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大学デビューに失敗したぼっち、魔境に生息す。  作者: 睦月
三章 外に出かけてみよう
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サテライトコミュニティと魔物素材

三章がある程度書きあがりましたので、ちょっとずつ投稿していきます。

 最近のニュースでは、未見の魔物たちが増えていっていることが頻繁に報道されるようになっていた。


 それまではゴブリン、コボルト、オーク、オーガなどというアルニア人にも馴染み深い魔物達が主流だった。国や大陸によっては、凶暴な狼の群れや異形の熊なども見られていたがそれらも見知った魔物ではあった。



 だが、最近では子供サイズの黒蟻たち、大きく白い狒々のようなもの、腕が羽になっている人型の鳥の魔物、牛ほどに大きな蠍、鋭い爪を生やした小型の肉食恐竜のようなものまでも見られ始めたようだ。


 それらはアルニア人たちの生活領域から、かなり離れたところに生息していた魔物達、もしくはアルニアの別大陸などでしか確認されていなかった魔物まで目撃されるようになってきている。中には未確認のものもいるらしい。


 それに伴い、アルニア人の転移もさらに増えてきていた。


 アルニアの知識人と各国研究機関の調査結果では、地球に転移させることになる謎の霧が、アルニアでは徐々に拡散しているのではないかとのことだった。新しくきた種族や居住場所から考えるに間違いないようだ。



 ただでさえ都心部ではまかないきれていなかった人口が、ここにきて限界を迎えることになる。


 地代、食費、光熱費、医療費用その他もろもろが馬鹿馬鹿しいほどに値上がりした。

 もう、富裕層以外ではまともに生活できる環境ではなくなってきていた。

 ニュースでは数々のデモ活動に、政治家へゴミクズを投げつけていたり、機動隊との激しい接触などはいつでも起こっていることだった。



 そこで政府は都心部の人口を拡散させようと、アルニア人や貧困層の住人には都心部周辺への新コミュニティの開拓を推奨しはじめた。


 ある程度の防備が整うまでの自衛隊の派遣、または冒険者たちへのコミュニティ護衛依頼の一部負担金、一定期間内であれば最低限度の食料、医薬品の支給などが支援制度として公表されている。


 財政難に苦しむ都心部にしては意外にも太っ腹にみえる政策だったが、そこにはちゃんと理由というか、儲けの当てがあった。



 魔物素材の有効活用の道が開けたのである。



 ゴブリンの睾丸に含まれる成分は繁殖薬として利用可能だった。


 家畜に投与することで出産率を高め、食糧難には今の時点でもかなり貢献している。

 不妊で悩む夫婦にも効果があるため、人種用の錠剤としても販売され始めているようだ。


 オークの性器を原材料にした薬は、効果の高い媚薬としてグレーな部分ではあるが合法的に市場に出回っている。

 特にこれといった副作用も見当たらず、今や若い人の間では大流行している。

 それを専門に扱うネットショップも数多く乱立しており、一山当てた人もたくさんいるようだ。もちろんセックスレスで悩む熟年夫婦にも人気は高い。

 やはり風俗産業はいつの時代も強いようだった。いまやオークは金の成る木として性器を狙われている。ちょっとだけ不憫に思う。


 オーガに関しては、角を粉末にすることで強い筋力増強剤になり、一時的な興奮作用と、恐れ、痛みを感じにくくなるという精神的な効果が認められている。

 格闘家やアスリートには陰ながら人気であり、自衛隊でも只今研究中とのこと。

 ただし、かなりの希少品であり高額なので、未だ未解明の部分も多く滅多には出回ってはいない。

 

 そこで、オーガの角のようにゴブリンの角を粉末状にして服用してみたところ、一時的に理性が薄まりハイになれることがわかった。


 発見当初は精神安定剤、うつ病薬として期待されていた。


 しかし、常習もしくは過剰摂取で、恒常的な理性の低下による本能的な行動を取りやすくなることが認められ、今では禁薬とされている。

 禁じられれば求めるものが出てくる。

 安価な素材で作れるドラッグとして、都心部スラム街では『鬼成り(きなり)』という名称で早々に出回りはじめていた。



 最近目撃され始めた新しく転移してきた魔物たちに関しても、その攻殻や爪、牙、皮などが冒険者や自衛隊の装備として流用され始めている。

 魔物素材の方が魔力を纏った時の効果が高いこともわかっており、中には特殊な能力を発揮する素材もあるようだ。

 今や魔物産業抜きでは経済が成り立たなくなってきていた。



 これら全ての素材は、魔素濃度の高いエリアほど高品質で効果が上がることも研究の結果判明している。



 政府が都心部周辺に新コミュニティの開拓をすすめるのは、周囲からの食料供給率を高める事はもちろんの事、魔物たちから都心部を守る防波堤として冒険者たちの前線拠点にも使おうという意図からだった。


 各地で採れる食材や魔物素材などと引き換えに、都心部からは優先的なインフラ整備や技術提供をしていくという体制で、都心部周辺に位置するサテライトコミュニティが徐々に増えていく事になった。

 



 だが、都心部からの干渉を嫌い、それら支援制度に一切頼らずに独立したコミュニティを作る者達もいる。その中でも特に大きくなったコミュニティが一つあった。


 都心部からは離れ、どのコミュニティよりも魔境に近い場所。


 ギルド未登録のアルニア人冒険者たちが多く集い、彼らが落とすお金で成り立つ街『アルニアハンターズシティ』と呼ばれる、ほぼ治外法権化したアルニア人街だった。



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