第一幕 第十四場
つぎの動画ファイルを再生した。画面は暗視モードで金髪の女の姿が映し出されている。場所は林のなかで、雨のせいで画面にいくつもの水滴が映り込んでいた。どうやら嵐は弱まっている様子で、林の木々のおかげで、雨風をしのげているようだ。
「もうここまでこれば、だいじょうぶだ」髭の男である田中リョウマの声だ。「だから安心して」
「安心できないわよ」金髪の女はおびえて振るえている。「いったい何が起こっているのよ」
「だれだか知らないが、拳銃を持ったやつがいて、そいつに襲われたんだよ。そのせいでみんなはパニックだ」
「みんなは無事なの?」金髪の女は涙声になる。「スミレたちはどこに?」
「おれにもわからない。洋館から逃げるのに必死で、みんながどうなったか見当もつかない。だからもどってたしかめてくる。おまえはここに隠れているんだ」
「そんなのだめよ!」金髪の女は驚愕した面持ちになる。「危険すぎるわ!」
「落ち着いて」リョウマはなだめるような口調になる。「みんなの安否を確認しないといけない。それにアキラのことも心配だ。もし洋館に取り残されていたら殺されてしまう。だれかが助けないといけない。洋館が停電している以上、明かりを使って探索するのは、見つけてくださいと言っているようなものだ。だからカメラの暗視装置を使って探索する。これはカメラを持つおれにしかできないことだ。わかるな?」
「わからないわよ」金髪の女は首を横に振る。「お願い行かないで。せっかく合流できたのに、わたしをひとりにしないで」
「ごめん、行かなくちゃならない。すぐにもどるから」
金髪の女がこちらに向かって飛び込んできたかと思うと、画面が揺れ動いた。その揺れが収まると、画面には金髪の女の背中と、そこにまわされリョウマの腕の一部が映っている。どうやらふたりは抱き合っているようだ。
「お願い」金髪の女が言った。「かならずもどってきてね。ぜったいに死なないでよ」
「だいじょうぶ、おれは死なないよ。かならずもどってくるから安心して」
しばしのあいだふたりは抱き合っていたが、抱擁を解くとそこで動画は終了した。




