遅すぎた恋
第二話です。
ペースが遅くてすいません。
まだ書くことになれてなくて、雑な表現もありますが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
綾に彼氏ができたのはまだ最近のことである。
学校からの帰り道の途中、綾は今思い出しましたって感じで言った。
「そういえば修に報告することがあります!なんだと思う?」
何か自慢をするとき、とりあえず僕に答えさせようとする。
その質問するときの口ぶりや仕草は昔から変わっておらず、彼女を少し幼く見せた。
「ご飯の食べすぎでお腹壊した」
「違う。なんでそうなるの?」
「じゃあ授業中、先生に早弁してたのばれた」
「それも違う!早弁なんかしないわよ!なんでそう食べ物にこだわるのよ…」
「だってお前食いしん坊じゃん」
「それ女の子に言う言葉!?」
「安心しろ。今まで一度もお前のことを女の子として認識したことは一度たりともない」
「はあ!?何それ?普通、冗談でも言う?」
綾はぶうぶう文句を言った。
だがコホンと咳払いをし一旦落ち着くと、顔には余裕の表情があった。
今に見てなさいとでも言うかのように。
「私ね、彼氏ができたのよ」
綾は自慢気にそう言った。
本当に得意気な表情だった。
「……今日って4月1日じゃないぞ」
「知ってるよ!嘘じゃないって。米田君とつき合い始めたの!」
米田は僕も知っている奴だった。
成績優秀でなかなかのイケメンなのに気さくで冗談がうまいから、女子だけじゃなくて男子からも人気がある。
ましてや、部活でテニスをやってて部長を務めていたから、もはや完璧超人としか言いようがない。
そんな米田が綾とつき合うだって?
「マジで…?」
「マジよ、マジ。大マジです!彼の方からね、つき合ってくれって言われたの。」
「米田って物好きなんだな…なんでお前みたいな奴なんかを選ぶんだよ?」
「失礼!すっごい失礼!まともに彼女の一人も作ったことのないヘタレにいわれたくない!」
「オレは彼女作ったりするのが面倒なだけだ!ダチとてきとーにつるむのが一番なんだよ」
ちなみに中学の頃、一時期彼女ができたこともあったが、しばらく経たない内にふられてしまった。
あまりに情けない話なので、彼女には秘密にしてある。
「作れない言い訳しないの。まあ、これからは修に好きな人できたら、私応援してあげるから安心してね」
綾はすごく幸せそうだった。
本当なら喜ぶべきだ。
嬉しそうな顔をして、それを隣で見ることができて…
彼女が幸せならいいと思いたかった。
けど、素直に喜べない自分がいた。
僕は綾の頭をがしっとつかんで、ぐりぐりした。もちろん女の子に本気でやっているわけではない。
綾もわーわー騒いで、大げさに抵抗した。
「痛い痛い!なんで頭をぐりぐりするのよ!髪がぼさぼさになるじゃない!」
「お前があまりに生意気なこと言うからだ。彼氏ができたくらいで調子のんなよ」
「調子になんてのってないよ!彼女ができないからって私にあたらないでよね!」
綾は頭をおさえながら、涙目でキーキー文句を言った。
あれ、ちょっと強くやりすぎたかな。
「そもそも、そんな態度だから、彼女ができないのよ!誠実さのかけらもないのよ。ヘタレ野郎のクセに、優しさもないんじゃ、いいとこないね」
「何だと!」
「あ、あそこ…」
綾は急に真剣な表情になり、別の方向を指さした。
古典的な方法だったのに僕はそれに気づかず、綾が指さした方を見ると同時に鈍い音が左足から聞こえた。
僕のすきをついて、見事なローキックを太ももにキメたのだ。
もう、腰の振りといい、足のキレといい、見事なローキックだった。
「……!?」
僕は声にならない悲鳴をあげながら、彼女の方を睨んだが、
「これでおあいこね。すっきりした!」
と、綾は満足気な表情で走りだした。
「この痛みに懲りたら、二度と私にちょっかいださないことねー」
「綾!待てよ!」
僕はズキズキ痛む足をかばいながら、なんとか綾を追って走り出した。
「待つわけないじゃん!待ったら恐い男の人に襲われちゃうもん」
綾は子供のようにはしゃぎながら、僕から逃げた。
「綾、絶対泣かす!」
僕は走って逃げていく綾を必死で追いかけた。
騒いだ。思いっきり騒いだ。
何かを忘れられるように。
その現実から逃げるために。
きっと遅すぎたんだ。気づくのが。
秋の少し冷えた風が僕を通り過ぎていった。
心が震えた。
今、風邪でダウンです(泣)
皆さんも風邪には気をつけてくださいね。