セリアが離れないからだ。実際零断はセリアにそういう風に見られていることに薄々気づいている。しかし、“彼女”のことも気になるのでどうすればいいのかわからないのだ。前はグレンにもう良いといったが、実際はまだ迷っている。この世界に来た可能性も高いからだ。そもそも零断と“彼女”と“親友”は一緒のタイミングでGSOにログインしようとしたのだ。来ている可能性の方が高いと思われる。だから、やはり諦めきれない。
話を戻そう。零断はセリアに話しかけようとすると、セリアから話しかけて来た。
「すみません。いきなり引っ張って、さらに抱きついちゃって。」
「…そこに引きずられたことも入れようぜ」
「ふふふ。そうですね。まぁ、そのことは置いておいて。」
「おいておかないでくれよ。セリアさーん。ああわかったよ。なかったことにすれば良いんだろ?」
「はい!」
と、セリアはすごくにこやかに笑った。それについ零断はドキッとしてしまった。セリアのいままで見たことのない笑顔で心がドキッとしてしまった。
「本当はずっと秘密にしようと思ってたんですけど、まさか倒しちゃうとは思いませんでした。」
「…一応、倒した時の詳細を話そうか?」
「お願いします。どう倒してくれたのかを知りたいです。」
「…俺の感情まで言わないとダメ?」
「?まぁ、一応お願いします。」
「えぇ〜超恥ずかしんだけど…まぁしょうがないかな。」
それから2人は寄り添いながら話した。
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「零断は私のために倒しくくれたのですか…」
「ああ。恥ずかしいことにそのことを聞いた瞬間には体が動いてたよ。」
というと、セリアに横から抱きつかれた。
「…セリア?」
「ありがとうございます。そして、ごめんなさい。どうしても両親の…ボルケニクスに殺されてしまった人たちの復讐がしたくて…けど、私には力がない。だから、どうすれば良いかわからなかったんです。そしたらちょうど零断が倒れていたんです。1日目は何となくでした。ただの善意でした。けど、その1日目で、この人が何かをしてくれるっていう予感がしたんです。この人と一緒にいると楽しい。あまり笑えなかったはずの私を笑わせてくれたんです。
そのあと、数日後に私を超える力を見せてくれました。そして、その後も、その後も、何度も私を驚かせてくれました。そして、すぐにあなたは私にとってボルケニクスを倒してくれるかも知れない人ではなくなったのです。」
零断は無言で話を促す。
「昨日、零断が森へ行った後はずっとそわそわしてました。帰ってこなかったらどうしよう。全身重傷で動けなくなっていたらどうしようって。そして夜になっても帰ってこなかった時は心が辛かったです。いつも話を盛り上げてくれる零断がいない。また両親を失った時に感じた喪失感だけがありました。正直、泣きそうでした。そして、自分の気持ちも理解しました。これが、その証明です。」
というと、セリアは体を伸ばして零断の頰にキスをした。零断は何が起こったかわからない様子で顔を赤くして固まってる。
「零断には元の場所に“彼女”がいたことは知っています。けど、私には零断しかいません。この気持ちだけでも良いので受け取ってください。」
と言ってセリアはまた体重を零断に乗せて来た。その暖かい感触に少しずつ頭が回り始め、ようやく考えられるようになった時に零断はセリアの顔を見てしまった。セリアはこっちを見て顔を赤くさせながらふんわりと笑った。その笑顔でまた零断の思想が滞る。
その後、何回もそんな感じのことが繰り返され、やっと零断の考えがまとまった。
「俺はあっちにいる時に“彼女”と約束したんだ。もし、離れ離れになったとしても絶対に会うって。」
「…もちろんそうですよね…大丈夫です!私のこ「けど!」っ!」
セリアが諦めのような言葉を吐こうとするので零断は大きな声を出して止める。
「異世界は実際の距離感覚ではない。この世界に来ていない可能性もあるんだ。
俺はこの世界に来ている。そして、元の世界に戻る方法がわからない。なら俺はこの世界で幸せに暮らせるようになりたい。そのためには、『愛する人』も必要だろう?
けど、まだ“彼女”がこの世界にいていないとわかったわけじゃないからな。とりあえず、多分ここ1年の間には王都に行くから、そこで情報を集めて、それでも見つからなかったら、恋人になろう。」
「、ッ!?!?」
セリアはびっくりしたような顔をして零断を見ている。こんな風に言い返されるとは思ってなかったのだろう。少しずつ、言葉を紡いで行く。
「わたし…なんかで…」
「セリアだからいいんだよ。まぁこんなこと付き合う前から言うのはダメかもしれないが、まずまず、最初に助けてくれなければ俺は死んでいた。正直それだけでセリアの我儘を何個も聞いてあげる価値はあると思うよ?」
「だって…私は…零断を…利用しようと…」
「それでも今は違うだろ?ならいいじゃないか。」
「だって、だって、私は!」
自分のことを貶して、大切な人がいるはずの人を止まらせようとする。しかし、それは褒め言葉で返される。そして、自分じゃダメだと強く象徴しようとした時、零断は真正面からセリアを抱きしめる。
「セリアはそんなにひどいやつじゃない。俺のことを救ってくれて、俺のことを癒してくれて、俺のことを思ってくれているんだ。たから、そんなに自分を貶すなよ。」
ついに耐えきれなくなったのか、この家に入って来た時と同じくらいの音量で泣き始めた。それを、零断は先ほどとは違う、優しく、先ほども優しかったが、さらに優しく、心を癒してあげるように頭を撫で続けるのであった。
多分…4月には…1日1回投稿が…できる…はずだ…