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大学デビューに失敗したぼっち、魔境に生息す。  作者: 睦月
二章 樹海の町の住人たち
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職人仕事

 ドワーフ達の工房からはカンカンカンとリズミカルな音が響いている。

 設備に必要な材料は自力で色々調達したり作成したらしく、今や立派な住居兼工房になっていた。



 今やっている仕事はオーク達が持っていた武具を一度打ち直しているようだ。

 そのほかにも、各農家の使わなくなった農具などを見つけては新しい道具に変えている。


 樹海の町では刃物武器というのが足りていなかったので非常に助かっていた。

 実際、一角や小鬼族からの依頼で大忙しだとか。


 特に矢の鏃は、今まで単純に木を尖らせていただけなので大人気商品だ。

 一応魔力を多めに込めると十分使えていたので問題はなかったらしいが、魔物相手にすると大分威力に差がでるらしい。


 血脂での錆や、刃こぼれでボロボロだった長剣や短剣、長槍が生まれ変わっていくのを見ているのは実に気持ちが良い。

 使い物にならなそうで倉庫に放り込んでいたのが一杯あったからね。


 額に汗して真っ赤な鉄に槌を打ち下ろしている姿は、飛び散る火花の美しさと豪快な迫力も合わさり見ていて飽きなかった。

 実際、小鬼族の若い者には衛兵隊より鍛冶仕事を覚えたいという進路相談もきている。

 ただいまお爺ちゃんズを交えて相談中だ。



 差し入れに持ってきたオニギリを頬張りながら、休憩中のお爺ちゃんズと談笑中。



「しっかし、なんじゃそのスコップは?」

「俺の専用武器だけど?」

「そりゃ知っとる。じゃが、その研ぎは雑すぎるじゃろうがっ 武器やったら武器でしかっと整備せんかい!」



 ということで、俺のスコップもリニューアルしてもらえるらしい。



 お礼にと、その日の晩に山羊鍋を振る舞っていると、お爺ちゃんズの一人が「鉄鉱石が定期的に手に入るようになりゃあええんじゃがなぁ」と自家製果実酒を飲みながら残念そうに零していた。


 やはり質の悪い鉄を使い回すのは、職人仕事として納得がいかないようだ。



「んーー、鉄鉱石が手に入るような場所はさすがに知らないですね」

「そらそうじゃろうなあ」



 こんな話をしているのを聞いて、ガンジーとロッコが顔を見合わせていた。



 数日後、岩人兄弟が俺へ鈍色の鉱石を1つずつ差し出してきた。

 見ただけで魔力がかなりの密度で凝縮されているのがわかる。


 岩人が生まれる鉱石なの?と聞いたところ、あれとはまた全然違うらしい。確かに魂力がほとんど感じられないね。


 ガンジー曰く、これを土に埋めておけばこの鉱石に魔力がある限り、時間をかけて徐々に周囲の土が鉄鉱石を含んだ岩へと変わっていくようだ。



 さっそくお爺ちゃんズの工房に持って行ってやると、小躍りしそうなほど喜んでいた。


 岩人の2人にひざまづく勢いだったので止めておいたが「精霊さまじゃ、精霊さまじゃ」と抱きついて2人のほっぺにチューしていた。

 2人とも本気で嫌そうだった。ヒゲがチクチクして痛いだろうしね。



 爺さん達に埋める場所はできるだけ町から外れた場所をとお願いしておく。


 どれだけの量が取れるのかわからないが、鉱石の魔力量とガンジーとロッコの雰囲気を察する限り、相当なんだろうなとは予想できるからだ。


 もし鉱石の魔力が切れたら、新しく同じ鉱石を時間はかかるが簡単に作れるようなので、無くなることはないとのことだった。


 何でそんなに協力的なのか不思議だったが、どうやら魔力をふんだんに含んだ石はこの上なく美味いらしい。「ほどほどにするようにね。樹海を石だらけにしちゃダメだよ」といい含んでおく。




 数週間後、良質な鉄鉱石が取れる採掘場が生まれたようだ。


 お爺ちゃんズはホクホク顏で定期的に採掘に赴いている。

 ガンジー達もそれにちゃっかり付いて行っているのをよく見かける。その後ろにはなぜかモンテもついていっている。


 後ろをテクテク歩いていく様子はカルガモの親子のようだった。写メをパシャりと撮っておいた。

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