妹よ
岩人の子が生まれた。
朝、歯を磨きながら縁側に出てみると。畑の一角に大きな穴が開いており、その近くで座り込んでボーっとしている泥だらけの女の子がいた。そして、その側にはガンジーも静かに座っており、同じ方向を向いてボーッとしていた。
「ガンジーおはよう。その子新しい子だよな? とりあえず体洗って服着させようか」
こちらをゆっくりと振り向き頷くガンジーと、じっとこちらを見つめてくる女の子。
ガンジーに手を引かれて風呂場に連れて行かれ、簡単にシャワーを浴びさせる。
その間に用意した、ガンジー用においてあった子供サイズのシャツとズボンを脱衣所に置いておく。これらは、言うまでもなく近隣の空き家から頂戴したものだ。
もうとっくの昔にこの町周辺は誰も人が住んでいない。
居間のちゃぶ台に、お茶受け代わりの真っ白な敷石を洗ったものを積んでおく。ガンジーの様子を見る限り、そこそこ美味いらしい。
ニュースを見ながら茶を飲んでいると、モンテも起きてきて膝の上に座りこむ。
この頃には、朝起きたらまず自分で水を出して足を洗うようにと、キチンとしつけておいた。習慣化させるまでは大分愚図っていたが、いい子にしてたらまたしてやるからというと渋々とやり始めた。
モンテ経由で緑小人たちにも、泥だらけのままだと絶対に家にはあがらないよう厳しく言いつけてある。こういう事って大事。
都心部での人口過密、それによる失業率の増加、スラム地域の深刻化、CMにはアルニア人や魔法を使えるもの達への自衛隊募集告知がしつこく行われていた。
頬杖をついてモンテを弄りながら、ボケーとテレビを見ていたところで、ガンジーと女の子がお風呂から上がってきた。
自然な流れで俺の前に座るガンジー。
手渡されたバスタオルでガシガシと頭を拭いてやる。これが、なぜかガンジーのお気に入りだった。
ガンジーが終わると、今度は立ってそれを黙って見ていた女の子の方を向き、手を引いて前に座らせた。新しいタオルでしっかりと水気を取ってやる。髪が長く背中の中頃まであるので、タオルで拭いた後ドライヤーで乾かして櫛も当てておいた。
そこまでが終わり、2人を座らせお茶請けの敷石をすすめる。やはり美味いらしく、無心で食べ続ける女の子を観察していた。
肌の色はガンジーに比べてやや白い、ガンジー同様に眠たげな目をした可愛らしい顔をしている。額に埋まる紫がかった美しい鉱石がより神秘的だった。
身長は6、70センチ位だろうか。そういえばガンジーも最初はこれくらいだったな。いつの間にか成長しているもんなんだなあ、とどことなく親心を発揮してしまう。
「なにわともあれ、名前が必要だな。……ロッコでいいか?」
石な子ということでロッコ。我ながら雑すぎるネーミングだと思うが、まあこんなもんでいいだろう。頷くガンジーとキョトンとするロッコ。
「ガンジーの妹だからな。しっかりと面倒みてやれよ」
見た目的に娘はちょっとな。そう思っての言葉だったが、ガンジーは嬉しそうに笑っていた。というか、ガンジーが物静かなのは個性じゃなく種族的な性格だったんだな。