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大学デビューに失敗したぼっち、魔境に生息す。  作者: 睦月
二章 樹海の町の住人たち
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エルフ視点④

2016/11/29 アルメニア人 → アルニア人 に修正しています。

 私の世話をしてくれていた女性はリナという名前だったようだ。

 彼女が部屋に来た時、自己紹介がまだだったことを詫びると、コロコロと笑っていた。


 クリッとした目にちょっとふっくらとした可愛らしい顔が、ほんわかとした笑顔になっているとささくれていた心が少しづつ癒されていくようだった。



 数日も経つと、ちょくちょく居間のほうからドワーフ達のダミ声が聞こえてくるようになった。


 彼らは、なんというか……ガサツがすぎる。

 

 他人の住居でも自分の家のように振舞い、無遠慮に言葉を投げつけてくるので、エルフたちは苦手にしているものも多い。

 エルフは所作の美しさや、言葉遣いの流麗さなどを大事にするので、ドワーフとは何処か噛み合わないのだ。


 ともに戦う仲間としては文句なく頼りになるのだが、普段ではちょっと遠慮したい相手だな。



 それに今は、犠牲になった仲間達を想い喪に服したい。


 ドワーフ達が仲間を弔っていないということではない。あの賑やかさが、ドワーフ達なりの死者に対する慰めだとはわかっている。

 彼らは兄弟を2人も亡くしている、悲しくないはずがない、辛くないはずがない。それでもしんみりと涙にふけるのは、ドワーフとしての流儀に反するのだろう。


 笑って、騒ぎ、いつものように喧嘩して、先に逝った者達に『心配するな』と伝えているのだろう。



 だが、私は……今は静かに過ごしたい。



 そんな気持ちを汲み取ってくれたのか、最近はリナがよく付き合ってくれる。

 一緒に部屋でご飯を食べてくれるようにもなったし、大分動けるようになった体を起こし、散歩にも連れ出してくれた。


 ーー そういえば、あれほどの傷がここまで早く治癒されるのも、ここの魔素濃度のおかげなのだろう。つくづく常識の通用しない場所だな



 リナが話す内容は、本当に他愛ないことばかりだ。


 小鬼族の誰誰と何何ちゃんが納屋でこっそり会っているのを見てドキドキしただの、子供達がいつもいたずらしてくるのでとっちめる作戦を練っている所だの、最近ロッコちゃん指導のボクササイズ効果が出てきただの。

 ボクササイズに関しては、リハビリも兼ねて私もたまに参加させてもらっている。

 ロッコ殿は無表情で感情が読みにくいが、邪険にはされていないようだ。リナに甲斐甲斐しく世話されているような所を見ると、見た目が少女な事もあり微笑ましい。


 あと、この前レン殿が緑小人達に猛烈に怒られていたのを見て可笑しかったとも言っていた。

 彼がしょんぼり怒られている姿が想像できないが、一体何があったのだろう?



 たまにリナの後ろについて来ているモンテという緑小人(緑妖精はこう呼ばれていた)はレン殿の世話役なんだそうだ。


「レンさんは世話してるのは俺だって言うんですけど、本当はモンテちゃんが面倒見てあげてるんだもんねー?」


 そう言ってモンテのお腹をコチョバかして遊んでいる。

 私も一緒になってやってあげると、その場にひっくり返って手足をジタバタ動かしてキャラキャラと笑っている。

 ちょっと止めると『もっとー』とせがんでくる様子はまるで子犬のようだな。


 部屋にこもりがちになってしまっていた私の部屋に忍び込み、布団の上で転がっていたのを見た時は少し驚いたが、この子の無邪気さにはすぐにほだされてしまった。


 他の緑小人達も見たくて、縁側にすわり庭を眺めるようにもなった。

 私の膝の上でのんびりとしているモンテと共に、今ある平穏を噛み締めている。



 傷が治ったら、レン殿にこの町に住みたいと頼んでみよう。



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