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大学デビューに失敗したぼっち、魔境に生息す。  作者: 睦月
一章 異世界人がやってきた
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ニートの本気

 家にニートがいた。



 突然だが、本当だ。

 そいつはいつも窓辺に座っている。そばには水の入ったコップをおき、毎日毎日あくびをしながら日光浴を続けている。縁側に俺が座ると、すぐに膝によじ登り乗ったかと思うとうつらうつらと船を漕ぎ始める。俺が外に出歩く時は必ずパーカーのフードに入っている。


 他の緑小人達はせっせと動き回っているというのにコイツは……。



「おい、モンテ。お前いい加減何か仕事しろよ。」



 今日も相変わらず膝の上で眠りかけている。

 クリクリとした目をこすりながら、見上げて問いかけてくる。


『何を?』

「お前、一応緑小人たちの長的な存在だろう。早い内から楽隠居かましてんじゃねえよ。

 何かこう……同族の見回りだったり、畑の手伝いだったり。なんだったら自分の森でも作ればいいんじゃねえか? 空いた土地はそこらじゅうにあるんだし。せっかく同族の中でも一番強いのに……もったいないぞ」



 というやり取りが、つい先日あったのだが一体これはどうしたことだろう?


 家の畑には数人の緑小人が相変わらず元気良く土いじりに精をだしているが、普段はもっとワシャワシャいるもんなんだが……、モンテも含めてどこかに行っているらしい。


 一番目を引くことは、イチョウのトレントまでいなくなっていることだった。地面には大きな穴がぽっかりと開き、コンクリートの塀を思い切り破壊して出て行ってしまっている。


 今朝方聞こえた破壊音はこれだったのか……。



 ーーまあ、そのうち戻ってくるだろう。



 夕方近くになると、モンテを先頭にぞろぞろと2,30人ほどの緑小人とイチョウのトレントが帰ってきた。


 それからは毎日のように朝になるとどこかへ出かけていた。

 トレントは初日だけのようだったが、他の緑小人はモンテの親衛隊のようにぞろぞろと連れられていっている。



 3週間もそれが続くとさすがに気になってきて、俺も一緒についていく事にした。

 前日にモンテに一緒に連れて行ってくれと言っていたので、明け方近くにペシペシとおデコを叩かれ起こされた。


 眠い目をこすりながらもモンテ親衛隊の後をついていくと、そこは近所にあった神社のはずだが…………鬱蒼と大樹が生い茂り、もはや奥の神社が見えなくなっていた。鳥居だけがぽつんとたっている。


 境内の中に入っていくと、ざわざわと枝葉が揺れ動き、若木とも言える木ですらも幹を揺らして騒いでいた。 風で揺れているのではない。明らかに自分で動いているような揺れ方。

 

 つまり、おれの知っている神社は、いつの間にかトレントの森になっていた。



 モンテから事情を聞いてみると、樹齢を重ねた古木が魔力に晒され続けると魂を宿してトレントになるそうだ。この町は緑小人たちの異常増……もとい頑張りにより、急速に魔力に浸透した大地として変貌していってるらしく、この神社に生えている古木たちはもう一押しでトレントになれそうだったとのこと。


 そこに目をつけたモンテが、親衛隊を総動員して地面や木々に魔力を行き渡らせ、最後の一押しをした。さらに、イチョウトレントに足を運んでもらい、落としてもらった多くの子種をも一気に生育しているという。

 この調子でいけば、数ヶ月以内には境内にある木々はほぼ全てトレントとして活動し始めるだろうとのこと。あと、よく見てみると緑小人の新芽がそれなりの数生えていたので、ここの常駐員にするつもりなのだろう。



 うん、モンテさんを舐めてました。



 このままだと町が樹海に埋まりそうだったので、得意げに胸を張っているモンテの頭を撫でて「よく頑張ったね。しばらく家でのんびりしてていいよー」というとくすぐったそうに喜んでいた。



 数ヶ月後、いたるところでトレントたちが自生するようになり、町の樹海化は加速していった。



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