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大学デビューに失敗したぼっち、魔境に生息す。  作者: 睦月
二章 樹海の町の住人たち
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獣人とランバード②

ヤーシャ視点です。

 翌朝、レンにしっかりと起こされてランバード用の納屋まで歩いていった。

 正直スッゲー眠いし、ダルい。

 ランバード一匹くれたらいい話じゃんか。


 

 納屋の前につくと、作業着姿のケイさんがいた。

 俺の姿を見て笑顔で子供サイズのツナギを渡された。木陰で着替えておいでと言われ、言う通りにした。



 まず、最初にやることはランバードたちの納屋の掃除だった。


 ケイさんが早くに起きて採っておいた果物や野菜を外にある餌箱に置いておくと、納屋にいるランバードたちが目を覚まして外にでてくる。


 いつまでも寝ぼけて出てこない奴には、直接果物を目の前に持って行き優しく起こしてあげていた。



 全員が外に出たら納屋に入って掃除するんだけど、これがまたすげえ臭いだった。


 ランバードの糞尿や、食べ残し、それに群がる石ダンゴもいた。

 獣人の鼻はこういう時本当に困る。他の人種にはわからない細かな匂いまで嗅ぎ分けるから、ひどい時には頭が痛くなるほどだ。


 そう思っていると、ケイさんが布きれを渡してきてくれた。見るとケイさんも鼻から下を布で覆っている。



 まずは糞尿やその他のゴミをひとまとまりにかき集める。まとまったら、今度は一輪車を持ってきてそこに積んでいく。


 納屋から少し外れた所には、膝上くらいの柵がある大きな穴があり、そこに荷台の中身を放り込む。

 底を見てみれば大量の石ダンゴたちが群がっていた。見るんじゃなかった……。



 その作業を終わるまでずっと往復するんだけど、終わる頃にはとっくに外は明るくなっていた。


 全部外に掃きだしたら、今度はブラシを使って水洗い。

 ケイさんが水魔法を使って、俺は近くの井戸でバケツに水を貯めてきては納屋にぶちまける。今は風属性な自分が恨めしい。



 ーー ハッ!! 風で匂いを外に押し出そう



 思いつき、すぐにやったらケイさんに大絶賛された。


 かなりマシにはなってきた納屋の中をケイさんと2人でゴシゴシゴシゴシデッキブラシをかけ続ける、ひたすらひたすらデッキブラシで掃除する。



 やっと終わったと思ったら、太陽がもう真上に来そうになっていた。



 汗だくで納屋の壁にへたり込んでいると、ケイさんに連れられ井戸の側で思い切り水浴びをした、めっちゃくちゃ気持ち良かった。

 綺麗なタオルで体を拭き、縁側に座って涼んでいると、小鬼族のお姉さんがおにぎりと味噌汁、あとお肉や野菜をいっぱいお盆に乗せて持ってきてくれる。


 そういえば朝から何も食べてない、掻き込むように食べる俺をケイさんたちは笑いながら見てくれていた。



 いっぱい食べたあとは、和室でちょっとお昼寝休憩。

 日が少し傾き、涼しくなったところで仕事を再開する。


 納屋の側にあるランバードたちの寝ワラを取りに行く。

 樹海で取れる細くて柔らかい草を干したものらしい。

 その束を荷車に積んで納屋の中に敷き詰めていった。

 それをまたひたすらリピートリピートリピート。



 やっと終わったら、今度はランバードたちのブラッシングや爪の手入れをしてやっている。

 ケイさんにお世話されるランバードたちは皆んな気持ちよさそうに目を細めていた。

 おれもやってみようとブラシをかけてみると直ぐに嫌がられる。……なんでだよ?


 ケイさん曰く、力加減やブラシの向きが悪かったらしい。「しばらくは見て覚えてね」といわれた。


 最後には、また餌箱に大量の新鮮な野菜と果物を用意してその日は終了。



「はい、今日はここまでね。お疲れ様でした」

「………プゥウウウーー。づかれだーーーー」



 汚れるのも気にせずに、大の字になって倒れこんだ俺をケイさんは笑いながら見てくれている。

 なんかケイさんがランバードに好かれる理由がわかる。この目は安心できるんだ。



「ねえ、明日も同じ?」

「うん、同じ。慣れてくれたらもっと一杯仕事任せるからねー」

「えーーー、もう十分だよー」

「ははは、すぐ慣れるよ。それにランバードからもね」

「…………本当?」

「本当。自分のこと大事にしてくれる人が好きなのは、どんな生き物も同じだよ」

「んーーーー、じゃあがんばる」

「うん。頑張ろうね」




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