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プロローグ~ 下界に天使が舞い堕ちる

ここは、天界


全能の神と、その使い達が住む聖なる場所。

それぞれが自分の役割を持ち、日々人間のために働いている。


彼らは、恵みをもたらし、試練を与え、勇気付け、信じる者を救う。全ては人間のためである。


魂だけの存在であり、身体を持っていないので、肉体的疲労を感じることがなく、24時間体制で働いているのだ。

しかも無給である。

ブラック企業もドン引きだろう。


肉体が無くても、精神的な疲労はある。

この世が始まって以来かなりの年月働いているため、流石にストレスも溜まるのだ。

そのため、彼らは「試練」と称して、人間に悪戯をして発散していた。


例えば、人間がトイレに入った時...

神の権能を行使し、紙を消滅させるのだ。

そして、人間がアワアワするのを見て、楽しむ。

すごい地味だが、娯楽に飢えた天界の皆様は大爆笑。

肉体があったなら腹筋崩壊である。


まぁその後は、偉大なる神の説教タイムが待っているのだが...


近年では「マンガ」なる物や、「アニメ」が大流行した。

娯楽が増えたため、ストレスも軽減されたのだが...

仕事があるにも関わらず下界に降りていき、

テレビや雑誌に釘付けになってしまう者が続出。

続きが気になりすぎて、仕事効率も低下...


これには全能の神もマジギレしたため、

初めて天上に土下座の列が出来た。


「次サボったら、ネタバレするからね!」


この言葉により、とりあえずは解決。

流石、全てを知る存在である。エグい。


まぁそんな感じで、なんとな~く天界の秩序は保たれ、

今日まで人間は繁栄してきたのだ。


ところが、ある日、事件が起こった。

この物語は、そこから始まる...



ーーーーーーーーーーーーーー


天界...「奇跡の神殿」

そこに、気まぐれな天使が一人...


「さてさて、今日は何して遊ぼうかな~っと」  


毎日が退屈な彼女は、いつも楽しそうなことを探して

フラフラしているのだった。


「ハゲオヤジのカツラを飛ばすのも飽きたし~...おにぎりの具を抜くのは...この前もやったし~...やっぱりアニメ見ようかなっ」


私は今日も下界を覗く。


人間ってズルいよね~

楽しい事がいっぱいあってさ。

私達なんて同じような日々の繰り返しだ。

仕事も無限にあるからやってらんないし。

実際、全然やってないしね~。

まぁ私って偉いから、許されちゃうんだよね!

大天使様だぞ~?上から3番目に偉いんだぞ?

だからサボっても平気平気~


あ、このオッサン今日も仕事せずにアニメ見てる。

私の好きな「魔法壮年マジカル☆リーマン」だ。

ちょうど良いから見せてもーらおっ

脂ぎったオッサンと一緒は少し嫌だけど...仕方がない。


「この神殿にもテレビがあったらな~」


私達天使は、下界の物体に無闇に干渉してはいけない、という決まりがある。

そんなの無ければ、勝手にチャンネル変えたり出来るんだけどね...

人間がテレビを点けている時じゃないと見れないだなんて、不便だ...



『妻の放った魔法「FXブラックホール」に為す術なく倒れたリーマンよしお...!多額の借金が容赦なく襲いかかる!頑張れよしお!働き続ければ、きっと明るい未来が待っているぞ!...次回「よしお、臓器を売る」...みんな見てね!』



...30分って本当に短いね。

もう終わっちゃった...続きが気になる~っ!

人間の考える物って...

なんて下品で、愚かで、こんなに面白いのだろうか。

それに比べて、私の居る天界は

「美しく、広大で、つまんない!」

ハァ...


「まさか私が地上なんかに憧れる日が来るとはね...」


さてさて、また暇になっちゃった。

...誰かかまってくれないかな~



「セレディア様!またこんなところでサボって!」


お、ちょうど良いところに。

私の部下の聖霊だ。

ま、要するに使いっパシリの小坊主よ。


「なぁに~?私より位が2つも下の下級聖霊くん?」

「ムカつく!...たまには仕事して下さい!」


そう言って書類の山を押し付けてくる。

うわ~これまた大量に溜まったもんだ

だが、私がそう簡単に働くと思ったら大間違いだ。


「あぁん?誰に向かって言ってんだ~?私は奇跡を司る大天使セレディアだぞっ!仕事なんてしなくていいんだもんね~!」

「...神様にチクりますよ?」


グッ!この坊主、痛いところをついてくる...!


「...やればいいんでしょっ!ほらこんな書類なんて適当にハンコ押せばいいんだから」

「あぁっ!ちゃんと確認してくださいよ!」


うるさいなぁっ!坊主が!

結局、仕事をする事になってしまった。

この糞真面目坊主、おもしろくない奴!


「ふんだ。そんな真面目な顔しちゃって...どうせ頭の中では、私のナイスバディを見ながらエッチな事考えてるんでしょ!あんな事やこんな事!エロ同人誌みたいにっ!」

「何とも思ってませんよ...身体無いんで、そういう気も起きませんから」


あーあ、つまんない!

こんな事なら...

いっそ人間になれたら、なんて思ってしまう。

とりあえず、ガミガミオヤジの神様に怒られるのは嫌なので、やるしかないかぁ...


「あっ、そうそう。セレディア様、手が空いたら来て欲しいとケイン様が言ってましたよ」


ケイン...?

あぁ、あのいけ好かないイケメン野郎か。

何の用だろう。


「じゃあ、私はこれで失礼します。仕事サボらないでくださいよ!」


そう言って、小坊主は去っていった。

わかってるって...

サボらなければいいんでしょ?


「さて...っと!」


このまま書類とにらめっこするのも嫌だから、

先にケインの所に行くとしよう。

サボリではない!

だって呼ばれたんだもん!


私は、下らない紙切れより面白い物を求めて神殿を飛び出した。アイツが何で私を呼んでるのかは分からないが、きっと面白い物があるに違いない。

急いで行こう。ケインの居る「慈愛の神殿」までひとっ飛びだ。


翼を広げ、私は飛んだ



「アレ?」


羽ばたいても上にいけない...?


私はもう一度飛ぼうとして...跳んだ。

おかしいな。

私は翼を.........翼を?


ボロボロと何かが崩れていく。

重い、動かない。

上へ、上へと思うが、私はどんどん下へ。


下へ...


「...落ちてる!?」


おかしい!こんな事は初めてだ!

飛べなくなったなんて...

私大天使なのに...


ぐんぐん落ちていく

下を見ると下界が広がっていた

まあ、下界なんてたまに来るし...

焦る必要も無いはず。無いはずなのだが...


「こ、怖いっ...!」


こんな気持ち初めてだ。

このまま落ち続けたらどうなるんだろう。

恐怖、不安。この私が...?

地上が物凄い勢いで迫ってくる。


「きゃあああああああ!?」


私は生まれて初めて絶叫し

生まれて初めて意識を失った。



ーーーーーーーーーーーーーー



目覚めてから最初に感じたのは、圧倒的な重み。

立つことすらままならない。

そして、自分を覆う、嫌な感じ。

何も出来ないほどの気だるい感覚。苦しさ。


私はやっとの事で重たい目を開けた。

すると、そこには...



いつも見下ろしていた、人間の街があった。

だがいつもとは、違う。



私は、愚かで、下品で、汚らしい街が、

今にも襲いかかってきそうな程、

目の前に「在る」のを感じた。


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