第二幕 第二場
「殺人鬼と生存者……どちらに見つかっても危険!」
わたしはすぐさま危機を察し、廊下の窓から身を隠すようにしてしゃがんだ。とんでもない事態だ。助けを求めたいけど求めることができない。それどころかだれかに見つかってもいけない。
どこかに隠れ潜んでやり過ごすこともできないだろう。おそらく殺人鬼は、この島に隠れ潜む生存者を殺そうと探しまわっているはずだ。この島に安全な場所などない。かといって島から海を泳いで陸地をめざすのは無謀だろう。ビデオカメラに記録されていたクルーザーに乗っていたシーンでは、青い海以外、どこにも陸地らしき物は映っていなかった。
つまりはどうにかして、あすのあさまで生き延びなければ、島からは脱出できないことになる。このきびしい状況のなか、だれかの助けもなしに生き延びるのは、かなりむずかしいだろう……。
無慈悲な事実を知ったわたしは、心臓が早鐘を打ち、呼吸が荒くなるなるのを感じた。
「落ち着け……落ち着け」
考えろ、と自分に命じる。助けを求めるには、生存者に自分が犯にではないことを証明しなければならない。どうすればいいか悩んでいたが、しばらくして、自分が犯人ではない証拠を手にしていること気づいた。
「そうだビデオカメラだ。これに残されている映像さえ見せれば、わたしが犯人じゃないとわかってもらえるはず。問題はこのビデオカメラをだれにみせるかだ」
残りの生存者のなかに殺人鬼がいるんだから、それがだれなのか特定しないかぎり、生存者とは接触できない。万が一に相手が犯人だったとしたら殺されてしまう。
「なんでもいいから、犯人を特定する手がかりを探さないと」
わたしは手がかりを探すべく、身を低くしたまま移動を開始した。不気味に静まり返った洋館の中では、自分の心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。いま現在、犯人が特定できていない。だからだれにも見つかってはいけない。それは死を招くことになる。
ゆっくりと慎重に廊下を進んで行く。耳をすませて意識を集中し、何か物音が聞こえないかと警戒しながら。
死体のある三階にいるのがいやだったので二階にもどり、先ほど見ていない部屋を見てまわることにした。とにかく何か犯人である証拠がほしい。たとえば頭に着用していたリアル調の狼マスクなどが見つかればいいのだが、どこかに隠している可能性が高いだろう。
わたしはとある部屋の前に来ると、ドアに耳をあてる。物音が聞こえてこないことを確認すると、そのドアをあけて中にはいった。そこには女性物と思われる荷物が置いてあり、テーブルの上には暗号めいた謎の文字が書かれた紙が残されていた。
「……何これ?」
わたしはそれを拾いあげる。紙にはアルファベット順にAからZまでのすべてのアルファベット二十六文字が書かれており、その下には数字が順序よく並んでいる。Aなら一、Bなら二、Cなら三、そんなふうに数字はつづき、最後のZが二十六だ。そしてその下には、みんなのイニシャルと書かれたことばとともに、たくさんのイニシャルと謎の二桁の数字、そしてその謎の数字を使った足し算の計算式が残されていた。
「みんなのイニシャル……この島にいる人物のイニシャルかな?」
わたしはためしに、そのイニシャルと合致する人物がいなか調べてみる。すぐに田中リョウマ……R・Tを見つけた。次いで石川ヒナコ……H・Iを発見。さらには西村ユイ……Y・N、西村アキラ……A・Nもあった。
これだけ合致するのだから、ここに書かれているのはこの島にいる人物のイニシャルの可能性が高い。残りも確認してみる。
S・M……これはおそらくサクラかスミレだろう。J・K……これはジュンだ。K・A……これはカオル。N・K……これはナツキ。M・K……これはマコト。
「……おかしい九人分しかイニシャルがない」
サクラとスミレがいるのだから、もうひとりSからはじまるイニシャルが必要だ。そんなことを考えながら、何気なし紙の裏を見るとそこにはS・Nの文字があり、三十三と二十四を足した計算式に、その答えを黒く塗りつぶしたあとがあった。
「あった。これでこの島にいる十人分のイニシャルがそろった」
何かのヒントになるかもしれない、と思ったわたしはその紙をポケットにしまいこんだ。その後、部屋の中を調べてみたが怪しいものはなかった。
わたしは部屋を出ると、つぎつぎと新たな部屋を調べまわったが、特にめぼしい物は発見できなかった。そして二階最後の部屋の前に来たとき、ここには何かがあるとすぐに察せられた。なぜならば部屋のドアの鍵が破壊されていたからだ。
「壊されている」
胸の鼓動が速まるなか、わたしは警戒しながら部屋の中へと足を踏み入れた。そして部屋の奥へと進んで行くと、そこには眼鏡の女の死体と、第二のビデオカメラが床に転がっていた。




