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大学デビューに失敗したぼっち、魔境に生息す。  作者: 睦月
二章 樹海の町の住人たち
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魔物達の狂乱

 

 その日、前触れもなくコボルトとゴブリンが大量にある方向から樹海に入ってきていた。


 群れとしてのまとまった動きではなく、どうやらその方角で大量の魔物同士が争っているようだ。

 手負いのゴブリンを追撃するコボルトもいれば、その逆もある。

 そしてそれに乗じてオークやオーガまで紛れ込んできていた。


 彼らもゴブリンやコボルトを餌にしているので、いまや樹海の外縁部は血肉が飛び散る狂乱の様相だった。



 もちろん放置して置けるわけはない。


 普段から警戒していることもあり、この異常事態には即座に対応できた。

 外縁部から数キロ程奥に入ったあたりで準備が整い、樹海の町総戦力で迎撃していく。



 緑小人達には安全な木々の上から索敵と哨戒を徹底させ、漏れのない通信網を構築している。

 近くにいるトレント達には、もしものために緑小人の護衛をお願いしておくのも忘れない。


 小鬼族10人隊を2つ、ランバードに乗った小鬼族3人、一角族1人を1組とした騎兵隊を4つ、緑小人達の情報を元にテレパシーで随時指示をだしていった。


 作戦本部である俺の側には岩人の2人と護衛役の一角族2名がおり、オークやオーガ相手で戦力が足りないときには後詰として動いている。


 最初は慣れない事もあり、ワタワタしているのを必死で隠していたが、今は戦況がうまく回り始めたこともあり落ち着いて対応できている。


 魔物達がまとまりなく散発的に入ってきているというのもあるだろう。

 朝までは気を抜けないが、無事終わりは見えてきている。





「ん?」


 緑小人から焦った様子で情報が入ってきた。

 オーガが3体とオーク3匹、加えてゴブリンがかなりの数追従しているらしい。


 他種族の魔物が共闘しているというのは初めてだったが、疑問に思っている暇はない。


 そちらには騎兵隊を2隊を先行させ、10人隊と後詰が到着するまでの時間稼ぎを指示し、即座に俺たちも向かった。

 一応、残りの騎兵隊にもいつでも駆けつけれるようにと伝えておく。



 場に到着すると、ゴブリン達が何かに群がっている幾つかの塊が目に入った。


 危うく激昂しかけたが、よく見るとどれも俺たち側の犠牲者ではない。

 それに周囲を見渡すと、騎兵隊以外に魔物と戦っている存在が確認できた。



 ーー……人? アルニア人か?


 

 数人でオーガを1体相手にしている。

 小柄ながらゴツい体格からしてドワーフだろうか。

 それに混じって細っそりとした人物も一緒に共闘しているようだ。


 騎兵隊たちは残りのオーガ2体にオーク1体(2体は既に倒れている)、そしてときおり襲いかかってくるゴブリン達を躱しながらも上手く数を減らしていた。



 ーーとりあえず、手近な一体から仕留めるか


 

 アルニア人達が相手取っているオーガの背後へとガンジーが駆けていく。

 ランバードの跳躍と合わせ、そのまま勢いを乗せて砲丸のように重い一撃を横腹にめり込ませた。


 強烈な不意打ちに動きが止まるオーガ。

 その首筋に速度を落とす事なくスコップの一刀を見舞った。


 スパッとした感触と飛び散る鮮血を横目に確認し、騎兵隊が相手取っている内のオーガ1体に黙って血に濡れたスコップを向ける。


 側に追従していた一角族の1人とロッコが飛び出していった。



 俺たちの存在に気づき襲いかかってきていたオークは、側に控える一角族に切り伏せられている。


 それまでは足止めに回っていた騎兵隊も、後詰の存在に気づくやいなや一気に攻めにでる。

 ロッコ達が躍りかかったオーガとは別の1体と、周囲に散らばるゴブリンへと向かっていった。


 そのタイミングで10人隊が到着した。




==========================




 その場の魔物を一掃し終えたあと、生き残っていたアルニア人はドワーフが3人とエルフの女性が1人だけだった。


 小鬼族や一角族にランバード、見た事もない種族だったのだろう。

 最初かなり警戒していたが、俺が指揮官であり、友好的なのがわかると崩れ落ちるようにその場に倒れ込んだ。


 どの人も血だらけで、所々に骨も折れてまさにズタボロ状態だった。さっきまで戦っていたことが驚きだ。

 

 応急処置だけを先に済ませようとしたが、



「すすすまん、コイツを早う手当しちゃってくれっ 途中でオーガにいいのもろてしもたんじゃ。骨がエライ事になっとる 流れ矢にもあたっとるし………」

「…………残念ですけど、その方……ちょっともう……」



 背負われているドワーフは、首がおかしな曲がり方をしていた。

 見ただけで既に事切れているのがわかったが、よほど切羽詰まった状態だったのだろう。

 あまりの痛ましさに目を見れなかった。


 他にも一緒に逃げてきた者達が近くにいるというので、騎兵隊に周囲の魔物を処理しながら探してもらう。

 他にドワーフ1名、獣人3名、小人族2名の遺体が見つかった。

 どれも酷く喰い千切られていたが、布でくるんで、生き残ったアルメニア人と一緒に町まで運ぶことにした。


 

 その後も散発的に魔物が入り込んできていたが、残してきた10人隊と騎兵隊2隊で十分に対応できる範囲だった。

 夜が明けるころには、魔物達の狂乱も終息を迎えていた。



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