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波動の龍者  作者: ケイマ
第1章
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『剣』と『波動』


零断がボルケニクスを倒した時、グレンはただ呆然とそれを見ていた。セリアのことを話したあと、あの少年のどこにそんな力があるのか?と思うほどの圧倒的な『力』を感じた。魔力ではない。感じた『力』が何かはわからないが、あっという間にその『力』を使いボルケニクスを真っ二つにしてしまった。その時、複雑な気持ちになった。ボルケニクスを倒せたことは嬉しい。ここ数年の目標と呼べる存在だったからだ。しかし、それをボルケニクスの上をいく圧倒的な力でねじ伏せた零断に対して恐怖を覚えた。この少年はなんなんだ?約1カ月前にいきなり現れて、凄い才能を発揮して、剣技ならばもうすぐ抜かされると思うほどに。

今、この少年を殺さなければいつかこの力を自分たちに向けるかもしれない。そう考えると無意識に剣をあげていた。

しかし、零断と過ごした1ヶ月ほどが今までよりすごく楽しかったのは確かなのだ。さらに、セリアを笑顔にさせてくれた恩人でもある。そんな人を切っていいのか?という感情も出てくる。この二つの感情で迷っていると不意に零断が倒れた。それと同時に今まで感じていた強大な『力』を感じなくなった。その力がなくなったら頭が回るようになった。そして、少しでも頭が回るようになったならグレンのする行動は決まっている。ゆっくりと歩きながら零断に近づいていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


零断は気がついたら夢の中のような場所にいた。

【この感覚。どこかで…あ、神職の儀式の時か。しかし、なんで今こんなことが?】

と不思議に思いながら手足があるかを確認する。なんとなく小説や漫画でよくある、別の場所に着いたら監禁されてるとかを確認するためだ。今回は特にその問題もなく、手足は無事だった。一安心して、歩き始める。立ったままじゃ何も起こらないと思ったからだ。そこに危険があるなら人生お疲れということで。

歩いていると、不意に人影を見つけた。いや、正確にいうと人ではない。頭から生えている一対のツノ、自由自在に動く尻尾、そして、禍々しい羽。

【なんだ、ありゃ…人間…ではないな。ならなんだ?糞ッ!視界がぼやけていて何も見えない!】

その影をしっかりと見ようと、小走りになった零断。すると、その影が何かを言った。いや、言ったように感じだ。

「なんだよ!聞こえねーよ!」

と、叫ぶが反応がない。零断が本気で“エレキトルムーブ”を使おうとしたらその影は何処と無く消えてしまった。いきなり消えた影に呆然としていると、だんだん意識が覚醒していった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


零断が目覚めると、もうあたりは真っ暗だった。隣ではグレンが周りを見ていた。起き上がると零断の行動に気づいて顔を向けてきた。

「よぉ。起きたか。大丈夫か?思いっきりぶっ倒れたぞ?お前。」

「ああ。大丈夫そうだな。…なんとなく違和感は感じるけどな。今までなかった力。けど、全く不快ではない。逆にそれがあるのが心地いいくらいだ。」

「…それはあのボルケニクスを、倒した時に使った力か?」

「…多分…な。実際に使って見ないとわからない。けど、多分これは『波動』だな。」

零断が予想外の言葉を出したことでグレンは驚く。

「?!?!あれが…後ろにいた俺も零断があれを…波動を出した時には恐怖を覚えた。まぁ、今はもうそんなことないがな。」

「恐怖か…それは多分波動じゃないぞ?。いや、波動もかも知んないけど…」

零断が恐怖と言われてピンとくるのはこの剣のことだ。この剣は戦闘中、俺の気持ちを感じたように、理解してくれたような感覚になった。その時、剣が理解してくれた殆どの感情は殺気だ。それならグレンが恐怖を持つのも納得できる。

「ん?どういうことだ?」

と、意味がわからなくて聞き返してくるグレン。それに、零断は自分の感じたことをそのまま話す。

「多分グレンが恐怖を持った理由はこの剣だ。」

「は?どういうことだ?」

さっきと同じような質問に苦笑しながら零断が答える。

「この剣は戦闘中に、俺の感情を読み取ったように感じたんだ。そして、感じ取った感情の殆どは多分殺気。つまり、俺がボルケニクスに出した殺気の殆どをグレンも浴びたことになるな。多分、この剣は俺限定で俺の信念(感情)を読み取れるんだ。正直チートレベルだな。

使い手の感情に合わせて切れ味や強度を変化させるなんてな。」

その説明を聞いてグレンは絶句している。

無理もない。剣が感情を読み取るなんて聞いたことがない。グレンの剣もウィリアムに作ってもらったもので『始炎剣』という。その名の通り何もないところから魔力も使わずに火を作り出すことができる。もちろんグレンの魔力を使っているのでグレンの専用武器だ。

しかし、やはり零断ほどのチートではない。零断の武器は零断の感情が強ければ強いほど圧倒的な力を見せる。感情があれば伝説級の魔物すら斬り裂ける可能性があるのだ。

「だからさ、俺はこの剣の名前を決めたよ。この剣の名前は『コンヴィクス』だ。」

「『コンヴィクス』…どういう意味なんだ?」

「確か、『信念』っていう意味だったはずだ。元の世界で聞いたことがあったんだ。」

「『信念』…か。いいじゃないか。いい名前だ。明日早く帰ってウィリアムに報告しないとな。」

「ああ!これからもよろしくな。『コンヴィクス』!」

零断は名前のついた相棒に向かって声をかける。それに苦笑しているグレン。

その後、少し雑談してから零断がふと気になった事を聞いた。

「そういえば俺が倒してよかったのか?」

「ん?ボルケニクスのことか?そりゃ当たり前だろう?セリアの両親や、多くの村の人々の仇なんだし。」

「いや、だからこそだよ。お前が倒したかったんじゃないのか?お前ってそういうところちゃんとしてるじゃん。」

「んー。正直俺が倒したかったっていう気持ちもあった。けど、俺には倒せないしな。それに、零断はセリアのためを思って倒したんだ。正直それで満足だ。」

「そうか。ならよかったよ。」

「そういえば礼を言ってなかったな。

零断。ボルケニクスを、セリアの両親、村の、人たぢの、がだぎを、ゔってくれて、、ぅぅありがとう!」

と、最初の方は普通にしてたのだが、零断に礼を言い始めた時から涙が溢れ出てきて零断に今まで見せたことのない顔を見せた。

【グレンが泣いているのを初めて見た。こいつは正義感が強く、すごく頼り甲斐があるやつだと思っていた。実際その通りだ。けど、やっぱり男だよな。全て自分で背負っていたんだろうな。尊敬するよ】

零断はそう思い、グレンの背を撫でた。グレンはそのまま長い間気がすむまで泣き続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


グレンはそのまま寝てしまった。元々疲れていたのだろう。今日だけで村を出て森に入り、様々な魔物を倒し、念願の相手。ボルケニクスにもあった。しまいには零断の世話だ。相当な苦労があったのだろう。零断はそう思い、見張りは自分でやることにした。見張りの間、零断はやっと感じることができるようになった波動と触れ合う。今下手に波動を使おうとすると、魔物を引き寄せてしますかもしれない。だから、感じられる波動と触れ合い、理解する事を選んだ。波動は精霊のようなのに精霊ではなく、魔法のようなのに魔法ではない、とても不思議なものだった。けど、何と無くわかる。この波動を動かすことは手に取るようにできる。しかし、感情を、持っているようにも感じる。零断はそれを少しでも理解するために一晩、ずっと波動と触れ合うのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


火が出てきた頃に零断はグレンを叩き起こし、村の方向へと歩いていく。2人とも、もう昨日のことは気にしていないようだ。逆に昨日のことを話しのネタにしながら結構ハイペースで森を進んでいく。一回本気の競争だとかグレンが言い出したので、零断が“エレキトルムーブを使い、グレンを涙目にさせたというトラブルがあったが、基本良いペースで森を進んでいった。魔物の襲撃も無意識に零断が反応するのですべて対処できていた。昨日に比べて本当にスムーズだった。零断の無意識の中での波動などがでかいだろう。現状無意識の波動は諦めている。全ては家に帰ってからだと思っている。

そしてついに2人は森を抜けた。ここからはもう数10分歩けば村が見えてくる。森を抜けた時には2人とも走り出していた。零断がグレンを置いていくので、零断はゆっくり目ペースで。といっても早いが。

そして、見えてきた村は………

なくなっていた。


なんてこともなくいつも通りグレンの部下が門番をやっていた。2人の門番は零断とグレンを見つけると、片方が全力で村に入って行き、1人は周りに叫んでいた。

すると中から桑を持ちながら全力で走ってきた女性を見つけた。セリアだ。セリアは零断の姿を見ると、嬉しそうな顔をした後、次に心配そうな顔になり、桑を置いて村を出てきた。

そして、ようやく話せるほどまで近づいたところでセリアが聞いてくる。

「大丈夫ですかっ?零断!すごいボロボロですよ!グレン従兄さんも大丈夫ですか?怪我はないですか?早く村に入ってください!」

「大丈夫だよ。セリア。服はボロボロかもだけど、中身は大丈夫だから。」

「まぁけど、疲れてるのは確実だ。いろいろ説明することがあるから、とりあえず、全員集めてくれ。」

「わかりました。みなさんに伝えてきます!」

といって、村の方向へと走っていった。

「全く。元気なやつだな。」

「それがいいとこだけどな。お前が取り戻してくれたセリアのいいところだ。」

「その言葉いちいちいるか?俺はいつも通りしてただけだ。」

「そうなのかもな。まぁ、多分全員に感謝されるだろうから覚悟しておけよ。」

「了解です。グレンさん」

と、2人で長いようで2日という短く、でかい冒険から帰ってきたという感覚を味わっていた。

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