助けたいと言うエゴ
恋人とのデートの最中、俺達はある光景を目撃した。
烏に食われそうになっている子猫。
それを見た猫好きの彼女が助けようと駆け出したのを、俺は腕を掴んで止めた。
「どうして邪魔するの!?」
「自然の摂理に手を出すものじゃない。烏だって、生きるのに必死なんだ。子猫を贔屓するなんてエゴだろ」
そう答えると、彼女は絶望を顔に浮かべた。
「……どうして?」
涙を零す彼女の背後に、不気味な老婆が浮き出た。
『残念だったねえ。子猫を助ける事が出来たら、あんたの願いを叶えてやれたのに』
老婆は、慰めるように彼女の肩を抱いた。
『本人がこう言ってんだ。諦めな』
声を上げて泣き出した彼女の向こうで、烏は熊になり・啄ばまれていた子猫は……。