第一幕 第四場
「わけがわからない」
先ほど見たショッキングな映像が、わたしの脳裏を離れない。いったいこの孤島の洋館で何が起きている?
ビデオカメラのディスプレイ画面をスクロールさせ、日付を少しばかりさかのぼると、その動画を再生した。画面には洋館のラウンジで男たちが言い争う映像が映し出された。
彼らの状況がわからないわたしは動画を早送りにする。ある程度動画が進んだところで通常再背にもどした。
「殺されたに決まっている!」とある男が叫んだ。「遺体が見つかった途端、固定電話が使用できなくなったばかりか、携帯電話やスマホが急に圏外になったんだぞ。何者かが警察への通報を阻止するために、通信手段を奪ったんだ。おまえも言っていたじゃないか、その『GPSジャマー』とやらの装置で、妨害電波が発生している可能性があると」
いったいなんのことについて語っているのかわからないわたしは、動画を早送りにした。少し進んだところでまた通常再生にもどす。
「もしも犯人が逃走せずに」画面には映らないが髭の男の声が聞こえた。「いまもこの島にいる可能性は?」
「それはないだろ」だれか別の男の声が聞こえた。「ヒナコへの復讐を終えたあとで、このまま島にとどまりつづけるのはリスクが高すぎる。ぼくたちに見つかれば、お終いだ」
「仮になんらかの理由でこの島に残っていたとしたら?」
わたしはそこで早送りをはじめた。いったい彼らは何について話し合っているのだろうか。ふたたび再生する。
「よしみんな」だれなのかわからない男の声だ。「あとは彼に期待してぼくたちはもう休もう」
複数の人々が散らばる足音が聞こえてくると、画面にはふたりの男が映り込んだ。そのふたりはソファーから立ちあがろうとしているところだ。
「ふたりとも待ってくれ」髭の男がそう言うのが聞こえた。「まだ話しておきたいことがある。もしもおれたちのなかに犯人がいるとしたら?」
「ふざけたこと言ってるんじゃねえぞ」とある男が怒った顔を画面に向ける。「あと不愉快だから、これ以上の撮影はやめろ」
数秒後、動画はそこで終了した。
「いったいここで何が起きている?」
わたしはビデオカメラの映像に混乱するばかりだった。